ヘファイストスの灯火 ~森の中で眠り続けている巨大ゴーレムを発見した少女、継承した鍛冶魔法の力を操り剣でもドレスでもどんどん作りあげる~

あきさけ

文字の大きさ
27 / 78
第2部 森と花の国『マナストリア聖華国』 第3章 王宮での暮らし

27. ユニリスの小さなわがまま、特別なエンシェントフレーム

しおりを挟む
 あたしことアウラはマナストリア聖華国で土地の領主様になりました。
 うん、よくわからない。
 あたしもよくわからない。

 とりあえずあたしがもらったミラーシア湖という場所に向かうのは春先とし、いまはその準備期間。
 なにを準備するかというと、あちらに行ったあとお屋敷を管理する執事やメイド、ボーイなどの家人や、家の防備をになう警備員など、要するに屋敷の使用人たちだ。
 あたしはのんびりひとり暮らしでもいいって言ったんだけど、それはマナストリア王家一同の反対にあって却下された。
 あたし、ひとりでも暮らせるのに。

 ともかくミラーシア湖に新しく準備するお屋敷の住人を探している間、あたしは基本的に暇なわけだ。
 その空いた時間を利用し、王家の皆様に妖精太陽銀と妖精月銀のレイピアを作って差し上げようとしたら、ものすごい騒ぎになってしまった。
 全員が全員専属の騎士やデザイナーたちから意見を聞き、宝飾品なども集めてデザインにも機能性にも優れたレイピアを作っていく。
 そして完成したレイピアを自慢しあい、決闘騒ぎになる寸前までいったよ。
 女王陛下も含めてね。
 そんなにこのレイピアって意味があるんだ。
 ついでにこのレイピアの依頼料として屋敷の使用人の賃金は、今後100年マナストリア王家が支払ってくれることとなった。
 そんなつもりじゃなかったのに……。

 ただ、ひとりだけレイピア作りに参加しなかった兄妹がいる。
 末っ子のユニリス様だ。
 彼女の望みはもっと別のもの。
 かわいらしいわががまなんだけど、ちょっとねぇ……。

「ユニリス、あまりアウラ様を困らせてはダメですよ」

「でも! 私はエンシェントフレームがほしいの!」

「はあ。この子のエンシェントフレーム好きには困ったものです」

 毎日毎日ユニリス様はエリスの離宮までやってきてエンシェントフレームをせがんでくる。
 ただ、エンシェントフレームは基本戦うための兵器であって子供のオモチャじゃないんだよね。
 そこをわかってもらうにはどうすればいいのか……。

「ねえ! ヘファイストスならわかるよね!」

 ユニリス様はヘファイストスに直接話しかけた。
 ヘファイストスはどう考えているんだろう?

『わからないでもない。だが、エンシェントフレームは戦闘のための機械兵だ。ユニリスには早すぎる』

「うー……」

『そこでこうしよう。戦闘のためではないエンシェントフレームを造る。具体的には我のダウングレードモデルだ』

「え?」

『エンシェントフレームの整備や装備の手入れなどをメインとするエンシェントフレームを造る。それで手を打て』

 エンシェントフレーム用のエンシェントフレームを造るって……そういう問題!?
 これって女王様の許可がいるんじゃないの!?

「わかった! それでいい!」

「エリス、どうすればいいの?」

「……お母様に報告して参ります。ただ、ヘファイストス様の意向も入っている以上、阻止も難しいかと」

「だよね……」

 エリスが女王陛下に事情説明に行くと女王陛下もやってきて細かい仕様調整が始まった。
 ざっくり言えば、とにかく装甲は厚く頑丈にする、兵装は必要なとき以外展開できない、決まった範囲から外に出られない、などの要望を受け、ヘファイストスもそれを受領してユニリス様のエンシェントフレーム作りが始められることとなる。
 場所は広い場所がいいということだったため、王城内にあるエンシェントフレームの整備工場の一角を間借りした。
 なんだか作業員の皆様には申し訳ない……。
 女王陛下はほかの仕事があるということでお戻りになったけど、大丈夫かな。

「エリクシール殿下。本当に新しいエンシェントフレームを造るんですか?」

「そうらしいです、工場長。造るのはあちらのマナトレーシングフレームのヘファイストス様です」

「マナトレーシングフレームがエンシェントフレームを造る、ねぇ……」

「どうもヘファイストス様の専門はエンシェントフレームの整備や修理、生産だったようですので……」

「それは気になるな。おう、ヘファイストスって言ったか? 俺たち作業員も作業を見ていて構わんか?」

『構わない。今回は一気に造ってしまうのであまり参考にはならないだろうが、よければエンシェントフレームの整備や製造方法の解説もしよう』

「そいつは助かる。おう、手の空いているもんは全員こっちに来い! エンシェントフレーム造りの見学だ!」

 工場長の一声で作業員がわらわらと集まりだした。
 これ、すごいことになるんじゃないの?

『さて、作り方だが……アウラ、聖銀鉱と魔銀鉱、命晶核をゴーレム一台の半分近く使ってもいいか?』

「ずいぶん使うのね。構わないけど、どんなものを作るの?」

『我と同じ思想で作られる機械兵だ。いまの技術では整備不能だろうから、強固な自己再生能力をつけておく』

「わかった。でも、それって盗まれない?」

『そちらの対策もしておく。とりあえず鉱石を並べてくれ』

「はいはい。よっと」

 あたしはリクエストのあった聖銀鉱と魔銀鉱、命晶核を取り出した。
 これだけでも結構ざわつくけれど、慣れたものだ。
 いい加減、何回も取り出しているからね。

「ヘファイストス、このあとはどうすればいい?」

『アウラも見ていてほしい。鍛冶魔法で作ることはできるが、かなり繊細な作業になるからな』

「わかった。しっかり見学させてもらうよ」

『よろしい。では、始める』

 ヘファイストスが鉱石類に魔力を流し始めると、次々と鉱石が分断されてパーツができていく。
 というか、完成していくパーツはすべて人骨を模したパーツばかり。
 それが組み合わさって人型の模型となったところ、次の作業に入ったみたい。

 次は各金属が繊維のように細くなり、組み合わさってねじれたりしながらさっきの模型へとはりついていく。
 ひょっとしてこれって人の筋肉の模写?
 筋肉とは言っても金属の輝きを帯びた、白い装甲みたいな感じなんだけどね。
 そのまま全身に筋肉らしきものが貼り終わった段階で第二工程は終了らしかった。

『さて、人工筋肉の貼り付けまで終了だ。久しぶりの作業、さすがに疲れた』

「いや、疲れたって。2時間経っていないから」

『そうか? ともかく稼働テストをせねばなるまい。アウラ、乗り込んで各部を動かしてみてくれ。駆動系も我と一緒なのでお前なら問題なく動かせる』

「はいはい。コクピットは首の裏?」

『ああ。いまハッチを開ける』

 あたしはヘファイストスに言われるままコクピットに搭乗した。
 そしてヘファイストスの指示の元、様々な動作チェックを行っていく。
 いまのところはオールクリアだね。

『さて、次だ。我と同じように動いてみてくれ』

「わかった……って!?」

 ヘファイストスは両腕を伸ばした状態から手を組み合わせ、それをひっくり返して伸ばした。
 ええ!?
 そんな動きできたの!?
 集まっている人たちもみんなざわついているし!

『どうした、早くやってみろ』

「いや、やってみろって。普通のエンシェントフレームはそんな人間的な動きはできないよ?」

『人間的な動きができるよう、人間の筋肉を模写した人工筋肉で駆動系を構築してある。機体各所の間接部もそれにあわせて伸縮回転するようになっているから、人と同じように動くぞ』

「ええと、本当に壊れない?」

『壊れん。さあ、試してみよ』

「わかった。えい……本当にできた」

 あたしが乗っているエンシェントフレームの方も、同じように体を動かすことができた。
 そのあともヘファイストスが指示する複雑なポーズが次々できちゃうし……この機体、なに?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

処理中です...