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第3部 アウラ領、開発中 第2章 ミラーシア湖観光と新しい街
51. 押しかけてきたシャムネ伯爵夫妻
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シャムネ伯爵領の件を女王陛下たちに伝えてから2週間程経った頃、あたしはのんびりと朝風呂を楽しんでいた。
だって、あたし専用の露天風呂から眺められるミラーシア湖の景色がとってもきれいなんだもの。
夕方は夕方で夕日に照らされた木々が美しいし、日が沈んだ後は夜空を星々が彩ってくれている。
室内風呂では空まで見えないからあたしだけの楽しみだ。
うーん、なんて贅沢!
「アウラお嬢様、少々よろしいでしょうか」
温泉につかりながら景色を楽しんでいたら、メイド長のクスイが扉の向こうから声をかけてきた。
普段あたしがお風呂を楽しんでいるときは絶対に邪魔をしないからよっぽどのことがあったんだ。
急いで上がらなくちゃ。
「クスイ、ちょっと待って。いま体を拭いて服を着るから」
「よろしくお願いいたします」
あたしは手早く体を拭いて翼を魔法で乾かし服を着るとクスイの待つ廊下へと出た。
一体何用かな?
「で、なにがあったの、クスイ?」
「はい。シャムネ伯爵夫妻がおいでです。いかがいたしましょうか?」
「シャムネ伯爵夫妻が?」
シャムネ伯爵夫妻と言えば2週間前に夫人の方が怪しいということになって女王様が気を付けるように言っていた相手だ。
用心するに越したことはない。
でも……。
「クスイ、貴族相手の面会っていきなり相手を訪ねてもいいものなの?」
「一般常識に照らし合わせれば言語道断です。事前に面会予約を手紙などで取ってからやってくるのが常識的な貴族のあり方。ましてや、シャムネ伯爵はアウラ様と同じ伯爵階級。このような無作法は家の格を下げます」
「ふうん。あたしが華都にある王城に乗りつけているのはいいの?」
「あれは女王陛下やエリクシール殿下が特別に許可しているので問題ありません。ですが、今回はそういう許可もなしにいきなりやってきたのです」
うわぁ、面倒くさそう。
関わり合いになりたくないなぁ。
「それで、アウラ様。面会なさいますか?」
「断ることもできるの?」
「面会予約がない以上、断られても仕方のないことです。それすらわきまえていないのでしたら、本当に貴族失格ですから」
「でも、断っても今度は面会予約を取ってくるんじゃない?」
「適当な理由をつけて断り続ければよろしいのですよ」
クスイも腹黒いなぁ。
でも、女王陛下から聞いた限りだとシャムネ伯爵夫人って相当頭が悪い、というか、常識をわきまえていない相手っぽいから断ってもまた押しかけてきそう。
仕方ないから面会するか。
「断ってまた押しかけられても困るし会いましょう。どこに行けばいいの?」
「第三応接室に通してあります」
「……そこって、貴族を相手にするときは一番格が低いっていう応接室だったよね?」
「さて、なんのことやら」
本当にクスイも腹黒い。
とにかくあたしはドレスに着替えて第三応接室へと向かった。
そして、応接室に入るなり飛んできたのは女の金切り声だ。
「なんなのよ! この私をこんなに待たせるだなんて! 新興貴族のくせに生意気よ!!」
机を叩きつけながら罵声を浴びせかけてきたのは頭の悪そうな派手なドレスに身を包んだ女。
それと、その横では必至になってそれをなだめている男もいる。
この人たちがシャムネ伯爵夫妻かな?
「失礼ですが、シャムネ伯爵夫妻ですか?」
「当然でしょう! あなた、私の顔も知らないの!?」
「貴族社会とは縁遠い世界を生き抜いてきた新興貴族ですから。あらためまして、ミラーシア湖のアウラです」
「これはこれはご丁寧に。シャムネ領を収めるマッシモと言います。こちらは妻の……」
「あなた! こんな小娘に名乗る必要などありません!」
「そういうわけにもいかないだろう。我々は同じ伯爵位なのだ。あちらが名乗っている以上、こちらも名乗らなければ不敬になる」
「ふん! ランザよ! 覚えておきなさい、田舎者!!」
いちいちしゃくに障るなぁ、このおばさん。
後ろに控えているフェデラーとクスイに頼んで追いだしてもらおうかな。
でも、それでまた押しかけられても面倒だしなぁ。
用件だけ聞いて帰ってもらおう。
「田舎者ですので前置きは苦手です。単刀直入にご用件を伺わせていただきたいのですが、いかがでしょう? 貴族の礼儀を破って事前連絡なしに屋敷まで押しかけているのです。相応の重大な案件だと考えますが」
「それは……」
なんだろう、マッシモ伯爵は口ごもっているな。
代わりに口を開いたのは口うるさい夫人の方だったけどね。
「ミラーシア湖を解放しなさい! 観光ができなくて私が困ってるのよ!」
は?
ミラーシア湖を解放する?
なんで観光ができないくらいであんたが困るのよ?
だって、あたし専用の露天風呂から眺められるミラーシア湖の景色がとってもきれいなんだもの。
夕方は夕方で夕日に照らされた木々が美しいし、日が沈んだ後は夜空を星々が彩ってくれている。
室内風呂では空まで見えないからあたしだけの楽しみだ。
うーん、なんて贅沢!
「アウラお嬢様、少々よろしいでしょうか」
温泉につかりながら景色を楽しんでいたら、メイド長のクスイが扉の向こうから声をかけてきた。
普段あたしがお風呂を楽しんでいるときは絶対に邪魔をしないからよっぽどのことがあったんだ。
急いで上がらなくちゃ。
「クスイ、ちょっと待って。いま体を拭いて服を着るから」
「よろしくお願いいたします」
あたしは手早く体を拭いて翼を魔法で乾かし服を着るとクスイの待つ廊下へと出た。
一体何用かな?
「で、なにがあったの、クスイ?」
「はい。シャムネ伯爵夫妻がおいでです。いかがいたしましょうか?」
「シャムネ伯爵夫妻が?」
シャムネ伯爵夫妻と言えば2週間前に夫人の方が怪しいということになって女王様が気を付けるように言っていた相手だ。
用心するに越したことはない。
でも……。
「クスイ、貴族相手の面会っていきなり相手を訪ねてもいいものなの?」
「一般常識に照らし合わせれば言語道断です。事前に面会予約を手紙などで取ってからやってくるのが常識的な貴族のあり方。ましてや、シャムネ伯爵はアウラ様と同じ伯爵階級。このような無作法は家の格を下げます」
「ふうん。あたしが華都にある王城に乗りつけているのはいいの?」
「あれは女王陛下やエリクシール殿下が特別に許可しているので問題ありません。ですが、今回はそういう許可もなしにいきなりやってきたのです」
うわぁ、面倒くさそう。
関わり合いになりたくないなぁ。
「それで、アウラ様。面会なさいますか?」
「断ることもできるの?」
「面会予約がない以上、断られても仕方のないことです。それすらわきまえていないのでしたら、本当に貴族失格ですから」
「でも、断っても今度は面会予約を取ってくるんじゃない?」
「適当な理由をつけて断り続ければよろしいのですよ」
クスイも腹黒いなぁ。
でも、女王陛下から聞いた限りだとシャムネ伯爵夫人って相当頭が悪い、というか、常識をわきまえていない相手っぽいから断ってもまた押しかけてきそう。
仕方ないから面会するか。
「断ってまた押しかけられても困るし会いましょう。どこに行けばいいの?」
「第三応接室に通してあります」
「……そこって、貴族を相手にするときは一番格が低いっていう応接室だったよね?」
「さて、なんのことやら」
本当にクスイも腹黒い。
とにかくあたしはドレスに着替えて第三応接室へと向かった。
そして、応接室に入るなり飛んできたのは女の金切り声だ。
「なんなのよ! この私をこんなに待たせるだなんて! 新興貴族のくせに生意気よ!!」
机を叩きつけながら罵声を浴びせかけてきたのは頭の悪そうな派手なドレスに身を包んだ女。
それと、その横では必至になってそれをなだめている男もいる。
この人たちがシャムネ伯爵夫妻かな?
「失礼ですが、シャムネ伯爵夫妻ですか?」
「当然でしょう! あなた、私の顔も知らないの!?」
「貴族社会とは縁遠い世界を生き抜いてきた新興貴族ですから。あらためまして、ミラーシア湖のアウラです」
「これはこれはご丁寧に。シャムネ領を収めるマッシモと言います。こちらは妻の……」
「あなた! こんな小娘に名乗る必要などありません!」
「そういうわけにもいかないだろう。我々は同じ伯爵位なのだ。あちらが名乗っている以上、こちらも名乗らなければ不敬になる」
「ふん! ランザよ! 覚えておきなさい、田舎者!!」
いちいちしゃくに障るなぁ、このおばさん。
後ろに控えているフェデラーとクスイに頼んで追いだしてもらおうかな。
でも、それでまた押しかけられても面倒だしなぁ。
用件だけ聞いて帰ってもらおう。
「田舎者ですので前置きは苦手です。単刀直入にご用件を伺わせていただきたいのですが、いかがでしょう? 貴族の礼儀を破って事前連絡なしに屋敷まで押しかけているのです。相応の重大な案件だと考えますが」
「それは……」
なんだろう、マッシモ伯爵は口ごもっているな。
代わりに口を開いたのは口うるさい夫人の方だったけどね。
「ミラーシア湖を解放しなさい! 観光ができなくて私が困ってるのよ!」
は?
ミラーシア湖を解放する?
なんで観光ができないくらいであんたが困るのよ?
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