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第3部 アウラ領、開発中 第2章 ミラーシア湖観光と新しい街
57. 街の建設と移民集め
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クロさんを迎えて10日ほど経ったある日、フェデラーからクロさんが呼んでいると連絡を受けたのでクロさんに貸している部屋へとやってきた。
そこに広げられていたのは巨大な都市の模型。
結構細かいところまで作り込まれていてまるで本物の都市を小さくしたみたい。
「おお、アウラ様。おいでくださいましたか」
「呼ばれたからね。クロさん、これが新しい都市の完成予想図?」
「完成予想図、と言いますか、完成予定図ですな。最初からこの形は無理でも最終的にはこの形を目指したいところです」
「ふーん」
完成した都市には中心部に公園が作られており、そこには花壇と噴水が作られるようだ。
宿屋らしきものは4軒。
宿をランク分けして泊まる客を分別するつもりらしい。
よく考えられているよ。
あ、でも。
「クロさん。温泉って引かないの?」
「オンセン? ああ、この屋敷にも湧き出している暖かい湯の出る井戸ですかな?」
「そう。水龍に頼めばそれも出せると思うんだけど」
「なるほど。それでは、温泉も宿の設備に加えましょう。ただし、利用には別料金が発生することにしてですね」
「別料金を取るの?」
「温泉を利用するにはタオルなどが必要でしょう? それに風呂場も清掃せねばならない。別に人を雇う必要があるのです、当然ですよ」
なるほど、説明されれば当然だ。
あたしってやっぱり経営とかには向いていないのかも。
領地運営が本格的に始まったらフェデラーからいろいろ教わろう。
「さて、宿の説明は終わりましたな。次はこの高台です」
クロさんが指さしたのは外壁よりも高くなっている文字通りの高台。
一体こんな場所をなにに使うのか。
「ここはなに?」
「ここからミラーシア湖を眺められるようにいたします。幸い、この方角ですとミラーシア湖の一部は見えますが、見られてまずいものは見えません」
はー、そんなことまで考えているんだ。
クロさん、すっごく優秀かも。
「観光都市としての機能は以上でしょうか。後は各種商人を呼び込むことに成功すれば『街』として機能いたします」
「わかったわ。農業都市の方はどう?」
「それはこちら側をご覧ください」
クロさんが次に指さしたのは観光都市側と反対にある場所。
そちらの特徴は高い壁で囲われている外側に低い柵で囲われている地域があることだ。
これって一体なにに使うんだろう?
「まず、高い街壁は一般的な街壁と同じ役割を持ちます。魔物や賊の侵入を防ぐためですね。次に外側の低い柵は農作物を荒らす害獣を防ぐためのもの。魔物相手のものではありません」
「へぇ。でも、魔物相手が務まるくらい頑丈に作ってもいいのよね?」
「さすがにコストをかけすぎでは……?」
「そこは奥の手があるから平気。柵にしている理由は?」
「壁ですと日光が遮られてしまい作物の栽培に影響が出ますからね。街壁外にある畑はすべて柵で囲う必要があります」
なるほど、ちゃんと考えている訳か。
うん、やっぱりクロさんを雇って正解だった。
となると問題は……。
「さて、街の設計はこれでよろしいでしょうか?」
「問題ないわ。そうなると、実際に街を造り始めるところなんだけど……」
この規模の街を一から作ろうとすると十年単位で見ないといけない。
でも、あたしには奥の手があるもんね!
「建設に着手して問題がなければヘファイストスで作り始めるけど大丈夫? ここ数日は石材に困らないように大きめのストーンゴーレムを探して倒して来ていたけど」
「それもまたアウラ様だからこそ出来る手段ですね。着手はもう少しお待ちを。最終調整をフェデラー様と行いますので」
「わかった。それじゃあ、あたしはあたしで進められることを進めておくから」
クロさんの部屋を出て自分の執務室に戻った。
戻ったんだけど、あたしの作業が難航しているのよね……。
あたしの作業、つまりは街に住む住人の呼び込みなんだけどさ。
なかなかいいアイディアが思い浮かばないのよ。
簡単に思い浮かぶならどの街でもやってるんだろうけどさ。
「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました、アウラお嬢様」
ドアがノックされ静かに入ってきたのはメイド長のクスイ。
クスイにも聞いてみようかな。
「ねえ、クスイ。街に人を集めるにはどうすればいいと思う?」
「街に人を……でございますか?」
「そう。クロさんが街の構想を練り終わっていて後は最終チェックと建設だけなのよ。そうなると次は、そこで暮らす人々の募集でしょ? なかなかいいアイディアがもい浮かばなくてさ」
「いいアイディアですか。アウラお嬢様はすべての機能を同時に動かし始めようとしてはいませんか?」
「え?」
「私は少なくとも第1段階で観光都市の部分は必要ないと考えております。人がどれだけ集まるかわからない都市に宿屋を作れと言われても人は集まらないでしょう」
なるほど、確かにそうかも。
あたし、両方ともすぐに動かさなくちゃいけないものだとばかり考えていた。
「なので、まずは農業都市の部分だけ動かすことをお考えくださいませ。そうすれば自ずといい考えも浮かぶでしょう」
農業都市だけか……。
それだったら、近隣の街で余っている農家の人手をもらってくれば済む話だよね!
「わかった。後はあたしが考えてみる。ありがとう、クスイ」
「いえ。ひとまず考えるのは後にしていまはご休憩くださいませ」
「うん。ありがとう」
お茶が終わったら実際にどうやって人を集めるか考えなくちゃだよね。
もう少し、頑張ろう。
そこに広げられていたのは巨大な都市の模型。
結構細かいところまで作り込まれていてまるで本物の都市を小さくしたみたい。
「おお、アウラ様。おいでくださいましたか」
「呼ばれたからね。クロさん、これが新しい都市の完成予想図?」
「完成予想図、と言いますか、完成予定図ですな。最初からこの形は無理でも最終的にはこの形を目指したいところです」
「ふーん」
完成した都市には中心部に公園が作られており、そこには花壇と噴水が作られるようだ。
宿屋らしきものは4軒。
宿をランク分けして泊まる客を分別するつもりらしい。
よく考えられているよ。
あ、でも。
「クロさん。温泉って引かないの?」
「オンセン? ああ、この屋敷にも湧き出している暖かい湯の出る井戸ですかな?」
「そう。水龍に頼めばそれも出せると思うんだけど」
「なるほど。それでは、温泉も宿の設備に加えましょう。ただし、利用には別料金が発生することにしてですね」
「別料金を取るの?」
「温泉を利用するにはタオルなどが必要でしょう? それに風呂場も清掃せねばならない。別に人を雇う必要があるのです、当然ですよ」
なるほど、説明されれば当然だ。
あたしってやっぱり経営とかには向いていないのかも。
領地運営が本格的に始まったらフェデラーからいろいろ教わろう。
「さて、宿の説明は終わりましたな。次はこの高台です」
クロさんが指さしたのは外壁よりも高くなっている文字通りの高台。
一体こんな場所をなにに使うのか。
「ここはなに?」
「ここからミラーシア湖を眺められるようにいたします。幸い、この方角ですとミラーシア湖の一部は見えますが、見られてまずいものは見えません」
はー、そんなことまで考えているんだ。
クロさん、すっごく優秀かも。
「観光都市としての機能は以上でしょうか。後は各種商人を呼び込むことに成功すれば『街』として機能いたします」
「わかったわ。農業都市の方はどう?」
「それはこちら側をご覧ください」
クロさんが次に指さしたのは観光都市側と反対にある場所。
そちらの特徴は高い壁で囲われている外側に低い柵で囲われている地域があることだ。
これって一体なにに使うんだろう?
「まず、高い街壁は一般的な街壁と同じ役割を持ちます。魔物や賊の侵入を防ぐためですね。次に外側の低い柵は農作物を荒らす害獣を防ぐためのもの。魔物相手のものではありません」
「へぇ。でも、魔物相手が務まるくらい頑丈に作ってもいいのよね?」
「さすがにコストをかけすぎでは……?」
「そこは奥の手があるから平気。柵にしている理由は?」
「壁ですと日光が遮られてしまい作物の栽培に影響が出ますからね。街壁外にある畑はすべて柵で囲う必要があります」
なるほど、ちゃんと考えている訳か。
うん、やっぱりクロさんを雇って正解だった。
となると問題は……。
「さて、街の設計はこれでよろしいでしょうか?」
「問題ないわ。そうなると、実際に街を造り始めるところなんだけど……」
この規模の街を一から作ろうとすると十年単位で見ないといけない。
でも、あたしには奥の手があるもんね!
「建設に着手して問題がなければヘファイストスで作り始めるけど大丈夫? ここ数日は石材に困らないように大きめのストーンゴーレムを探して倒して来ていたけど」
「それもまたアウラ様だからこそ出来る手段ですね。着手はもう少しお待ちを。最終調整をフェデラー様と行いますので」
「わかった。それじゃあ、あたしはあたしで進められることを進めておくから」
クロさんの部屋を出て自分の執務室に戻った。
戻ったんだけど、あたしの作業が難航しているのよね……。
あたしの作業、つまりは街に住む住人の呼び込みなんだけどさ。
なかなかいいアイディアが思い浮かばないのよ。
簡単に思い浮かぶならどの街でもやってるんだろうけどさ。
「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました、アウラお嬢様」
ドアがノックされ静かに入ってきたのはメイド長のクスイ。
クスイにも聞いてみようかな。
「ねえ、クスイ。街に人を集めるにはどうすればいいと思う?」
「街に人を……でございますか?」
「そう。クロさんが街の構想を練り終わっていて後は最終チェックと建設だけなのよ。そうなると次は、そこで暮らす人々の募集でしょ? なかなかいいアイディアがもい浮かばなくてさ」
「いいアイディアですか。アウラお嬢様はすべての機能を同時に動かし始めようとしてはいませんか?」
「え?」
「私は少なくとも第1段階で観光都市の部分は必要ないと考えております。人がどれだけ集まるかわからない都市に宿屋を作れと言われても人は集まらないでしょう」
なるほど、確かにそうかも。
あたし、両方ともすぐに動かさなくちゃいけないものだとばかり考えていた。
「なので、まずは農業都市の部分だけ動かすことをお考えくださいませ。そうすれば自ずといい考えも浮かぶでしょう」
農業都市だけか……。
それだったら、近隣の街で余っている農家の人手をもらってくれば済む話だよね!
「わかった。後はあたしが考えてみる。ありがとう、クスイ」
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もう少し、頑張ろう。
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