ヘファイストスの灯火 ~森の中で眠り続けている巨大ゴーレムを発見した少女、継承した鍛冶魔法の力を操り剣でもドレスでもどんどん作りあげる~

あきさけ

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第3部 アウラ領、開発中 第2章 ミラーシア湖観光と新しい街

62. 観光都市側はどうする?

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 農業都市側が稼働し始めて1カ月が経過した。
 その間にも、農業都市では様々な作物を収穫して成果を上げていっている。
 それらの一部は都市防衛にあたっている防衛隊にもお裾分けされており、好評みたいね。
 というわけで、農業都市は人員不足であまり耕作地を増やせない以外は好調。
 そうなると問題は観光都市側だ。
 
「クロさん。観光都市側にも人を集める手段はあるの?」

「観光都市は自然とできあがるのを待つのが一番なのですが、それでは何十年とかかるでしょう。いっそ無理にでも人を引き込みませんか?」

「無理にでも人を引き込む?」

「はい。無理矢理、人を引きずり込むのです」

 クロさんの目が怪しく光った。
 嫌な予感がひしひし伝わってくる。
 だけど、このままじゃ観光都市としての機能を使えないのが実情なのよね。
 クロさんの策に乗るとしますか……。


********************


「皆様、ここがミラーシア湖に新しく作られた農業と観光の都市『レイキ』でございます」

「ここが観光都市?」

「まだなにもないな……」

 クロさんの策とは華都の大きな商会などを引き込んでのお披露目会だった。
 でも、まだ何もないのに大丈夫なの?

「ええ、ええ、まだ何もありません。つまり、更地に近い状態でございます。まずは宿の予定地にご案内いたしましょう」

 クロさんはまだ中に何も入っていない最高級宿の中にみんなを連れて行く。
 最高級宿といってもあるのはクリスタルから作ったシャンデリア程度だ。

「ほほう、見事なシャンデリアだ。誰がお作りに?」

「ご領主アウラ様直々の作品でございます。そのほかにもこの宿にある魔導ランプは、すべてアウラ様がお作りになったものでございます」

「おお、領主様でしたか。これは失礼を」

「いえ。あたしもヘファイストスに習いながら作っただけですから」

「しかし、しっかりした石造りの宿に立派なシャンデリア。これだけでも価値があるでしょう」

「皆様、とても気が早い。これから三階にある特別室へとご案内いたします。そこからの眺めはさらに格別ですよ?」

「ほう。それは楽しみですな」

「確かに。早く行きましょう」

 特別室か。
 そう言えば、三階に特別広い部屋を五つ作ったっけ。
 あれってなんだったんだろう。

「お待たせいたしました、皆様。ここが特別室、その中でも一番の眺めを誇る部屋でございます」

「眺め……ですかな?」

「はい、眺めです。ミラーシア湖周辺が安全であるからこそ堪能できる風景、是非ともご覧あれ!」

 クロさんが部屋の扉を開け、中へとみんなを案内すると、その『眺め』というのもよくわかった。
 この部屋、ミラーシア湖が見えるんだ。
 ということは、他の部屋からも差こそあれミラーシア湖が見えるのかな?

「おお! あの湖はミラーシア湖!」

「真正面にミラーシア湖を眺めることが出来るとは!」

「はい。ミラーシア湖を眺めることが出来る丘、そのさらに上からミラーシア湖を見ることができる部屋にございます。この部屋は客間、食堂、リビング、主寝室からミラーシア湖を見ることができます」

「なるほど。これは価値がありそうだ」

「他の部屋はどうなっているのでしょうか?」

「他の部屋は、一部の部屋のみしかミラーシア湖が見えません。そこも差別化できておりますよ」

「なるほど。部屋も真新しい建物であるため、非常に清潔。その上、ミラーシア湖の眺めを一望できるとあれば……」

「クロウラー殿! このホテル、我が商会に売ってはいただけまいか!?」

「抜け駆けは禁止ですぞ! どうか我が商会に!」

 ホテルの争奪戦が始まり、クロさんではなくフェデラーが出ていって場を静め、とある商会がこのホテルを買い取ることになった。
 その商会は、早速ここで働く人を集め始めるそうだ。
 あたしにもそれに見合うだけの住居を用意してほしいと依頼が来たしやるしかないね。
 あと、今回のホテル争奪戦に敗れた商会の中で商機を見いだした場所は、ここよりもランクが下のホテルを買い取ってくれた。
 そっちもラッキーかな。
 それにしてもクロさん、こうなることまで予想していたとは、恐るべし。
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