ヘファイストスの灯火 ~森の中で眠り続けている巨大ゴーレムを発見した少女、継承した鍛冶魔法の力を操り剣でもドレスでもどんどん作りあげる~

あきさけ

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第4部 浅はかな戦争 第2章 停戦の使者

73. リードアロー王国からの停戦案

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 騎士に連れられてあたしが到着したのは軍議などを行う会議室。
 どうやらここに女王陛下を初めとした国の重鎮が揃っているらしい。
 そんなところにあたしが呼ばれてもいいのかな?
 ともかく、呼ばれているらしいから入るけどさ。

「女王陛下、アウラ様が到着いたしました」

「そう。入ってもらって」

「はい。アウラ様、どうぞ」

「ええ、ありがとう。失礼します」

 その会議室にはひとつの机の周りに椅子がずらっと並べられており、エリスの姿もあった。
 もちろん、女王陛下だっている。
 そのほかにも、国の宰相様を筆頭に各大臣が勢揃いだ。
 よく見てみると、壁際に並んでいるのはこの国の貴族たちなんじゃないかな?
 全員じゃないけど、華都までやってきている貴族たちは集められているみたい。
 どんな話になるんだろう。

「アウラ、まずは席に着いてちょうだい。あなたの席は、あそこよ」

「わかりました。では、失礼して」

 あたしは名誉伯爵とはいえ上位貴族だ。
 だから、席を用意されていてもおかしくはないんだけど、それにしては様子がおかしいような?
 本当にどんな話をするのかな?

「さて、主な面々は揃ったわね。では、会議を再開します。議題は『リードアロー王国から届けられた停戦協定案』についてよ」

 停戦協定案、そんな物が届いていたんだ。
 でも、この場にいる人たちの反応を見る限りろくな物じゃなさそう。
 実際、いまは会議を『再開』したところであって『開始』したところじゃないからね。
 あたしを途中参加させた意味合いってなにかしら?

「アウラは知らないだろうからもう一度説明するわ。リードアロー王国の提示し来た停戦協定案は現在あちらが占領している砦の部分までをリードアロー王国に譲り渡す事が一点。さらに、戦争賠償としてマナストリア聖華国が生産している魔導具類を毎年一定量譲り渡す事が一点。そして」

「そして?」

「エリクシールとアウラの身柄の引き渡し。これが最後の条件よ」

 はあ!?
 あの国は一体なにを考えているのよ!
 いや、何も考えていないのでしょうけど!

「マナストリア聖華国として、こんな要求は絶対に飲めない。領土を引き渡す理由もないし戦争賠償を支払う理由もない。まして、国の第一王女であり次期女王筆頭候補と名誉伯爵を引き渡すだなんて非人道的な真似は国として容認できません」

 よかった、女王陛下がまともな考えの出来る人で。
 さすがにこの人数相手に殺さず切り抜けるのはきついからね。

「それで、女王陛下。今後どうなさるおつもりですか?」

 宰相様が女王陛下に尋ねた。
 確かに、こんな一方的な話を飲めるわけがない。
 かと言ってこのまま黙っているわけにもいかない。
 女王陛下はどう考えているのかな?

「私の考えはこうです。まず、今回の案を持ってきた使者は即刻送り返します」

「それがいいでしょう。話し合う余地もない」

「その上でこちらも停戦案をリードアロー王国に出しましょう。停戦案が飲めないのであれば、徹底抗戦をするということも付け加えて」

「よろしいのですか、女王陛下。そこまで強気に出て?」

「大丈夫ですよ。リードアロー王国が停戦案を出してきたのには理由があります。リードアロー王国と面している我が国との同盟国が一斉にリードアロー王国を攻撃し始めたのですから」

 誰かが女王陛下に聞いた言葉に返ってきた答えは驚くべきものだった。
 ここまで話は進んでいなかったのか、これを聞いた周囲の貴族たちはざわめき立つ。
 エリスや宰相、軍務大臣は平然としているけど、それ以外の大臣も慌てているから本当に限られたメンバーだけが知っていた情報なんだね。

「リードアロー王国が我が国との停戦案を飲まなければ我が国も反転攻勢に出ます。それをしっかりと知らしめねばなりません」

 うわ、なんか嫌な予感がしてきた。

「というわけですので、アウラ。あなたに和平案を届ける使者をお願いします。よろしいですね?」

「はい。お引き受けいたします……」

 ああ、やっぱりこうなったか。
 どうしようかな。
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