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ショートボブの女子生徒が、放課後のIT研究部部室の前に立っていた。
その手には部員募集のチラシを持っている。
少女は垂れ目気味の目でチラシを見つめてつぶやく。
「うーん、なんか小規模っぽいけど大丈夫かな……」
彼女が意を決してドアに手をかけようとした瞬間、そのドアが横にスライドした。
中から出ようとした背の高い男子生徒が、彼女にぶつかりそうになって踏みとどまった。
「――おっとゴメン。うちの部に何か用?」
眼鏡をかけた男子生徒の優しい笑顔に、少女がおずおずと応える。
「えっと、仮入部をしに来たんですけど……」
男子生徒が嬉しそうに微笑んで告げる。
「ああ、入部希望者か。ちょっと待ってて。
――孝之助! 入部希望者だぞ!」
男子生徒が振り返って室内に声をかけた。
PCの向こうではぼさぼさ頭の髪の毛だけがモニターの向こうから覗いている。
「あー、もう少し待ってくれ。今いいところなんだ」
「……女子だぞ?」
背の高い青年のその一言で、ぼさぼさ頭の男子生徒が勢いよく立ち上がった。
「マジか?! 嘘じゃないだろうな?!」
少女が背の高い男子生徒に招かれ、部室に足を踏み入れる。
部室内には机が並び、その上には液晶モニター置いてあった。
今居る部員は背の高い男子生徒と、ぼさぼさ頭の男子生徒だけのようだ。
「一年二組、倉田春菜です。
あの、これしか居ないんですか?」
背の高い男子生徒が少女――春菜に応える。
「うちはリモート活動もOKだからね。
自宅からDiscordで参加してるんだよ。
――僕は篠原正明。二年生だよ」
春菜が正明に会釈していると、ぼさぼさ頭の男子生徒が元気よく近づいて行く。
輝かしい笑顔で男子生徒が告げる。
「俺は堀川孝之助! 同じく二年生だ!
いやー、女子生徒が入部してくれるなんてありがたいなぁ!」
男子生徒――孝之助の勢いに押され、春菜が一歩退いた。
勢いよく春菜に近づいて行く孝之助の前を、正明が塞いだ。
「孝之助、近づきすぎだ」
「なんでだよ?! 挨拶しに来てるだけだろ?!」
春菜がおずおずと尋ねる。
「それで、部長は不在なんでしょうか」
孝之助がニヤリと微笑んで自分に親指を向けた。
「俺がIT研究部部長だ!」
「――え? 堀川先輩が?」
孝之助がジト目で春菜を見て告げる。
「なんだよ、文句あるってのか?」
「いえ、文句ではなくて……三年生はいないんですか?」
春菜の横で正明が応える。
「在籍してるけど、受験に備えたいらしくてね。
部長を孝之助に引き渡してるんだ」
――大丈夫なのかな? この部活。
見るからに性格が乱雑そうな孝之助を、訝しんで春菜が見ていた。
開いていたドアから別の女子生徒が姿を見せる。
「あれー? 部長ったら女の子を連れ込んでるの?」
春菜が振り返り、女子生徒を見る。
背中までの赤みがかったポニーテールの、快活そうな少女だ。
正明が半笑いで応える。
「入部希望者なんだ。
――倉田さん、詳しいことはこの浜田さんに聞くと良いよ」
「はぁ……」
女子生徒がニカッと笑って告げる。
「私、浜田由夏! 二年生よ!
この部活のアイドルって奴ね!」
孝之助があきれた顔で告げる。
「だーれがアイドルだ。
――それより、なんでLINEを見ないんだよ?」
「えー? だってどうせ部室に来るつもりだったし、既読にしなくてもいーじゃん」
「メッセージ送ってから何分経ってると思ってるんだよ?!」
「んー、十五分くらい?」
横から正明が静かな声で告げる。
「もう三十分を超えてますよ」
由夏がニコリと微笑んで応える。
「あら、そうだった? ごめ~ん、友達と話しててさ」
正明がドアを閉め、由夏と一緒に春菜を机の前に誘導していく。
孝之助が由夏に告げる。
「おい由夏! 新入部員も大事だけど、先にモデルの調整してくれよ!」
「えー? しょうがないわね。
――ごめん倉田さん、ちょっと外すわね」
由夏は孝之助と一緒に彼のPCの前に移動していく。
困惑する春菜に、正明が穏やかに告げる。
「ごめんね、騒がしくて。
とりあえず仮入部届け、書いてもらっていいかな」
「――あ、はい」
正明が用意した用紙に、春菜が学年と名前を書いて行く。
「……これでいいですか?」
正明が用紙を確認してうなずいた。
「うん、大丈夫。
倉田さんはなんでこの部に?」
「将来エンジニアになろうと思って。
……でもこの部活、どんな活動をしてるんですか?」
正明がニコリと微笑んで応える。
「見た方が早いよ。こっちに来て」
孝之助の席に向かって歩く正明の背中を、春菜はおずおずと追いかけた。
彼のPCモニターにはゲーム画面らしきものが表示されていた。
格納庫の中の重厚な人型メカ――男子が好みそうなゲームだ。
孝之助がメカの肩を指さして告げる。
「ほれ見ろ、由夏。ここのパーツが干渉してるじゃねーか」
由夏が不満げに眉をひそめた。
「なに言ってるのよ、指定されたバウンディングボックス内に収めたわよ?
ハンガーのパーツが食い込んでるんじゃないの?」
「じゃあ榎本のミスか。
とりあえずDM送っておくわ」
孝之助がDiscordを開き、DMのやりとりを開始した。
春菜が小首をかしげて尋ねる。
「なんで学校でDiscordを使ってるんですか?
ビデオチャットなら、他にも色々ありません?」
孝之助がキーボードをタイプしながら応える。
「うちは今、ゲーム開発してるからな。
画面共有するのに便利なんだよ。
どこが悪いかってすぐに伝えられるだろ?」
――ってことは、この画面は開発中のゲームなのか。
春菜がまじまじとゲーム画面を見つめていく。
学生が作ったにしては立派な見た目のゲームだ。
インディーズゲームと言われても通用しそうだった。
「プログラマーは誰なんですか?」
「俺と正明だよ。
榎本と由夏はモデラー。
岡本はサウンドとモーション担当だ」
春菜が感心しながら応える。
「凄い少人数なんですね。
それでここまで作ったんですか?」
孝之助が春菜を横目で見ながらニヤリと口の端を持ち上げた。
「俺がいればなんとでもなるさ」
正明が小さく息をついて告げる。
「いつも言うことだけは大きいな」
「事実だろう?」
どうやらこの部活の生徒たちは仲が良いらしい。
ここに混ざっていけるのか、春菜には少し不安だった。
不意に、短く独特のメロディーが春菜のスマホから流れた。
春菜があわててスマホを確認し、アプリを立ち上げてインカメラで自分を映し出した。
由夏があきれた顔で告げる。
「あー、BeReal? あなたもやってるの?」
撮影を終えた春菜がはにかみながら応える。
「これをやってないと、友達から仲間外れにされちゃうから……」
「別にLINEでよくない?」
「仲良くなる前にLINEを教えるのは怖いじゃないですか」
孝之助がゲーム画面を操作しながら告げる。
「大して変わらねーと思うけどね。
嫌ならブロックすりゃーいーじゃねーか」
「そういう訳にもいかないんですよ。
ブロックすると空気が悪く――」
スマホの画面を見た春菜が動きを止めた。
スマホにはBeRealの撮影結果が映し出されている。
由夏が春菜に尋ねる。
「どうしたの?」
春菜が無言でスマホを指さした。
正明と由夏が覗き込む――そこには笑顔で映し出される春菜の顔。
「……なによ、あなたの顔だけじゃない」
「そっちじゃなくて、こっちです……」
画面端の小さいフレーム枠、そこにはアウトカメラの画像が表示されていた。
春菜の指は、その画像を指しているようだ。
そのフレーム内には、部室内で微笑む和服姿の少女が映し出されていた――。
その手には部員募集のチラシを持っている。
少女は垂れ目気味の目でチラシを見つめてつぶやく。
「うーん、なんか小規模っぽいけど大丈夫かな……」
彼女が意を決してドアに手をかけようとした瞬間、そのドアが横にスライドした。
中から出ようとした背の高い男子生徒が、彼女にぶつかりそうになって踏みとどまった。
「――おっとゴメン。うちの部に何か用?」
眼鏡をかけた男子生徒の優しい笑顔に、少女がおずおずと応える。
「えっと、仮入部をしに来たんですけど……」
男子生徒が嬉しそうに微笑んで告げる。
「ああ、入部希望者か。ちょっと待ってて。
――孝之助! 入部希望者だぞ!」
男子生徒が振り返って室内に声をかけた。
PCの向こうではぼさぼさ頭の髪の毛だけがモニターの向こうから覗いている。
「あー、もう少し待ってくれ。今いいところなんだ」
「……女子だぞ?」
背の高い青年のその一言で、ぼさぼさ頭の男子生徒が勢いよく立ち上がった。
「マジか?! 嘘じゃないだろうな?!」
少女が背の高い男子生徒に招かれ、部室に足を踏み入れる。
部室内には机が並び、その上には液晶モニター置いてあった。
今居る部員は背の高い男子生徒と、ぼさぼさ頭の男子生徒だけのようだ。
「一年二組、倉田春菜です。
あの、これしか居ないんですか?」
背の高い男子生徒が少女――春菜に応える。
「うちはリモート活動もOKだからね。
自宅からDiscordで参加してるんだよ。
――僕は篠原正明。二年生だよ」
春菜が正明に会釈していると、ぼさぼさ頭の男子生徒が元気よく近づいて行く。
輝かしい笑顔で男子生徒が告げる。
「俺は堀川孝之助! 同じく二年生だ!
いやー、女子生徒が入部してくれるなんてありがたいなぁ!」
男子生徒――孝之助の勢いに押され、春菜が一歩退いた。
勢いよく春菜に近づいて行く孝之助の前を、正明が塞いだ。
「孝之助、近づきすぎだ」
「なんでだよ?! 挨拶しに来てるだけだろ?!」
春菜がおずおずと尋ねる。
「それで、部長は不在なんでしょうか」
孝之助がニヤリと微笑んで自分に親指を向けた。
「俺がIT研究部部長だ!」
「――え? 堀川先輩が?」
孝之助がジト目で春菜を見て告げる。
「なんだよ、文句あるってのか?」
「いえ、文句ではなくて……三年生はいないんですか?」
春菜の横で正明が応える。
「在籍してるけど、受験に備えたいらしくてね。
部長を孝之助に引き渡してるんだ」
――大丈夫なのかな? この部活。
見るからに性格が乱雑そうな孝之助を、訝しんで春菜が見ていた。
開いていたドアから別の女子生徒が姿を見せる。
「あれー? 部長ったら女の子を連れ込んでるの?」
春菜が振り返り、女子生徒を見る。
背中までの赤みがかったポニーテールの、快活そうな少女だ。
正明が半笑いで応える。
「入部希望者なんだ。
――倉田さん、詳しいことはこの浜田さんに聞くと良いよ」
「はぁ……」
女子生徒がニカッと笑って告げる。
「私、浜田由夏! 二年生よ!
この部活のアイドルって奴ね!」
孝之助があきれた顔で告げる。
「だーれがアイドルだ。
――それより、なんでLINEを見ないんだよ?」
「えー? だってどうせ部室に来るつもりだったし、既読にしなくてもいーじゃん」
「メッセージ送ってから何分経ってると思ってるんだよ?!」
「んー、十五分くらい?」
横から正明が静かな声で告げる。
「もう三十分を超えてますよ」
由夏がニコリと微笑んで応える。
「あら、そうだった? ごめ~ん、友達と話しててさ」
正明がドアを閉め、由夏と一緒に春菜を机の前に誘導していく。
孝之助が由夏に告げる。
「おい由夏! 新入部員も大事だけど、先にモデルの調整してくれよ!」
「えー? しょうがないわね。
――ごめん倉田さん、ちょっと外すわね」
由夏は孝之助と一緒に彼のPCの前に移動していく。
困惑する春菜に、正明が穏やかに告げる。
「ごめんね、騒がしくて。
とりあえず仮入部届け、書いてもらっていいかな」
「――あ、はい」
正明が用意した用紙に、春菜が学年と名前を書いて行く。
「……これでいいですか?」
正明が用紙を確認してうなずいた。
「うん、大丈夫。
倉田さんはなんでこの部に?」
「将来エンジニアになろうと思って。
……でもこの部活、どんな活動をしてるんですか?」
正明がニコリと微笑んで応える。
「見た方が早いよ。こっちに来て」
孝之助の席に向かって歩く正明の背中を、春菜はおずおずと追いかけた。
彼のPCモニターにはゲーム画面らしきものが表示されていた。
格納庫の中の重厚な人型メカ――男子が好みそうなゲームだ。
孝之助がメカの肩を指さして告げる。
「ほれ見ろ、由夏。ここのパーツが干渉してるじゃねーか」
由夏が不満げに眉をひそめた。
「なに言ってるのよ、指定されたバウンディングボックス内に収めたわよ?
ハンガーのパーツが食い込んでるんじゃないの?」
「じゃあ榎本のミスか。
とりあえずDM送っておくわ」
孝之助がDiscordを開き、DMのやりとりを開始した。
春菜が小首をかしげて尋ねる。
「なんで学校でDiscordを使ってるんですか?
ビデオチャットなら、他にも色々ありません?」
孝之助がキーボードをタイプしながら応える。
「うちは今、ゲーム開発してるからな。
画面共有するのに便利なんだよ。
どこが悪いかってすぐに伝えられるだろ?」
――ってことは、この画面は開発中のゲームなのか。
春菜がまじまじとゲーム画面を見つめていく。
学生が作ったにしては立派な見た目のゲームだ。
インディーズゲームと言われても通用しそうだった。
「プログラマーは誰なんですか?」
「俺と正明だよ。
榎本と由夏はモデラー。
岡本はサウンドとモーション担当だ」
春菜が感心しながら応える。
「凄い少人数なんですね。
それでここまで作ったんですか?」
孝之助が春菜を横目で見ながらニヤリと口の端を持ち上げた。
「俺がいればなんとでもなるさ」
正明が小さく息をついて告げる。
「いつも言うことだけは大きいな」
「事実だろう?」
どうやらこの部活の生徒たちは仲が良いらしい。
ここに混ざっていけるのか、春菜には少し不安だった。
不意に、短く独特のメロディーが春菜のスマホから流れた。
春菜があわててスマホを確認し、アプリを立ち上げてインカメラで自分を映し出した。
由夏があきれた顔で告げる。
「あー、BeReal? あなたもやってるの?」
撮影を終えた春菜がはにかみながら応える。
「これをやってないと、友達から仲間外れにされちゃうから……」
「別にLINEでよくない?」
「仲良くなる前にLINEを教えるのは怖いじゃないですか」
孝之助がゲーム画面を操作しながら告げる。
「大して変わらねーと思うけどね。
嫌ならブロックすりゃーいーじゃねーか」
「そういう訳にもいかないんですよ。
ブロックすると空気が悪く――」
スマホの画面を見た春菜が動きを止めた。
スマホにはBeRealの撮影結果が映し出されている。
由夏が春菜に尋ねる。
「どうしたの?」
春菜が無言でスマホを指さした。
正明と由夏が覗き込む――そこには笑顔で映し出される春菜の顔。
「……なによ、あなたの顔だけじゃない」
「そっちじゃなくて、こっちです……」
画面端の小さいフレーム枠、そこにはアウトカメラの画像が表示されていた。
春菜の指は、その画像を指しているようだ。
そのフレーム内には、部室内で微笑む和服姿の少女が映し出されていた――。
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