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第2章:クラスメイト
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歩美がコーヒーを一口、二口と飲んでため息をついた。
「――駄目ね。私にコーヒーは、まだ早かったみたい」
辰巳がニコリと微笑んで応える。
「そうかい? ならそこまでにしておきなさい。
無理をして飲むものじゃないからね」
歩美が諦めてフッと笑みをこぼした。
「そうしておくわ。
コーヒー、ごちそう様」
「――このコーヒー、僕がもらってもいいかな?
ほとんど飲んでないんじゃ、もったいない」
歩美の顔がカッと真っ赤に染まった。
「ちょっとマスター!
それはデリカシーが無いんじゃないかしら!」
「ハハハ! 冗談だよ!
きちんと捨てておくから、安心しなさい」
歩美は真っ赤になりながら、辰巳に背を向けた
****
テーブルに返ってきた歩美を、私と早苗はニヤニヤと見守っていた。
「どうだった~? 『大人の味』は?」
「うるさいわね! どうだっていいじゃない!」
早苗がニンマリと告げる。
「ほーら、やっぱり歩美だってお子様だったじゃん。
見栄を張って大人ぶるから、マスターにからかわれたんだよ」
確かに、あんなに人を翻弄する姿は初めて見たな。
いつも私には優しく接してくれてたし。
椅子に座った歩美が紅茶のカップに口をつける――。
「なにこれ! 美味しい!」
私はきょとんとして歩美に尋ねる。
「突然どうしたの?
コーヒーを飲んだ後で、味が変わって感じるの?」
「違うわよ!
香りから何から、この前の紅茶と全然味が違うじゃない!
銘柄を変えたの?!」
「えー? そんな話は聞いてないけどなー?」
早苗もあわてて紅茶に口をつける。
「――すごい! フルーティーで甘くてコクがある!
これ、朝陽が言ってた紅茶の味じゃない?!」
あ、そういうことか。
なんて説明しようかな。
「んーとね、今の二人は『お守り』の力で、このお店のメニューを美味しく感じられるんだよ」
二人がきょとんと私を見つめてきた。
早苗が私に告げる。
「それ、どういう意味?」
歩美も困惑してるみたいだ。
「お守りで味覚が変わるってこと?」
カウンターからトレイにケーキを乗せて、マスターがこっちにやってきた。
「その辺り、そろそろ説明しておこうかな?」
私は思わず尋ねる。
「マスター、説明しても大丈夫なんですか?」
「ダメだったら、お店を出た時に忘れるようにしておくから大丈夫」
早苗と歩美が、きょとんとしてマスターを見つめて居た。
****
「甘い! とろける! なにこれ、ショートケーキだよね?!」
早苗が感激したように体を震わせていた。
歩美もたっぷりと味わってから飲み込み、ため息をついた。
「――ふぅ。これがお守りの効果なのね。
でも、マスターが神様って言われてもピンとこないわ」
「ハハハ! それはそのうちわかることだよ。
――そろそろ四時か。
ちょっと早いけど、ケーキを食べ終わったら研修を始めようか」
早苗たちうなずいた。
研修、つまりスタッフルームの案内と、業務の練習だ。
マスターが早苗たちをスタッフルームに案内し、私の時と同じように設備を説明した。
歩美が手を挙げて告げる。
「この部屋の清掃はどうするんですか?」
「いつもは僕がやってるけど、代わりにやってくれるなら助かるかな。
今日は接客に専念してもらって、明日教えることにしようか」
「……じゃあ、トイレの清掃は?」
「もちろん僕がやっていたよ?」
あわてたように歩美がトイレに駆け込み、中を確認していた。
「……明日から、トイレのゴミ捨ては私たちが担当するってことでいいですか?」
マスターがニコリと微笑んだ。
「そうしてくれると助かるよ。
よろしく頼むね」
きょとんとする私と早苗は訳がわからず、マスターと歩美を見比べていた。
****
マスターは「じゃあ、清水さんと荒川さんも着替えておいて」と言ってスタッフルームを出ていった。
私は歩美に駆け寄って尋ねる。
「どうしたの? 急にゴミ当番をやりたいって」
「……トイレの中、見てみなさいよ」
どういう意味だろう?
中を確認してみても、ありきたりのよくあるトイレだ。
きれいに掃除が行き届いていて、埃一つない。
私は歩美に振り向いて尋ねる。
「なにかおかしなところ、ある?」
「……サニタリーボックスがあるでしょ」
――あっ?!
「まさかマスター、サニタリーボックスの掃除までしてたの?!」
「見たところ新品だから、朝陽のために用意したのでしょうね。
でもお客用のトイレにも多分、あるんじゃない?」
うへぇ、そんなものをマスターに掃除させたくはないなぁ。
早苗がのんきな声で告げる。
「別に気にしなくたっていいんじゃない?
そんな細かいこと気にしてたら、長生きできないよ?」
歩美が猛然と早苗に食って掛かった。
「いいわけないでしょ! 男性にこれの処分なんてさせられないわよ!」
「歩美は気にし過ぎだよ~。
それに神様なんでしょ? 男性の姿をしてるだけで」
「それでもよ!」
私はあわてて二人の間に割って入った。
「まぁまぁ、落ち着いて歩美。
とにかく、女子がトイレのゴミ掃除をする。それでいい?」
歩美はしっかりと、早苗は渋々とうなずいていた。
****
私たちは割り当てられたロッカーを開け、喫茶店の制服に着替えていく。
歩美がスカートを履きながら、不思議そうに小首をかしげていた。
「サイズぴったりね……どうやって私たちのサイズを知ったのかしら」
早苗も不思議そうに、シャツを着て胸元を見ていた。
「胸のサイズも丁度いい感じだね。
肩も苦しくないし。どういうこと?」
そう言われれば、私も苦しくなかったな。
私が小首をかしげていると、歩美がハッとしたように告げる。
「まさか、私たちの体のサイズを知ってるの?!」
「まっさかー。マスターはそういうこと、しない人だと思うけど。
「……わかんないわよ。
神様だから、感覚がずれてるのかもしれない」
そうかなー?
少し警戒してるような歩美を連れ、私たちはスタッフルームを後にした。
****
スタッフルームの外ではマスターが待っていて、穏やかに微笑んでいた。
「賑やかだったね。
君たちに余計な気を使わせてしまったかな?」
歩美が頬を赤らめながら応える。
「いえ、女子の尊厳の問題ですので。
用意をしてくれたことはお礼を言います」
マスターがニコリと微笑んだ。
「トイレの拭き掃除が僕がやっておくから、君たちはゴミ掃除だけでいいよ。
それでも汚れが気になった時のために、やり方だけは明日、教えておこう」
スッと歩美が手を挙げた。
「それで、なぜこの制服が私たちにぴったりなのか、教えてもらえますか」
睨み付けるかのような歩美の視線を、マスターは穏やかな微笑みで受け止めていた。
「ああ、気になったのかな?
大丈夫、僕が君たちの体のサイズを知ってる訳じゃないよ。
その制服は、自然と体に合った大きさになる。そういう服なんだ」
早苗が感心したようにうなずいた。
「へぇ~、さすが神様なんだね」
クスリとマスターが笑って告げる。
。
「じゃあ、接客のやり方を教えるね」
それからマスターは、基本的な業務内容を私たちに教えていった。
とはいえ、お客さんを出迎えて席に案内し、水を出す。
注文を取ってマスターに伝え、メニューができたらテーブルに運ぶ。
そしてお客さんが帰ったらテーブルを片付ける。
基本的な接客はこれだけだ。
「――わかったかな?
疑問があれば、遠慮なく言って欲しい。
……ないみたいだね。
それじゃあ伊勢佐木さんをお客さん役にして、練習してみようか」
私たちはマスターにうなずいた。
「――駄目ね。私にコーヒーは、まだ早かったみたい」
辰巳がニコリと微笑んで応える。
「そうかい? ならそこまでにしておきなさい。
無理をして飲むものじゃないからね」
歩美が諦めてフッと笑みをこぼした。
「そうしておくわ。
コーヒー、ごちそう様」
「――このコーヒー、僕がもらってもいいかな?
ほとんど飲んでないんじゃ、もったいない」
歩美の顔がカッと真っ赤に染まった。
「ちょっとマスター!
それはデリカシーが無いんじゃないかしら!」
「ハハハ! 冗談だよ!
きちんと捨てておくから、安心しなさい」
歩美は真っ赤になりながら、辰巳に背を向けた
****
テーブルに返ってきた歩美を、私と早苗はニヤニヤと見守っていた。
「どうだった~? 『大人の味』は?」
「うるさいわね! どうだっていいじゃない!」
早苗がニンマリと告げる。
「ほーら、やっぱり歩美だってお子様だったじゃん。
見栄を張って大人ぶるから、マスターにからかわれたんだよ」
確かに、あんなに人を翻弄する姿は初めて見たな。
いつも私には優しく接してくれてたし。
椅子に座った歩美が紅茶のカップに口をつける――。
「なにこれ! 美味しい!」
私はきょとんとして歩美に尋ねる。
「突然どうしたの?
コーヒーを飲んだ後で、味が変わって感じるの?」
「違うわよ!
香りから何から、この前の紅茶と全然味が違うじゃない!
銘柄を変えたの?!」
「えー? そんな話は聞いてないけどなー?」
早苗もあわてて紅茶に口をつける。
「――すごい! フルーティーで甘くてコクがある!
これ、朝陽が言ってた紅茶の味じゃない?!」
あ、そういうことか。
なんて説明しようかな。
「んーとね、今の二人は『お守り』の力で、このお店のメニューを美味しく感じられるんだよ」
二人がきょとんと私を見つめてきた。
早苗が私に告げる。
「それ、どういう意味?」
歩美も困惑してるみたいだ。
「お守りで味覚が変わるってこと?」
カウンターからトレイにケーキを乗せて、マスターがこっちにやってきた。
「その辺り、そろそろ説明しておこうかな?」
私は思わず尋ねる。
「マスター、説明しても大丈夫なんですか?」
「ダメだったら、お店を出た時に忘れるようにしておくから大丈夫」
早苗と歩美が、きょとんとしてマスターを見つめて居た。
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「甘い! とろける! なにこれ、ショートケーキだよね?!」
早苗が感激したように体を震わせていた。
歩美もたっぷりと味わってから飲み込み、ため息をついた。
「――ふぅ。これがお守りの効果なのね。
でも、マスターが神様って言われてもピンとこないわ」
「ハハハ! それはそのうちわかることだよ。
――そろそろ四時か。
ちょっと早いけど、ケーキを食べ終わったら研修を始めようか」
早苗たちうなずいた。
研修、つまりスタッフルームの案内と、業務の練習だ。
マスターが早苗たちをスタッフルームに案内し、私の時と同じように設備を説明した。
歩美が手を挙げて告げる。
「この部屋の清掃はどうするんですか?」
「いつもは僕がやってるけど、代わりにやってくれるなら助かるかな。
今日は接客に専念してもらって、明日教えることにしようか」
「……じゃあ、トイレの清掃は?」
「もちろん僕がやっていたよ?」
あわてたように歩美がトイレに駆け込み、中を確認していた。
「……明日から、トイレのゴミ捨ては私たちが担当するってことでいいですか?」
マスターがニコリと微笑んだ。
「そうしてくれると助かるよ。
よろしく頼むね」
きょとんとする私と早苗は訳がわからず、マスターと歩美を見比べていた。
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マスターは「じゃあ、清水さんと荒川さんも着替えておいて」と言ってスタッフルームを出ていった。
私は歩美に駆け寄って尋ねる。
「どうしたの? 急にゴミ当番をやりたいって」
「……トイレの中、見てみなさいよ」
どういう意味だろう?
中を確認してみても、ありきたりのよくあるトイレだ。
きれいに掃除が行き届いていて、埃一つない。
私は歩美に振り向いて尋ねる。
「なにかおかしなところ、ある?」
「……サニタリーボックスがあるでしょ」
――あっ?!
「まさかマスター、サニタリーボックスの掃除までしてたの?!」
「見たところ新品だから、朝陽のために用意したのでしょうね。
でもお客用のトイレにも多分、あるんじゃない?」
うへぇ、そんなものをマスターに掃除させたくはないなぁ。
早苗がのんきな声で告げる。
「別に気にしなくたっていいんじゃない?
そんな細かいこと気にしてたら、長生きできないよ?」
歩美が猛然と早苗に食って掛かった。
「いいわけないでしょ! 男性にこれの処分なんてさせられないわよ!」
「歩美は気にし過ぎだよ~。
それに神様なんでしょ? 男性の姿をしてるだけで」
「それでもよ!」
私はあわてて二人の間に割って入った。
「まぁまぁ、落ち着いて歩美。
とにかく、女子がトイレのゴミ掃除をする。それでいい?」
歩美はしっかりと、早苗は渋々とうなずいていた。
****
私たちは割り当てられたロッカーを開け、喫茶店の制服に着替えていく。
歩美がスカートを履きながら、不思議そうに小首をかしげていた。
「サイズぴったりね……どうやって私たちのサイズを知ったのかしら」
早苗も不思議そうに、シャツを着て胸元を見ていた。
「胸のサイズも丁度いい感じだね。
肩も苦しくないし。どういうこと?」
そう言われれば、私も苦しくなかったな。
私が小首をかしげていると、歩美がハッとしたように告げる。
「まさか、私たちの体のサイズを知ってるの?!」
「まっさかー。マスターはそういうこと、しない人だと思うけど。
「……わかんないわよ。
神様だから、感覚がずれてるのかもしれない」
そうかなー?
少し警戒してるような歩美を連れ、私たちはスタッフルームを後にした。
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スタッフルームの外ではマスターが待っていて、穏やかに微笑んでいた。
「賑やかだったね。
君たちに余計な気を使わせてしまったかな?」
歩美が頬を赤らめながら応える。
「いえ、女子の尊厳の問題ですので。
用意をしてくれたことはお礼を言います」
マスターがニコリと微笑んだ。
「トイレの拭き掃除が僕がやっておくから、君たちはゴミ掃除だけでいいよ。
それでも汚れが気になった時のために、やり方だけは明日、教えておこう」
スッと歩美が手を挙げた。
「それで、なぜこの制服が私たちにぴったりなのか、教えてもらえますか」
睨み付けるかのような歩美の視線を、マスターは穏やかな微笑みで受け止めていた。
「ああ、気になったのかな?
大丈夫、僕が君たちの体のサイズを知ってる訳じゃないよ。
その制服は、自然と体に合った大きさになる。そういう服なんだ」
早苗が感心したようにうなずいた。
「へぇ~、さすが神様なんだね」
クスリとマスターが笑って告げる。
。
「じゃあ、接客のやり方を教えるね」
それからマスターは、基本的な業務内容を私たちに教えていった。
とはいえ、お客さんを出迎えて席に案内し、水を出す。
注文を取ってマスターに伝え、メニューができたらテーブルに運ぶ。
そしてお客さんが帰ったらテーブルを片付ける。
基本的な接客はこれだけだ。
「――わかったかな?
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