真冬じゃなくても君のとなりに

きどじゆん

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#4

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「なんだあ、タカハシは今日も欠勤か?」
 早朝のとある高層オフィスビルの一室で、男が不満げに漏らす。
 彼はとある銀行のネットワークインフラ運用を担当するチームのリーダーで、ベテランだ。
「はい」と彼の身近にいる若い男が返事する。若い男は、そのチームに入ってニ年目となる、見た目を裏切らない経験の浅い若手社員だった。
「今日も女性の方からの連絡でしたけど、電話番号はタカハシさんのでしたから」
「じゃあ、あいつ彼女に電話してもらってるのか?」
 うらやましいもんだ、とチームリーダーがぼやく。

「二十五日からだったか、あいつが休み始めたのは」
「そうですね。今日で五日目になりますね」
「まあ、あいつに有給とらせようと思ってたから別にいいんだが、せめて仕事納めぐらいしていけって、なあ?」
 チームリーダーは若手社員に同意を求める。
 しかし、若手社員は同意しかねるようだった。
「いやあ、タカハシさんですよ? あの人嫌いじゃないですか、年末年始の挨拶とか、会社のイベントとか。そういうのだいたいやりたがらないし、参加したがらないですもん」
「そういやそうか。なら風邪でノドをやって会社を休めたから、あいつにとっては都合いいんだろうな」
「いやいや、そのせいで僕に仕事がまわってきて残業続きなんですから、こっちにとっては不都合しかないですよ」
「今のうちにそれぐらいやっとけ。誰かが急病で数日抜けることなんて、この仕事だったら常に想定しておくもんだ」
 はあ、と若手社員が漏らす。

 チームリーダーはノートパソコンを開き、とあるファイルを開く。そこにはチームメンバー各自の勤務シフトが記録されていた。
 部下一名が年末に出てこれそうもない。おそらく年始も無理だろう、と彼は考えた。
 彼は三十分ぐらいの時間をかけてメンバーの勤務シフトを組み直し、メンバー全員へメールでシフト変更の旨を通知した。
 部下のタカハシのシフトには、翌年三日まですべて休みが入れられている。
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