初恋

桜 詩

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新婚の日々

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《朝の輝く陽光も、薔薇の前には儚く Keith》
キースは情熱家なようで、度々こうした恋文をレオノーラに花を添えて贈ってくる。
こそばゆいような心地もあるけれど、常に気配りを忘れないキースは優しさを常に漂わせている。
「まぁ、これってレオノーラ様を花に例えて?」
ジーンが横からカードをまじまじと見つめた。この一文に添えられていたのは赤い薔薇(※ 花言葉は 美 )だった。
「素敵な方がすると、本当にロマンティックでうっとりしますわね」
ヘーゼルもうっとりと花とカードを見ていた。

社交のオフシーズンの領地での生活は暇でもある。
だからこそだが、レオノーラとキースは新婚らしく甘い毎日を送っていた。

アークウェイン邸のメイドたちも、ベッドに裸でいる主夫婦にすっかり慣れて、朝食を寝室横の部屋に運ぶのも日課になっていた。
「キース様レオノーラ様朝食をお持ちしました」
こんこんこんとノックと共に声がかけられる。
「あー、お腹すいたね…」
レオノーラはそのままベッドから降りると、一糸纏わぬ姿で隣室に行ってしまう。
長身で均整のとれた裸体を惜しげもなく晒すのでメイドたちは始めは赤くなっていたが、近頃ではさっとワンピースを着せる事に慣れてきていた。
キースもまた肌着のシャツと、ラフなズボンで朝食を摂りにレオノーラの向かいに座る。

二人とも体格に違わぬ食欲であっという間に平らげた。

と、いつも通りレオノーラがお茶をゆっくりと飲んでいると、
「あのぅ奥さま…ひとつお伺いしたいのですが…」
メイド長のカリーナが言いづらそうに切り出した。
「キース様の前でなんですが…」
「なぁに?どうかしたの?」
レオノーラが微笑んで促す
「こちらに来られてからまだ月のものがありませんし…そのジーンたちにも聞きましたが結婚後1度も来てないと聞きまして…もしやそのご妊娠ではと…」
キースは驚いてレオノーラを見た。
「私はもともと何ヵ月に一回しか来ないんだ。だから違うと思うよ?」
「まぁ!奥さまそれはいけませんわ!」
その驚きにレオノーラはたじろいだ。
「…そう?」
「キース様は跡継ぎですし、レオノーラ様にはお子様をお産みになって頂かないと…」
キースは、困ったようにやり取りを見ていた。
「…毎月来ないから煩わしく無くていいと思っていたけど…やっぱり駄目かな?」
「もちろんいけませんわ。レオノーラ様のお体にもよくありません」
ヘーゼルもうなずいた。
「ひとまず医師を呼びますから、間違いなく妊娠ではないか確認してもらいますわね」

メイドたちが下がると、キースとレオノーラは顔を見合わせた。
「正直…まだ考えていなかった」
キースがポツリと言った。
まだ結婚して数ヵ月だ。しかし、そういう可能性はあったというのに失念していた。

「…キースはもちろん子供が欲しいと思うよね?」
レオノーラは聞いてなかった事を確認してみた。
「…それはもちろんいずれは、と思うよ…だけど必ず産んで欲しいと迫るつもりもない」

その日の昼過ぎに呼ばれた医師は、
「奥さま、それはよろしくありません。まずはこの薬湯を続けてお飲みください。血の道を整える作用があります」
「やっぱりよろしくない、のか…」
「そう、難しく考えずにゆったりとしたお気持ちでお過ごし下さい。何も問題がなくてもなかなか授からない事もありますから」
そのうち出来るものだと簡単に考えすぎていたのかな、とレオノーラは医師と話して思った。

ましてレオノーラは若い花嫁ではないし…急いだ方が良いのかと急に現実的な問題として襲いかかる。

「レオノーラ…?」
「なんかそういう事もちゃんと話してなかったんだなと思って」
「気にすることはない。レオノーラが欲しいと思うときに出来ればそれが一番だ」
微笑むキースは、レオノーラを宥めるようにキスをする。
レオノーラはキースの優しさを感じて、腕を回してキスを返した。
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