王妃の階段

桜 詩

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伯爵家の朝

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またまた新聞にはエリアルドがでウェルズ侯爵家の舞踏会に来たという記事で、フェリシアに会いに来て彼女とだけ踊り、また会話を楽しんだと書かれていた。そしてまたどこに絵師がいたのかわからないが、二人の親密そうな姿が描かれていた。
未来の王妃が今にも決まりそうな勢いで書かれていて、その記事を読んでいるラファエルも父親の心境としては複雑そうだ。

ブロンテ家の朝食の席。
広く長い磨かれたテーブルには今、ラファエルとフェリシアの二人のみが座っていた。
朝用のドレスは、白い生地に薄いグリーンの縞が入っていて、ウエストには薄いグリーンのサテンのリボンがついている。

「大丈夫か?フェリシア」
とラファエルに聞かれて、何がだと思う。

「大丈夫じゃないと私が言えば、この話がここで終わりになるとでも?」
八つ当たりだと思うが、あたり所はここしかない。
「いや…、だけど娘が心配である事は偽りない気持ちだよ」
ラファエルは大好きな父だけれど、今は伯爵としての顔を半分見せてくる。その事がフェリシアとラファエルの間に距離を作り、二人の心を痛ませていた。

「とても順調にいってるわ。今度は乗馬に誘われるみたいよ」
そう告げる声にはすこしばかり苛立ち混ざりの棘があり、それはフェリシアにもどうしようも無かった。
「楽しく過ごせると良いな」 
「そうですね、お父様」

そう、何となく気まずくなった所でティファニーとローズマリーが入ってきた。

「ローズ、ほらもうお父様もお姉様もお席に着いていたでしょう?」

「だって、このお洋服じゃ嫌だったんだもの」
ローズマリーはぷくっと頬を膨らませた。その可愛らしい子供の声と言葉に気まずかった空気を一掃してしまう力があった。

「ローズ、お母様を困らせたの?」  
「ピンクが良いのに」
「毎日ピンクは無理よ?」
近頃ピンクブームなのかローズマリーは、ピンクばかり着たがる。今のドレスはオレンジでも、とても可愛らしいのだが…
「でも、そのオレンジも貴女の栗色の髪と良く似合ってて素敵よ?」
「ほんとう?」
「本当よ、ね?お父様」

「そうだね、ローズ。とても今日のドレスもかわいいよ」

父が大好きなローズマリーは途端に顔が明るくなる。そしてフェリシアの隣の席にちょこんと座った。

「ねぇ、お姉ちゃま」
ローズマリーは体ごと向けて話しかけてきた。
「なあに?」
「お姉ちゃまは、王子さまとけっこんするの?」
無邪気な問いにピクリと肩が揺れる。
「ローズ、それは誰が言ってたの?」
フェリシアはスプーンを置いて、隣のローズマリーを見た。

「えっとね、キッチンのメイドたちよ」
「また、キッチンに降りたの?」
ローズマリーはとてもお転婆で、階下にもよく降りているのだ。
「いい?レディはキッチンに行かないものなのよ」

「えー、だっておもしろいんだもの。それに美味しいものがたくさんあるもの」
「あら、…何回怒られても行くのは、美味しい物につられちゃうのね。でもね、皆はお仕事をしてるのだから邪魔をしてはダメ」
フェリシアが諭すように言っても、ローズマリーの興味は王子様・・・だった。
「ねぇ、それでお姉ちゃまは王子さまと踊ったんでしょう?私も大きくなったら王子さまとおどれるかしら」
ローズマリーと同年代の王子は現在いない。デビューする頃には王子様はオジサマだろうしきっと独身でもない。

「どうかしらね、でも素敵な人がきっとたくさんローズの前に現れるわ」
「ほんとう?」
「もちろんよ。お姉ちゃまはそう思うわ」
ローズマリーはその、言葉に嬉しそうにはしゃいで朝食を食べだした。

「たくさん食べてはやく大きくなるの」
「そう、じゃあ、好き嫌いしないでちゃんと食べないとね」

フェリシアはローズマリーをほほえましく見ながら髪を撫でた。
今はこの無邪気さがとても有り難かった

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