Sin&Battle 〜罪対意義〜

白木 梓

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壱章 始・闘・覚

第2話 空漠

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「まさか…あの山越えるんですか?」

俺は驚愕した。どう見てもでかすぎる山だったからだ。あそこを歩きで乗り越えるのか?しかも俺の体はまだ万全とはいえないんだぞ。しかも仮にそのロストとか言う奴らが来たらどうするのか。
だが俺の不安とは裏腹に海星さんは飄々と答えた。

「そのまさか。でもいいじゃん!!病み上がりの運動になると思うけど…。あとさ、雄斗の記憶が完全復活したらさ、自分の戦闘スタイルが再度身につくから。それまでのリハビリだと思ってさー!」

そう言い海星さんは手を広げる。俺はその話を聞いて思った。

「やはり俺は戦っていたんですね。海星さん、教えてください!俺はなぜロストの奴らと戦っていたのか!」

海星さんは少し躊躇いをつき俺に言った。

「いや、記憶を戻してからの方がいい。人はね、記憶の前と後では違うことを考える。だからね、記憶を失う前の雄斗を取り戻してほしいんだ。まー記憶が戻るとは限らないけど」

少し反論しようとしたがそれはやめといた。確かに記憶を戻してからの方がいろいろと面倒くさくならないからな。でも行った所で記憶は戻るのか。

空にだんだんとオレンジ模様が染め上げ、暗くなってきた。そこから数十分間歩いた俺達一行は山のスタート地点についたのだか、流石に体も限界を迎えていた。

「そろそろ疲れてきました。ここらへんでテント張って休みましょうか」
「賛成ー。そろそろ足も泣いてるからなー。休も休もー」

俺達はテントの準備を始めた。

「雄斗は休んでていいよん。病み上がりもあるし疲れてるだろう」

海星さんは俺の体を気遣ってくれた。

「はぁ~はぁ~。ありがとうございます!!」

俺はその言葉に甘え、横にある石垣に腰を下ろした。
俺が休んでいる際も、二人は手慣れた動きで組み立てていく。そうしてテント作りも後半に差し掛かった‥

と、その時!テントを組み立てていた海星さんと伊月さんが突然素早く立ち上がる。

「やっぱり隠れてたよねー」

と、海星さんが言い放ったその時だった。

森の中から全身黒で纏っていて、不気味なペストマスクをしている異様な奴らがでてきた。しかもナイフや銃で武装しているではないか。

「雄斗、これが“ロスト”ね。覚えといて」
「雄斗、テントの後ろに隠れろ。出てくるな」

伊月さんが俺に避難を促した。俺は従ってテントの後ろに隠れる。俺は2人とロスト一行の会話を聞いていた。

「おいおいお前ら。ここはピクニック場所じゃねーんだよ。抵抗しなきゃ楽に殺してやるからな」

その言葉を聞いた伊月さんが続ける。

「俺はお前らのような政府の犬とは話したくないね。海星さん。ここは私でいいです」
「オッケー。じゃ先テント組み立ててるね。頑張れ伊月。ま、相手にはならないと思うけ・ど」 
 
その時海星さんが俺のもとに寄ってきた。

「一人か。カッコつけて死ぬなんて嫌だよなー」

俺は不安に駆られた。

「ちょっと海星さん!四人に伊月さん一人は流石に危ないですよ!!」

俺はそう訴えるも海星さんは余裕の表情で言った。

「逆だよ。あの人数では伊月に天変地異が起きても勝てないよ」
「で、でも相手は武装しています。それでもあいつらに勝てるんですか??」

俺は海星さんを信じ、テントの後ろから覗きその戦いを見届けることにした。
すると、先に動いたのは奴らだった。まず3人が伊月さん目掛け襲いかかる。
しかし伊月さんは表情一つ変えなかった。

「お前ら馬鹿すぎるだろ」

伊月さんがそう発した……その時!
伊月さんは手を横に一閃した。

グシュッッッ

すると、襲いかかってきた目の前の三人は喉から血を吹き出し地面に倒れていった。

「グガァー」
「グファ」
「ダァー」

「な、何が起きたんだ??な、何が!!」

俺は何もかも理解できずパニックに陥ってしまった。
その様子に気づいた海星さんが言った。

「伊月はね、5体全てが凶器だよ。怖い怖い」

いや、伊月さんの手をよく見ても何もないように見える。

(どこに武器が……)

俺はそう思った。
すると伊月さんは残ったボスらしき男を挑発する。

「もう一人になっちまったな。てか、なんで一人相手に正面攻撃なんだよ。普通はな、包囲するんだよ。正面から来たらひと思いに裂けば終わりだろ。そこまで頭の使えない奴らで可哀想だよ、ほんと。さ、死のうか」

「つくづく俺を舐めやがって!」

奴は腸が煮えくり返っているようだが、伊月さんは挑発を止めない。

「てかお前、強くないだろ。ジエザーでもない。マスクになにも刻まれていない。弱すぎるんだよ」

その挑発めいた言葉を聞き、ついに奴の堪忍袋の尾が切れた。

「このクソガキがー!!俺は強い!俺はーー強いんだーー!!」

すると怒りにより冷静さをを失った奴は闇雲に銃を撃ち襲いかかる。

「ハァッ」

しかしその銃弾すらも伊月さんは交わしてみせた。

「戦闘中は冷静さを失うなよ。殺気出しすぎ、銃の軌道、全て丸分かりだぞ」

銃を撃つ奴の腕が伸び切る。

「腕が伸びきっちゃったな。貰ったぞ!」

ボキッ

「いでぇーーー」

そして男の腕を脇にはさみ逆に向けた。男は情けない声で喚く。

その時‥

パチッッッ

という音が伊月さんの右手から鳴る。
そう、伊月さんはヒィンガースナップをしたのだ。ヒィンガースナップとは指で音を立てる行為。

と、同時。伊月さんの目がピンク色に光ったんだ。
伊月さんは倒れる既の男を蹴り飛ばす。

ドンッッッ

「グガァッ」

すると伊月さんはいつどこから抜いたのかわからないナイフを奴に投げた。

     【エスパシオ 空の斬りくう き 

[◉《空の斬り》 モノに空間を通し、標的へ攻撃させる技]

シュンッッ

「………は?」

俺は驚いた。
なんと伊月さんの放ったナイフの速さが、空中の蝿でさえ掴めそうな速さで、正確に奴の心臓を貫いた。

「クガァァァァァ」

当然奴は即死だった。

「お前らごときが俺に勝てると思うなよ」

なんと‥四人を伊月さん一人で始末してしまった。
戦いを終え伊月さんはこちらに寄ってくる。

「フフ、伊月もさらに強くなったね」 

俺は理解という言葉を捨てた。

「え?はえ?これ夢なのか?何が起きたんだ??てか、この強さで『幹中』?は?ひ?」
「落ち着きな。所詮伊月からすればーあいつらなんてー米粒以下の……豆だね!」

(大きくなってる‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥)

「まさか、伊月さんの手は爪が長くて、それが武器‥とか?」

俺は質問したが、伊月さんに一発軽く殴られた。

「イテッ」

「なわけないだろ、それ女子にモテないやつだろ。俺はな、漆黒暗記を使ってんだよ。夜だと色が被り、全く見えねー。握っているのかすら分からねーから、ま、相手からしたら厄介だ」

「ふぁい、すびばせん」

それはもとより、俺はすげー気になることが一つある。

「あ、あの、それと‥伊月さんの目が光った気がするんですが……?気のせいでしょうか……?」

俺は疑問をぶつけた。

「フフ、それは気のせいではない。まぁ~カラリアにいけばわかるかな‥?だって君、“持ってるほうでしょ”」

                  Continue…

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