約束が繋ぐキミとボク

黒蓮

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第一章 運命

協力関係

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 リーアが目を覚ましてから1週間が過ぎた。
幸いにして、今のことろ彼女の事は村の人達にバレていない。今もなお人族と魔族は戦争を繰り広げ、こんな辺鄙な村でも幼い頃から魔族の凶悪性を教えている状況で、魔族であるリーアの存在が村の人達に知れ渡れば、どのような扱いを受けるか不安があった。
最初にリーアが目覚めたのが夜中だったこともあり、あれほど彼女が大声をあげて騒いでいても、皆寝静まっていたためか、母さんでさえ特に何かを聞いてくることはなかった。

「もう翼は大丈夫よ。これでようやく行動できるわ。ありがとうライデル」
「どういたしまして」

この一週間、毎日僕特製のポーションを飲み続けた彼女の怪我は、ようやく完治することができた。身体の割りに小さめな翼をパタパタと動かして調子を確認しているリーアの様子は、なんだか可愛らく僕の目に映った。

「ん?何よ、その目は?魔族の翼がそんなに珍しいの?」

僕の視線に気づいた彼女が、少し棘のあるような言い方で凄んできた。

「ごめん、そうじゃなくて・・・リーアの翼はちっちゃくて可愛いなって思って」
「っ!か、可愛いってなによ!?」

彼女は頬を膨らませながら僕の言葉に抗議してきた。そんな彼女に、僕は思ったままの感想を口にする。

「パタパタ動いてて、小動物っぽいなって」
「ふん!人族の感性は理解できないわ!・・・ところで、ライデルは月下草の場所は知ってるの?」

彼女は口を尖らせながらそう言うと、大きく息を吐き出してから話題を変えてきた。
それはきっと身体の傷が癒えたことで、本来の目的を成すために行動したいのだろう。

「大体の場所はね」
「そう。なら、その場所を教えてくれない?私は弟のため、どうしても月下草が必要なの」

真剣な眼差しで僕の瞳を真っ直ぐに見つめてくる彼女に、僕は包み隠さず伝えることにした。

「リーア、君には無理だ」
「どういう意味!?」

僕の言葉に、彼女は怒りの籠った眼差しで睨んできた。そんな彼女に、僕はその理由を伝える。

「月下草はあの森の深層にある、湖の中の島に生えているんだ。でも、魔物が闊歩する森の中、そこまで行くだけでもかなりの実力が要求される」
「・・・それは分かっているわ!でも、私なら空を飛んで行ける!」

僕の説明に彼女は神妙な面持ちになって聞き入り、理由に対して反論してきたが、実は一番の問題はそこに行くまでの道中ではなかった。

「違うんだ、リーア。空を飛べても意味がない。何故なら、月下草の生えるその湖周辺を縄張りとしている、強大な魔物がいるんだ」
「・・・それって?」
「・・・グリフォンだよ」
「っ!!」

僕の言葉に、彼女は驚愕の表情で固まってしまった。

「彼らはあの湖で繁殖していて、たぶん数は5体は下らないと思う・・・」
「そんな・・・難度七の魔物のグリフォンが5体なんて・・・」

追い討ちを掛けるような僕の話に、彼女はベッドの上で脱力したように俯いてしまった。
それでも、力強く握りしめられた拳からは、諦めまいとする彼女の意思の強さを感じる。

「それなりの戦力を準備出来ればだけど、こんな田舎の村では不可能だし、そもそもリーアの正体を他の人に明かせない以上、僕と2人で頑張るしかない。かなり勝算は低いけどね・・・それでもやる?」
「ライデル・・・あなた、私に協力してくれるの?」

俯いていた彼女は顔を上げ、あり得ないといった表情で僕を見てきた。

「ここまでしておいて、リーアを放ってはおけないでしょ?最後まで君の力になるよ」
「・・・何で魔族である私にそこまで?物凄い危険なのよ!?難度七のグリフォンを5体も相手にするには、それこそ熟練した兵士が、最低でも20人は必要な魔物なのよ!?」

彼女は僕の行動が理解できないようで、協力する理由を知りたいようだった。

「リーアの事を泉で見つけた時、僕は君を助けるって決めたんだ。なら、最後まで協力するのは当たり前でしょ?それに僕は、目の前の困っている人を見過ごせないんだよ」

僕の返答に、彼女は困ったような表情をして口を開いた。

「・・・そこまでしてくれても、私には返せるものが無いわ・・・」
「何も要らないよ。僕はただ、自分が胸を張っていられるような選択をしているだけなんだから」
「ライデル、あなた・・・」

彼女は僕の言葉に目を見開くと、少し呆れたような表情をしていた。

「それで、どうする?」

僕は再度、彼女に問いかけた。

「・・・私に協力したら、ライデルは巻き添えで死ぬかもしれないのよ?」
「そうだね。もちろん分かってるよ?」
「・・・・・・」

僕の返答に彼女は少し考えるような仕草を見せ、何かを決意したような表情になったかと思うと、ベッドから降りて、僕の前で深々と頭を下げてきた。

「私に協力してください。お願いします」
「ああ、勿論だよ」
「・・・ありがとう」

彼女は震える声で感謝を伝えてきた。頭を下げる彼女の視線の先の床には、どこからか落ちてきた、小さな水滴が染みを作っていた。
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