エナドリ転生 〜怠惰な暮らしが希望です〜

黒蓮

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第二章 学園生活

交流試合 1

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「ではこれより、ゼベック聖獣王国留学生と、我が校代表者の交流試合を執り行う! 先ずは皆に、試合の出場者を紹介しよう!」

 入学式の二日後、学園の演習場に全校生徒が集められ、生徒会長の宣言の元、交流試合が開始された。

(なんで私がこんな目に︙︙)

 入学式の翌日、聴講生として座学の授業に参加していた私の元へ生徒会長が来ると、「君はジェシカの案内役だったな。明日、交流試合を開催することにしたから出場するように。これは第二王子である僕の命令だ」と、返事も聞かずに言いたいことだけ言って教室から去っていった。

 関係ないと思っていたのにもかかわらず、一方的に参加するように告げられ、呆然として何も言えなかった。
 隣に座っていたライオネル嬢からは、憐れむような視線を感じ、自然と大きなため息を吐いてしまった。

 まだ二日しか学園にはいないが、生徒会長である第二王子の噂はかなり耳に入ってきていた。
 曰く、学生として優秀ではあるが、飛び抜けているわけではない。王族として評価するなら凡庸という言葉が当てはまる。
 努力が苦手のようで、王子の護衛からは「もう少し責任感を持って欲しい」と愚痴を溢されてい等々︙︙酷い言われようだった。

 王族とは畏敬の念を持たれていると思っていたのだが、現実は世知辛いようだ。

 ただ、生徒会長に無茶振りされた影響か、当初は聴講生として蔑みの混じった視線を教室の生徒から向けられていたのだが、彼が去った後は同情の眼差しに変わっていた。

 そして――

「おい、聴講生。盾役は任せるぞ」

 演習場の中心。交流試合という国際交流のイベントのはずなのに客席の設営もなく、戦いの舞台を分けるのは簡素な白線のみ。

 全校生徒たちからの注目が集まる中、ドラコニル嬢の案内役が話しかけてきた。
 交流試合の出場者は、全員案内役の生徒だった。顔合わせで面識はあるが、言葉を交わしたのはさっきが初めてだ。第一声は、「聴講生のお前は、肉壁しかできないだろう」と言われ、木製の盾を投げ渡された。

 この交流試合のルールは、五人チームでの団体戦。相手を気絶させるか降参を宣言させる。もしくは白線の外側――場外に押し出せば勝利となる。
 戦術として、相手の攻撃や足を止める盾役と、ダメージを与える攻撃役に役割を分けて戦うのが基本のようだ。

 ただ、こっちのチームの盾役は私だけで、相手の獣人たちは男性の獣人二人が盾役、残り三人が攻撃役だ。
 バランスを考えたら相手チームの方が理に適っているのだが、こちらのチームは私以外の全員が木剣を装備し、盾役を拒否した。

 お互いのチームの雰囲気を見ると、相手はドラコニル嬢を中心として纏っているように感じる。
 対してこちらのチームは、私の後ろで誰が指揮を執るかで揉めている。いや、正確には責任を押し付け合っている。 

(急遽決まった交流試合︙︙しかも学園を代表するということは、国を代表すると言っても過言ではない。負ければ責任を問われ、評価も下がる、か︙︙)

 なにしろ相手は、人間が見下している獣人種だ。絶対に負けられない、負けたくないという思いはあるはずだが、指揮権を押し付け合っているということは、自信が無いことの現れだろう。

(まぁ、聴講生である私には関係ないか。この試合で勝とうが負けようが、評価されることもない)

 出場者ではあるが、他人事のように試合の開始を待っていると、選手の紹介を終えた生徒会長が爽やかな笑みを浮かべながら口を開く。

「この交流試合が両国の親交と理解を深め、平和への架け橋となることを願う!」

 舞台役者のように両腕を広げながら演説する生徒会長の様子に、呆れてため息が出てしまう。

(本当に、なんで友好を深めるのに対話じゃなくて拳を選ぶんだよ︙︙)

 改めて生徒会長の考え方に違和感を覚えるが、既に今の状況では止められない。

「それでは交流試合︙︙始めっ!」

 試合開始の号令と共に、距離を開けて対峙していた獣人たちが【獣化】を発動し、こちらに向かって駆け出してくる。
 先頭は、大盾を持ったガイラス君。その見た目も相まって、まるで巨大なサイが突進して来るような迫力だ。
 彼の後ろにはもう一人の盾役であるゴールディ君が追従しており、さらに後方に三人の攻撃役である女性陣が続いている。

(こちらの陣形を崩して分断するのが狙いか? わざわざそんな事しなくても、このチームに連携なんて無理な話だ)

 未だ作戦も決まっていない状況で始まってしまったため、私の後ろからは焦りの声が聞こえてくる。

「おい聴講生! 盾役なんだから、ちゃんとあいつらを止めろよ!」

 クーシー嬢の案内役が私に命令してくる。彼は【身体強化】を発動しているが、獣人の勢いに呑まれているのか、木剣を持つ手は震えている。

「止めた後はどうすれば?」
「その後は各個撃破だ! この作戦は、盾役のお前が奴らの動きを止めることが前提だ! だから止められなかったら作戦が破綻してしまう! つまり、お前のせいで負けてしまう!」

 無茶苦茶な論法を言い出したのは、ガイラス君の案内役だ。どうやらこの状況下で、自分たちに責任が及ばない方法を考え出したようだ。

 私がこのままガイラス君の突進を受ければ、物理的な体重差で弾き飛ばされるだろう。そうなると数的不利も相まって、盾役がいなくなった私たちのチームは敗北する。
 そして、その責任は私に押し付けられるというわけだ。

(やれやれ。失敗したら責任だけ押し付けて逃げようってわけか。前の世界の上司と同じだな︙)

 嫌なことを思い出した私は、木盾を持つ手に力が入る。

「ぬうんっ!」

 眼前まで迫ってきたガイラス君が、裂帛の気合の声と共に大盾を突き出してきた。
 アニメで見たことのある技――シールドバッシュだ。

(本来なら避けるか力を逸らせば良いけど、自分の力の把握もしておきたい)

 そう考え、盾を構えながら後ろ足を大きく下げ、衝撃に備える。
 『ゴンッ!』という衝突音が響くと同時に、私の体にわずかに衝撃が走る。感覚としては、小学生の頃のドッジボールをキャッチした程度だ。

「なにっ!?」

 ガイラス君が驚愕の声を上げるが、獣人チームが動きを止めることはない。不測の事態にも足が止まらないのは、あらゆる可能性を想定して作戦を組んだからか。

「うおぉぉっ!」

 追従していたゴールディ君が横に飛び出すと、私の横をすり抜けるようにして突進していく。その後に続いて女性陣も駆け抜けていく。

(先に後ろを片付ける気か?) 

 四人は私を無視して行くが、眼前のガイラス君は話しかけてきた。

「この体重差を完璧に受け止めるとは︙︙やはりお前が一番の実力者か」
「やはり?」

 彼の断定口調に首を傾げる。良い意味でも悪い意味でも目立ちたくないのだが、一目で分かるほど実力をひけらかしているつもりはない。
 
「【獣化】は、本能が研ぎ澄まされる効果もある。相対する者の実力を、直感で感じ取れるのだ」
 
(そういえば、アニメでも実力の劣る者から確実に対処していくのは定石だったな)

 そんな事を考えながらもガイラス君の次の一手を待っていたのだが、彼は鍔迫り合いのように盾を押し込んでくるだけで、動きに変化はない。そうなると、彼の役割は時間稼ぎだろう。

 そう思い至り、後ろの様子を伺うために視線を向けると、ちょうどクーシー嬢の案内役がゴールディ君に体当たりで弾き飛ばされているところだった。

「今です! ポメラは右! ジェシカは左ですわ!」
「了解!」
「ハイなのです!」

 ドラコニル嬢の指示の元、女性陣が残る三人に襲いかかる。ライオネル嬢は身軽な動きで、クーシー嬢は機敏な動きで相手を翻弄している。
 ライオネル嬢は木製のガントレットを、クーシー嬢は二本の木製の短剣を装備しており、手数の多さで圧倒している。
 そしてドラコニル嬢は――

「参ります」
「くっ! かかってこい!」

 律儀に宣言をしてから攻撃に移るようで、手にしている木製の薙刀を下段に構え、そのまま徐々に間合いを詰めていく。
 早くはない。まるで歩いているようにも見えるが、その正面にいるドラコニル嬢の案内役は木剣を持つ手が震え、冷や汗が止まらない。

(威圧? 殺気? わからないけど、まるでヘビに睨まれたカエルだな)

 ドラコニル嬢は薙刀の間合いまで近づくと、下から掬い上げるよう薙刀を振り抜く。

「ぐあぁぁ~」

 案内役の彼は叫び声を上げながら、何もできずに場外へと吹き飛ばされていった。
 それを見届けたドラコニル嬢は、今度は中段に薙刀を構えると、手近なライオネル嬢の方へ加勢し、瞬く間にもう一人を吹き飛ばした。
 
 その頃にはクーシー嬢が戦っていた案内役を気絶させており、残るは私一人となっていた。
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