変幻自在のアルマ遣い

黒蓮

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留学編

実地視察 6

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 パピル様と共に遊撃部隊として現場に到着すると、そこは見渡す限りの穏やかな草原の様相を呈していた。天候が良いこともあり、ピクニック気分で草むらに寝転がって日向ぼっこをしたくなるような光景だが、残念ながらそんなことをしている暇は無い。

「じゃあ、隊列の確認をするわよ!基本陣形はひし形で行動して、お互いの間隔は5m程度の距離を保つこと!進行方向に対して前衛はパピル、左翼にジルジル、右翼と殿しんがりは2人に任せるわ!」

パピル様は僕達を見渡しながら陣形の確認を行った。僕の配置については、先にも結構入念な説明を受けたのだが、従者の2人については適当な指示だった。とはいえ、そもそも従者の2人はクルセイダーとしての実績もあるので、パピル様の大雑把な指示でも完璧に動けそうだった。
今回の作戦行動で害獣を発見した場合、遊撃として少数の害獣と対峙することを想定した作戦を立てている。討伐対象が1匹であれば4人で取り囲み、僕が具現化した盾で相手の動きを妨げ、残りの3人で止めを刺す。2匹の場合は、僕が1匹を足止めしている隙きに3人が別個体を討伐する。害獣が3匹まではこの作戦を応用して動き、4匹以上の場合は対峙することなく撤退ということになっている。
これは、害獣の数が多ければ多いほど奴らは連携して攻撃を仕掛けてくるという厄介な習性があるため、4人部隊である僕らは、安全を最大限考慮して事前にそう決めている。正直、一人一殺で4匹でも大丈夫だとは思ったのだが、仮に討伐に時間が掛かってしまうと、周辺の仲間を呼ばれてしまう可能性を懸念しての事だと、従者の人から説明された。
そうしてパピル様の号令の元に陣形を組むと、僕らは予め指示されていたルートで進行を開始した。


「ジルジル!そっちに行ったよ!!」
「分かりました!足止めしますので、殿下は止めを!」

 進行を開始してから1時間、僕達は予定のルートで歩みを進めながら、はぐれのピッグディザスターを連携して討伐していった。
そもそも進行ルートがそれほど危険性のない場所ということもあってか、当初懸念していたような4匹以上の群れに遭遇することはなかった。大体は1匹、多くて2匹なので、僕達は危なげなく討伐数を増やしていく。
そして今、パピル様の索敵で単独行動していたピッグディザスターを発見し、4人で取り囲むような位置取りをした後、パピル様が僕の方へと追い立てるように強襲すると、驚いたピッグディザスターは作戦通り、こちらの方に向かってきた。

『ブモ~!!!』

逃げ出した進行方向に僕の姿を確認したのだろう、ピッグディザスターは怒ったような雄叫びをあげながら突っ込んでくる。その行動を確認した僕は、刀に具現化していたアルマエナジーを、大きな盾へと変形させる。

換装かんそう!」

直後、『ドシーン!!』という衝突音が辺りに響き渡り、砂煙が舞う。視界が効かなくなった状況でも僕は焦ることなく盾を構え続け、ピッグディザスターの動きを完全に止めていた。

「えぇ~い!!」

ピッグディザスターの動きが止まった瞬間を見逃さず、後ろから追ってきていたパピル様が左後方から側面に回り込み、走る勢いを利用しつつ、レイピアを思いっ切り突き出していた。その動きで視界を遮っていた砂煙が部分的に拡散し、パピル様の姿をハッキリ捉えることができた。止めの一撃は、以前見せてくれたようにレイピアの切っ先が伸び、ピッグディザスターの心臓を正確に貫いたようだ。

『ブモ・ーーー』

弱々しい断末魔の声を上げると、ピッグディザスターの巨体がゆっくり傾き、地鳴りのような音を立てて地面に倒れ伏した。当然パピル様は巻き込まれないよう、既にバックステップで相手から距離をとっている。そしてこれで、討伐した個体がちょうど10匹目となった。

「さっすがパピルとジルジルの力だよね!こんなに順調に討伐できてるなんて、砦の司令官もビックリじゃないかな!?」

血が滴るレイピアを振って血糊を落とすと、具現化したアルマエナジーを解除したパピル様は、満面の笑みを浮かべながら小走りに駆け寄ってきて、両手でハイタッチをしてきた。

『パンッ!』と小気味良い音が周囲に響くと、自然と僕の頬は緩んでいた。これは討伐する度に行う恒例儀式の様なものになっており、パピル様への労いも込めて応えていた。

「さすがパピル殿下です。一撃で正確に心臓を貫く技量は素晴らしいです!」
「ジルジルのお陰だよ!いくらパピルでも、動き回る相手だったらこんなに正確に貫けないけど、ジルジルが動きを完全に止めてくれるから、簡単に止めを刺せたんだよ!」

僕がパピル様へ称賛を送ると、興奮した表情をしながら、パピル様は僕のお陰だと褒めてくれた。

「実は今まで連携した害獣の討伐は経験があまりなくて、少し不安もあったのですが、やはりチームで動くと効率的ですし、安心感も違いますね」
「へ~そうだったんだ。これだけジルジルには実力があるのに、意外だね~」
「まぁ、僕はまだ未成年ですから、国としてもあまり実戦の場に立たせてしまうのは外聞が悪いという考えなのかも知れませんね」

僕が実戦経験の少なさを口にすると、パピル様は意外そうな表情を浮かべていた。そんなパピル様に対し、僕は有り得そうな理由を説明してみせた。ただ、パピル様はそんな僕の考えに否定的な意見をみせた。

「う~ん、理由は違う気がするな~。クルセイダーなら、未成年でもある程度実力があれば戦場に立つのが普通だよ。国防の要でもある害獣対策なんだから、なおさらでしょ?どの国も人員に余裕があるわけじゃないし。ジルジルが実戦に招集されないのは、もっと別な思惑が働いてるんじゃないかな?」

そう言われて僕も少し考えるが、今までそれほど真剣に考えたこともなかったので、それらしい答えが導き出せるわけもなく、パピル様もそれ以上この話題に言及することはなかった。


 それから夕方近くまで害獣の討伐に明け暮れ、気づけば撤収時刻となっていた。今日は4時間ほどパピル様とチームを組んで害獣討伐に当たっていたが、振り返ってみるととても充実していた気がする。
討伐数をこなしていくほど、連携をしている相手がどのように動こうとしているのか、何を欲しているのかという事が分かっていき、皆が動きやすくなるように自分も行動を変えると、更に効率が良くなり、結果として大した労力も使わずに害獣の討伐を可能としていた。
あまりの簡単さに、パピル様の2人の従者は驚いていたようだったし、パピル様自身も終始上機嫌な様子だった。また、討伐する毎に行っていたハイタッチも、終盤になるとパピル様は興奮したのかハグを迫ってきたのだが、あまり忌避感なく受け入れることが出来た自分に後で驚いた。
僅かな時間ではあったかもしれないが、一緒の目的に向かって共に力を合わせて努力し、その成功を分かち合うということがこれほど相手との距離を縮めることになるのかと、驚きを隠せなかった。

帰りのトラックでの移動では、僕の隣に座るパピル様とは肩が触れ合うほど距離が近かったが、以前みたいに落ち着きなく不安な感情に囚われることはなかった。そんな僕の様子に、パピル様は上目遣いに顔を覗き込んで来て、妖艶な笑みを浮かべながら口を開いた。

「これでもうパピルとは大丈夫だね?」

何が、とは言わないその言葉に、少しだけ心臓の鼓動が早まるも、それほどの恐怖は感じられなかった。

(前だったらパピル様のこの表情と、密着してる状況だけで不安に押し潰されそうだったけど、不思議と落ち着いている・・・これがパピル様の言っていた成果なのかな?)

当初、パピル様が討伐の共同作業をすることが、僕の恐怖症を克服するための手段になると言っていた事に対して、懐疑的な思いを抱いていたのだが、実際に恐怖症が改善されつつある現状に、パピル様に対して尊敬の念を抱くのだった。
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