変幻自在のアルマ遣い

黒蓮

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留学編

作戦会議 1

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 威力偵察の結果、3つの目的の内2つの達成をもって、翌日には僕達偵察部隊は報告のために帰還することとなった。
正直なところ、一番重要なミュータント・1自身の実力の確認が出来なかった事に対して、このまま帰還してもいいのだろうかと思ったのだが、相手の戦略的な動き方を見るに、再度威力偵察に赴こうものなら、今回以上の圧倒的な戦力を向けてこられる可能性を憂慮した結果だった。
報告では9体の老成体が確認されている中で、今回僕の攻撃によって1体の討伐に成功したとはいっても、残りは8体もいる。しかも、あのミュータント・1の指揮・状況判断能力から、他にも戦力を伏せている可能性すらあると考えられる。そんな状況で、たった20人のクルセイダーで威力偵察をこれ以上行うのは無謀だという結論になったのだ。


 そして夕刻、ドーラル王国へと帰還すると、ジェシカ様は休む暇もなく今回の出来事の詳細を報告するため、書類の束を持ちながら慌ただしく会議室へと向かっていった。僕はといえば、昨日の出来事を考慮されてか、しっかりと自室で休むように指示されてしまった。
ちなみに、今回の偵察任務に就いていた全てのクルセイダーについては、見聞きした情報の箝口令が敷かれている。これは不要な不安が蔓延しないようにという理由と、話に尾ひれが付かないよう、後日に正式な情報を周知するという手筈になっているため、少しの間は誰にも話したり、逆に聞いたりしてもいけないという事だった。

(ふぅ・・・ミュータント・1の討伐・・・いったいどうなるんだろう?)

本体とは直接相対していないものの、間接的にその脅威を肌で実感したこともあり、僕は具体的にどういった討伐作戦が練られるのだろうと、少し不安な思いを抱いていた。




 side 報告会議

「バカなっ!?ミュータント・1にそれほどの知能と戦略があるというのか!?信じられん!!」

 ドーラル王国王城の会議室にて、今回の威力偵察における報告がなされていた。会議室には、今回の作戦の指揮を執る5人の王女殿下と、ドーラル王国女王、宰相、軍務大臣等の文官、そしてドーラル王国序列7位までのクルセイダーと、王女殿下の護衛として来ている各国のクルセイダー達が集まっていた。
報告は実際に威力偵察任務に赴き、部隊の指揮を執っていたジェシカ殿下よりなされた。その報告に先立って、全員の手元には今回の威力偵察の結果の詳細を記した文章も配布している。配られた詳細な報告書の内容を補足するようにジェシカ殿下は説明をしていたのだが、ミュータント・1の異常なまでの能力の高さに、軍務大臣が悲鳴じみた声を上げたのだ。

「静かにせよ、大臣。まだ報告の途中だ。疑問点やそれに伴う確認の質問は、一通り報告を聞いた後にせよ。それと、当然だが有益な質問をするように。感情に任せた言葉など時間の無駄だからな」
「・・・申し訳ございません、陛下・・・」

声を荒げた軍務大臣に対して女王陛下が苦言を呈すると、彼女は陛下に深々と頭を下げながら謝罪の言葉を口にした。
今この会議室では、大きく2つの雰囲気に分けられている。今回の討伐に主体的な役割を担う事となるクルセイダー達は、事の重大さを認識しつつ、具体的な対応策に頭を悩ませているのだが、片や文官達は、ジェシカ殿下よりもたらされる情報を信じられない、信じたくないというような、ただただ拒絶を示すような態度を見せているのだ。
どちらがこの会議の場にあって有益な考え方をしているといえば、完全に前者の方だろう。感情的な言葉で時間を浪費しようとするなど、愚の骨頂だ。それもあって女王陛下は、釘を刺すようにして文官達を黙らせたのだった。
その様子を見たジェシカ殿下は、内心陛下に対して感心するも、それを表情に出すことはなく、淡々と任務で遭遇した事実のみを伝えていった。


 30分ほどでジェシカ殿下からの報告が終わると、ドーラル王国序列1位のクルセイダーが、挙手をしながら確認するように質問した。

「つまり今回の威力偵察では、最も重要なミュータント・1単体の実力を確認することは叶わなかったというわけですね?」
「仰る通りです。我々としても想定外だったのは、ミュータント・1は操っている害獣を完全に自らの制御下に置いているということです。下手をすれば、視覚や聴覚などの感覚さえ同調させているのではないかと思うほどに、接敵後の対処や戦略の展開が素早かったと感じました」
「それはまた・・・とんでもない話ですね・・・」

ジェシカ殿下の推察に、序列1位の彼女は信じられないといった苦笑いを浮かべるが、最悪の事態を想定するならば、それすら考慮すべきかもしれない可能性に思い至り、頭を抱えた。

「こうなってくると、ミュータント・1を分断するという当初の戦略は、練り直しが必要そうですね・・・しかし、具体的にどのような作戦を立てれば良いのか・・・」

レイラ殿下の戦略の練り直しの言葉については、この場の誰もが同じように考えたのか、一様に頷いて見せたが、残念ながら打開策を提案できるものは居なかった。そんな状況の中、パピル殿下が真剣な眼差しをジェシカ様に向けながら質問を投げ掛けた。

「実際にミュータント・1の脅威を体感したジェシカ殿下の所感だと、操られている害獣を討伐か押さえ込むのに、どのくらいの戦力が必要だと感じたかな?」
「・・・先ず前提として、操られている害獣の数や種類が手元の報告書通りだったと仮定した場合、各国の全戦力の半数は動員する必要があると感じた」
「バカなっ!!」
「半数を割くなど、非現実的です!!」
「そうです!その間の国の防衛はどうするというのですか!?害獣の脅威に曝されているのは、夢幻大地よりもむしろ国内の方が大きいのですよ?」
「今戦力を半減しようものなら、甚大な被害が出てしまいます!!」

ジェシカ殿下の言葉に、とても許容できないと拒絶の意を示したのは文官達だった。

「でも、このまま夢幻大地の資源をミュータント・1に喰い尽くされても、恩恵を受けていた各国に甚大な被害がでるよ?」
「そ、それは・・・そうですが・・・」
「それに、ミュータント・1が夢幻大地にだけ留まってくれる保証なんてないでしょ?そこを喰い尽くしたら今度は別の場所・・・それこそ大陸中の資源を貪り尽くすかもしれないんだよ?しかも、従える害獣が増えていくかもしれないし」
「・・・・・・」

パピル殿下の指摘に軍務大臣は食い下がろうとするが、有効的な反論が思い浮かばなかったのか、言葉半ばで口を閉ざしてしまい、更に考えられる最悪の事態を想定した言葉に、力無く項垂れるだけだった。
問題は山積しており、ミュータント・1の実力の全容が測れていないということもさることながら、戦力の分散の問題、その間の国防問題等々、考えるべき事が多岐に渡りすぎて、討伐作戦の立案が困難な状況になってしまっている。

そんな閉塞感漂う会議室で、聞き役に徹していた女王陛下が口を開いた。

「どうやら今回の標的、クルセイダーだけの力では限界があるようだ。よって、我が国の秘匿技術を用い、戦力の足しとする」
「へ、陛下!?それは・・・」

女王陛下の言葉に、焦った表情を浮かべてその発言に動揺しているのは軍務大臣だった。

「ふん!秘匿技術とはいえ、効率が悪すぎて未だ実用化には程遠い。ただ、今回の一件を解決する助力程度にはなるだろうよ」
「で、ですが・・・」

女王陛下の言葉に、なおも大臣は食い下がろうとしたが、その気勢を制するようにジェシカ殿下が口を開いた。

「ドーラル王国女王陛下、その技術とは?」
「アルマ結晶を応用した武器だ。威力は申し分ないが、そのエネルギーを溜めるのに、並のクルセイダー5人がかりで、2日かけてようやく充填出来るようなものでな。そんなものを使って害獣の討伐を行うよりも、5人のクルセイダーが普通に討伐した方が効率的なのだが、最大の利点は、クルセイダーではない一般の者でも扱える事だ」
「そのような武器が!」

女王陛下の説明に驚きの声を上げたのは、レイラ殿下だった。その反応に、女王陛下は苦笑いを浮かべる。

「ただし先に述べたように、一度使えば5人がかりで再充填に2日かかる。とても実戦向きではないが、罠を張り、そこにミュータント・1をおびき出せればあるいは・・・」

女王陛下の言葉に、レイラ殿下は何事か考え込むような仕草をすると、意を決したように口を開いた。

「でしたら、我が国からも武器の供与を致しましょう」
「ほぅ?それはどの様な?」

レイラ殿下の言葉に、女王陛下は愉快げな表情を浮かべた。

「正確には武器というより、アルマ結晶の使い方ですが。限界までアルマエナジーを込めた結晶が爆発する性質を利用した、地雷のようなものです」
「それは、起爆する際にアルマエナジーを込める人物が必要だろう?まさか、生贄にサポーターを使い捨てるとでも言うのか?」

怪訝な表情を浮かべる女王陛下に、レイラ殿下は頭を振った。

「そのような、非人道的な事はございませんわ。我が国では特殊な装置を用い、アルマ結晶を遠隔から起爆するに術を確立しております」
「なるほど!そのような道具が!」
「ただし、爆発の威力は設置場所の上空に抜けるように発動するため、殺傷範囲が狭いのが難点ですわ」
「となれば数を用意するしかないだろうが、その装置を必要な数準備するには時間が足りないか・・・」
「では、我がダイス王国の技術も使って頂こう!」

ジェシカ殿下も話に加わり、ミュータント・1討伐に関する様々な作戦が立てられていった。

そうして議論も程よく煮詰まっていた来た頃、ジェシカ殿下がもう一つの懸念事項を口にした。

「ところで、今回威力偵察に加わってもらったジール殿のことなのですが・・・」

ジェシカ殿下がそう前置きすると、会議室内は静まり返り、彼女が何を話すか一斉に注目を向けたのだった。
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