ミックスド★バス~注文の多いラブホテル~

taki

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金曜 揺らしてください

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金曜。


ピピピピ、ピピピピ
ピピピピ、ピピピピ


この数日で聞きなれてしまったホテル・ホットスプリングの目覚まし時計の音。体が重く目を開けるのも億劫だ。しかし今日も仕事。しかも昨日はあれからなだれ込むようにベッドにいき2回目を……なんてことはできず二人で心地よいだるさに眠ってしまった。さすがにシャワーでも浴びないと会社に行けない。


「ん、みずかわくん」

「おはようございます、、ねむい」

「うん私も……いたっ」
起き上がろうとした温子さんが体の不調を訴える。

「大丈夫ですか?……いてっ」

僕も起き上がったら全身、特に太ももやふくらはぎが痛い。この痛みは筋肉痛だな。

「筋肉痛っぽいかも」

「温子さんもですか?僕もです。……すみませんでした」

原因は明らかで昨夜の体勢を思い出す。

「……あやまらないで、恥ずかしい」


温子さんも思い出したのか顔を赤らめる。可愛い。しかし体は痛くとも早くシャワーを浴びて準備をしなければ。二人で痛い痛いと言いながら立ち上がる。

1人しか入れないシャワールームに温子さんが先に入る。入って間もなくシャワールームから明るい声が漏れてきた。

「温泉出てるーー!!」

そういえば、昨夜は温泉が出るようにと体操着に着替えたんだった。すっかり忘れていた。

ドアの近くにいき「温泉出たんですね」と声を掛ける。するとドア越しに温泉の感想がマシンガンのように止めどなく言っているのが分かる。しかし温子さんすみません、シャワーの音でいまいち何を言っているか聞き取れません……。

適当に相槌を返して、しばらくすると「そろそろ出るから」と声が掛かる。

そして自分もシャワーを浴びるため準備をして温子さんと交代した。




シャワーを出すと無色透明ながらほんのり温泉特有の香りがするお湯が勢いよく出てくる。
ほぉぉ、リラックスするなぁ。しかも、先程温子さんも言っていたが筋肉痛で痛かったところがどんどん楽になっていく。
体を洗い終わってシャワールームを出るときには痛みは全くなく疲れもない。あまりの即効性に驚嘆だ。素晴らしい効能を堪能した。

そして体もスッキリ覚めて、思いの外早めにラブホを出発して会社へと向かえた。




◆◆◆◆




さて、平日最後の仕事はあいにく残業になってしまった。本日もホテル・ホットスプリングに行く予定だったが僕だけまだ職場。時計を見ると夜の20時を少し過ぎたところ。しかもまだ帰れそうにない。なんでこんな日に限ってトラブルが。

温子さんは早めに仕事を切り上げて、一度家に帰ってからホテルに行くと言っていた。残業していることをメッセージで送ると「じゃあ先に行っているね」なんていう返信がきた。

「もうしばらく時間かかりそうです。すみませんがどこかの店で待っていてもらえますか」と返しても、
「実はもう待てなくてホテルのすぐ近くまで来ちゃった。温泉が私を呼んでるよん。先に部屋入ってるね」なんて。


いやいや、温泉が私を呼んでるじゃなくて!


ラブホで後から部屋に入って合流なんて。しかもあの摩訶不思議で無人受付のラブホでそんなことできないだろう。部屋は料金を翌朝払ったら開くシステムなのだから。

慌てて「後から人が入るのはできないと思うから待っていてください!」とメッセージを送る。電話したいがまだ職場にいるから電話は断念だ。日中に比べれば社内に残っている人は少ないが誰がどこで聞いているかわからない。部屋に入る前にメッセージに気づいて!



すぐに返信がきてほしかったが、メッセージが返ってきたのは約20分後。嫌な予感がする。こわごわとメッセージを開くと……


「ごめん!部屋に入っちゃってからメッセージ気づいた……。受付の内線かけてみてるんだけど繋がらなくて」


やっぱりか!

どう返事を打つか……

まぁお金を払えばドアは開くだろうしと文字を打ち始めたところに、机の電話がプルルルル!と鳴り部屋に響く。電話の表示は残業の原因である業者からだ。すばやく電話を取る。

「もしもし水川です。ええ、はい、それで……」




◆◆◆◆




仕事のトラブルは解決した。会社を出れたのは22時半。とても疲れた。


もう一方の"トラブル"はというと、温子さんからいくつかのメッセージが送られていた。

要旨はこうだ。
「後から入室できるように色々試したんだけど無理そう。今日の部屋の"注文"は私だけでもできそうだし私一人で泊まるね。仕事本当にお疲れ様!」


~~~~~~っ!


メッセージをすべて読み終わると、ふつふつとやりきれない気持ちが爆発し、すぐさま電話を掛けたのであった。
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