あの日のこと

陽紫葵

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あの日のこと

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ある日の朝、
「今日、病院だろ?ついて行けなくてごめんな」
あの後、半年に1度検査を受けている。
異常はなかったものの、5日も意識がない日が続いたのだから、後々、症状として現れるかもしれないと、経過観察のための検査だ。
いつもは、昇矢くんが付き添ってくれてた。
でも、今日は抜けられない仕事があった。
「いいよ、麻耶ちゃんがついてってくれるから」
麻耶ちゃんは、私の身の回りの事もしてくれている。
検査は異常はなく、別の科も予約してあって、終わってから行った。
「今日は、麻耶ちゃんが一緒でよかった」
「旦那さんに先に報告しなくてよかったの?」
「いいの」
その日は、昇矢くんは早く帰ってきた。
「昇矢くん」
私は、昇矢くんに抱きつき、
「どうした?」
「3か月だって」
「え?」
上目遣いで見ると、
「里桜、赤ちゃん?」
「うん」
「ありがとう」
「え、何で、ありがとう?」
「だって、嬉しいじゃん」
昇矢くんは、私のお腹に手を当て、
「この中にいるんだよなぁ」
「うん」
「声、聞こえてるのかなぁ?」
「まだじゃない?」
「今日、病院行ってきたの?」
「うん。内科と同じ病院で」
「気付かなくてごめん。言ってくれたらよかったのに」
「昇矢くん、忙しそうだったし。それに、恥ずかしかったし。産婦人科行くのとか。麻耶ちゃんのお姉さんが予約してくれたし」
「あぁ、事務してるんだっけ?」
「うん」
「でもさ、これからは、俺も行くから」
「大丈夫?仕事」
「あぁ、今の仕事終わったら、一段落つくし。来月には時間作れるようになる」
「そっか」
少しほっとした。
「これからの事も考えないとな。車移動とか、キツくなるだろ?」
「うん、まぁ。今の予約分は、2件あって、その後はセーブしないとね」
ホームページで、応募の一時休止の知らせをした。
詳細は後程って事にして。
2件の方に対しては、当日の打ち合わせで報告した。
両方とも、昇矢くんがついて行ってくれた。
昇矢くんが運転し、麻耶ちゃんが側でついていてくれた。
昇矢くんの車は大きくて、8人乗れる。
私と麻耶ちゃんは2列目に、澄美ちゃんは3列目に乗っていた。
その後、妊娠の報告もし、今後は、オンラインでの歌唱参加とゆう形での応募に変えた。
それでも、応募してくれる人はいた。
もちろん、オンラインでの打ち合わせは変わりなくやっていた。
出産予定日の一か月前までやっていた。
配信はギリギリまでしていた。
それでも、
「なんかさぁ、楽しみなのに、なんか、暇だなぁ」
「お腹の子のために歌ってたらいいじゃん」
「胎教?」
「そうだな」
産まれる子は、女の子だってわかっていた。
「女の子ってさ、父親に似る方がいいってゆうじゃない?」
「そうだな」
「きっと、この子も、昇矢くんに似て可愛いよ」
「いや、どうかな?」
「ううん、きっとそう」
昇矢くんは、照れながらも嬉しそうだ。
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