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①
赤い糸がほどけた
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土曜日、香都巴と不動産回りをし、2人で住む部屋を探した。ある程度、条件を決めていたので、3か所内覧してすぐに決め、2週間後に引っ越すことになった。
香都巴は、俺の職場に昼食を届けてくれている仕出し屋さんで働くことになった。工場内の仕事で、空きがあると聞いたので、紹介してもらったのだ。
引っ越す前から一緒に通っている。
引っ越して1週間が経った週末、香都巴は午前だけ仕事で、俺は一人部屋にいた。
母さんが届け物があると部屋に来た。
「晋がね、ここで一緒に住みたいって言ってきたんだけどね、断ったの」
「何で?」
「だって、嫌でしょ?お嫁さんと一緒なんて」
「万吏江と仲良くないの?」
「良くも悪くもない。互いにさ、気疲れしたくないわよ。晋はね、兄貴が住まないなら、俺が住んだ方がいいだろって」
「晋、最近、近くに異動になったんだろ?」
「それもあるんだろうけど。通勤費も節約出来る、なんてね。しっかりしてて、いい子だとは思うけど、どうもね、年上だからかしら、晋が尻に敷かれてるっぽいし」
「年上って、1つしか違わないじゃん」
「でもね・・・。晋がね、兄貴とだったらいいの?ってさ。確かに、って思っちゃったわよ」
「香都巴は、母さんも赤ちゃんの時から知ってて、自分の子みたいだもんな」
「そうね。晋だからとか、乎汰だからとかじゃない。お嫁さんが香都巴ちゃんなら、気遣わないもんね」
「俺たちと住みたいの?」
「まさか、そんなこと考えてないわよ」
正直、本心はわからない。
でも、今は、ここに引っ越したばかりだし、一緒に住む気はなれない。
「結婚式はどうするの?」
「彰吾さん、9月に帰って来るって行ってただろ?」
「そうね、異動だってね」
「それからでもいいかなって」
香都巴は、俺の職場に昼食を届けてくれている仕出し屋さんで働くことになった。工場内の仕事で、空きがあると聞いたので、紹介してもらったのだ。
引っ越す前から一緒に通っている。
引っ越して1週間が経った週末、香都巴は午前だけ仕事で、俺は一人部屋にいた。
母さんが届け物があると部屋に来た。
「晋がね、ここで一緒に住みたいって言ってきたんだけどね、断ったの」
「何で?」
「だって、嫌でしょ?お嫁さんと一緒なんて」
「万吏江と仲良くないの?」
「良くも悪くもない。互いにさ、気疲れしたくないわよ。晋はね、兄貴が住まないなら、俺が住んだ方がいいだろって」
「晋、最近、近くに異動になったんだろ?」
「それもあるんだろうけど。通勤費も節約出来る、なんてね。しっかりしてて、いい子だとは思うけど、どうもね、年上だからかしら、晋が尻に敷かれてるっぽいし」
「年上って、1つしか違わないじゃん」
「でもね・・・。晋がね、兄貴とだったらいいの?ってさ。確かに、って思っちゃったわよ」
「香都巴は、母さんも赤ちゃんの時から知ってて、自分の子みたいだもんな」
「そうね。晋だからとか、乎汰だからとかじゃない。お嫁さんが香都巴ちゃんなら、気遣わないもんね」
「俺たちと住みたいの?」
「まさか、そんなこと考えてないわよ」
正直、本心はわからない。
でも、今は、ここに引っ越したばかりだし、一緒に住む気はなれない。
「結婚式はどうするの?」
「彰吾さん、9月に帰って来るって行ってただろ?」
「そうね、異動だってね」
「それからでもいいかなって」
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