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白鬼
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刀鍛冶の国人は、自宅の戸を開けました。からりと乾いた音が、薄暗く陰る家の中に響きます。
国人の足取りは軽快そのものでした。無造作に後頭部で束ねられた黒髪が、歩く度に楽しげに揺れ動いています。
そんな国人を迎え入れたのは、彼の息子でした。ほのかな灯りの下で、息子はひとりきりで食事をしているところでした。
いつになく喜色満面な国人を、息子は首を傾げて見ていました。やがて、その横にひとりの少女がいることに気が付きました。
彼女は真っ白でした。肩につかないぐらいの長さに伸ばされている髪も、着ている着物も、額から生えている角も、白一色です。ただ、目だけが紫色に染まっています。
顔立ちは整っていますが、不機嫌なのでしょう、眉間に皺が入り、口角は下がっていました。
両手首は縄で縛られています。その縄は、国人にしっかりと握られていました。
「誰だ?」
息子の視線に、国人は嬉しそうに胸を反らしました。
「白鬼だ。この数年間、こいつを探すのになんと苦労したことか! 俺はな、こいつを研究して、刀作りに活かそうと思っている。今度こそ、最高の一振りが作れそうな気がしてならんのだよ!」
目をきらきらさせ、国人は愛しそうに白鬼を眺めます。白鬼はぷいと視線をそむけました。
そんな白鬼の態度を意に介さず、国人は息子に向き直り、こう告げました。
「我が息子よ。白鬼の面倒、お前が見ろ」
「……は?」
息子は目を丸くして、国人を見ました。
国人の足取りは軽快そのものでした。無造作に後頭部で束ねられた黒髪が、歩く度に楽しげに揺れ動いています。
そんな国人を迎え入れたのは、彼の息子でした。ほのかな灯りの下で、息子はひとりきりで食事をしているところでした。
いつになく喜色満面な国人を、息子は首を傾げて見ていました。やがて、その横にひとりの少女がいることに気が付きました。
彼女は真っ白でした。肩につかないぐらいの長さに伸ばされている髪も、着ている着物も、額から生えている角も、白一色です。ただ、目だけが紫色に染まっています。
顔立ちは整っていますが、不機嫌なのでしょう、眉間に皺が入り、口角は下がっていました。
両手首は縄で縛られています。その縄は、国人にしっかりと握られていました。
「誰だ?」
息子の視線に、国人は嬉しそうに胸を反らしました。
「白鬼だ。この数年間、こいつを探すのになんと苦労したことか! 俺はな、こいつを研究して、刀作りに活かそうと思っている。今度こそ、最高の一振りが作れそうな気がしてならんのだよ!」
目をきらきらさせ、国人は愛しそうに白鬼を眺めます。白鬼はぷいと視線をそむけました。
そんな白鬼の態度を意に介さず、国人は息子に向き直り、こう告げました。
「我が息子よ。白鬼の面倒、お前が見ろ」
「……は?」
息子は目を丸くして、国人を見ました。
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