白鬼のミタマ

月並

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火種 5

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 サラは近くの藪から、ミタマと武士が戦っているのを見ていました。

 出ていくつもりはありませんでした。自分が行けば、武士に捕まるだろうことは想像に難くなかったのです。
 それに、ミタマがこのまま武士を殺せば、サラの望む通り、ミタマの魂に色がつきます。他の命を奪う行為をすれば、その魂には黒い色がつくのです。
 真っ黒とまではいきませんが、灰色ぐらいにはなるだろう。そう思いながら、サラはじっと様子を見ていました。

 武士がミタマに斬りかかります。ミタマはそれを刀で受け止めます。その時の音がくぐもって聞こえ、サラはドキリとしました。
 2人は距離を取ります。

「なんでここを襲うんだ!」
「この集落に、菊池武運が逃げ込んだとの噂が入った」

 武士の言葉で、サラは今の惨状に納得がいきました。同時に、目の前の武士に嫌悪感が募ります。

 子どもの泣き声が聞こえました。ミタマが声の方を見たその隙をついて、武士が飛びかかります。
 名前を叫びそうになった自分の口を、サラは手で抑えました。
 ミタマは難なく彼の攻撃をかわし、どこかへ行ってしまいました。安堵の息が、サラの口から漏れます。

 武士はミタマを追いかけようとしましたが、そこに別の武士が現れ、足を止めました。

「引き上げの命令が出た。ここに菊池武運はいないようだ」
「ふん、無駄足か」

 武士たちは刀を仕舞うと、さっさと集落を後にしてしまいました。火の爆ぜる音だけが残ります。
 ミタマを探そうか迷っていると、本人が戻ってきました。彼はそのまま、まだ燃えている家の中に飛び込んでしまいました。

「ミタマ!」

 今度は声を止めることができませんでした。藪から飛び出し、ミタマの入って行った火の近くまで駆け寄ります。
 その熱さに、思わず後ずさりしました。つう、と汗が額から流れます。鼓動が激しくなりました。

 炎に巻かれた木の壁が、勢いよく崩れました。そこから、ミタマが姿を現します。
 左腕に、ミタマの半分ぐらいの大きさの子どもを抱え、右手で折れた刀を握っています。
 幸い火は移っていませんが、顔や腕、足の皮膚が焼けただれていました。

「ミタマ!」

 駆け寄ったサラに、ミタマは微笑みかけます。

「この子を親元に返してくる。危ないから、サラは向こうで待っててくれ」

 ミタマが右手で指した先は、少し前までサラが隠れていた藪でした。
 サラの返事を待たず、ミタマは歩き出します。サラは構わず、その後についていきました。
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