白鬼のミタマ

月並

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アンハッピーバースディ 2

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 どのくらいの時間が経ったのか、ミタマには分かりません。ひどく長い時間、のたうちまわっていたように感じました。
 国人は愉快そうに、荒く息を吐くミタマの姿を眺めていました。

「曰く、『白鬼の肉を食えば不老不死となり、その血を飲めば白鬼と化す』。我が息子よ、私は、お前が飲んだその味噌汁に、白鬼の血を混ぜた」

 その言葉を聞くや否や、ミタマは慌てて外に飛び出しました。
 井戸に、自分の顔を映してみます。

 煤のように黒かった髪は、真っ白に染まっていました。目も紫色に変化しています。
 白い角のようなものが、前髪から顔をのぞかせていました。口には、八重歯が牙のように伸びています。

 その姿を見たミタマの頭に浮かんだのは、サラの姿でした。
 ミタマの今の姿は、顔立ちや髪型こそ違えど、彼女にそっくりでした。

 国人が背後に立ったのを感じとり、ミタマは勢いよく振り向きました。

「親父! サラはどこだ!?」

 国人は一振りの刀を、胸の高さに掲げました。

 つるりと黒く輝く鞘に、紫色の紐が括り付けてあります。
 国人が鯉口を切ると、黒い鞘の中から刀身が顔を覗かせました。その刀身は真っ白に、美しく輝いていました。

 まるでサラのように。

「白鬼はこれだ」

 景色がぐらりと歪みます。

 そんなミタマの様子を知ってか知らずか、国人は自らが打った刀を、うっとりと眺めます。

「前の刀は、血だけをいつもの材料に加えてみたんだ。だがそれは失敗した。だから白鬼の全てを使って、この刀を作ったのだ。見ろ、この刀身の白さ! このような美しい一振りは、もう誰にも作れまい。我ながら惚れ惚れする出来映えだ! そしてこれは、お前が持つことで完成する。さあ」

 国人が差し出す刀を、ミタマは震える手で受け取りました。唇を引き結んで、じっとそれを見下ろします。

「親父、お前は、サラを殺したのか」
「もともとそのつもりで捕まえてきたのだ」
「そうか。じゃあもう、俺の名前は」

 少年は刀をしっかり持ち直すと、国人の心臓めがけて、ずぶりと突き立てました。
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