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▽聖女として召喚されました、男なのに
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突然白い強い光に包まれ、思わず目を閉じた。次に目を開けると、俺は全く知らない場所にいた。
さっきまでいたのは、病院の玄関前だった。漫画家の三日尻月が亡くなったという話を聞いて、居ても立っても居られず病院の前まで来てしまったのだ。
会えるわけがないことは分かっていた。俺は彼女の家族でもなんでもない、ただのファンだから。
彼女が眠っている病院を、5分ぐらいは見上げていたと思う。帰ろうと踵を返したところで、白い強い光に包まれたのだ。
そこまで思い出した後、慌てて左腰を確認すると、ちゃんと刀が差されていた。安堵の息が漏れる。
と同時に、おかしなことに気付いた。胸がでかくなってる。乳房が膨らんでいると言った方が正しい。バレーボールぐらいありそう。俺は男なのに。
「んえっ!? あ゛っ!? なんじゃこりゃ!?!?」
慌てた声をあげていると、足音が近づいてきた。
「ようこそ、フヴェルゲルミル王国へ。歓迎する、聖女よ」
そう言って俺に手を伸ばしてきたのは、金髪碧眼の男。西洋人形を連想させるような出で立ちをしていた。なんというか、漫画とかでよく見るファンタジー世界の王子みたいな感じ。
聞きなれない国の名前と今の自分の状況に、俺の頭は混乱していた。
「いやあのすみません、歓迎とかちょっと置いといて鏡、鏡ください」
俺の言葉に、王子風の男は傍にいた男に「鏡を持って来い」と命令した。やがて運ばれてきた大きな鏡に、俺は自分の姿を映した。
女になっていた。白い髪や紫色のつり目、腰の刀、白いパーカーに灰色のズボンという出で立ちは変わっていないが、全体的に丸みを帯びていた。あと髪が伸びている。まつ毛も長くなっている気がする。股間を触るとあるはずのものがなくなっていた。
「は? どういうこと? なんで俺ァ女になってんだ?」
「聖女、大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃないです」
「混乱するのも無理はない。強制的に呼び出したのだからな。そこについては非礼を述べよう。しかし今、我が国は危険なのだ。異世界からの力を頼りにするほかなかったのだ」
王子風の男は片膝をついて頭を下げた。『国が危険』という言葉が気になって、俺が女になっていることは横に置くことにした。
「事情を聞かせてください。危険っていうのはどういうことですか?」
そう言うと、王子風の男は顔を上げた。
「僕はこの国の王子、アイテール・イェーゲルフェルトだ。この国の危機というのは、魔王復活のことだ」
「魔王?」
「ああ。この世界では100年に一度、魔王が復活する。かつては世界を滅ぼしかけたほどの、凶悪な存在だ。それを再び封印できるのは、異世界から呼び寄せた聖女だけ。前回の魔王封印からもうすぐ100年が経つ。ゆえに聖女であるお前を召喚したというわけだ。魔王の復活にはあと3年ほど猶予がある。その間に、聖女には魔法学校に通ってもらい、魔法を身に着けてほしい」
アイテール・イェーゲルフェルトの話に頷きながら、俺はどこかで聞いた話だなと思っていた。そういえば、『アイテール・イェーゲルフェルト』や『フヴェルゲルミル王国』という名前も聞いたことがある気がするし、目の前の男の顔は見覚えがある気がする。
頭を捻らせていると、執事のような男がアイテール・イェーゲルフェルトに近づいた。
「王子、ディアーナ様が来られていますが……」
「今日の僕は忙しい。帰ってもらえ」
アイテール・イェーゲルフェルトはにべもなく、心底嫌そうにそう言った。しかしその聞こえてきた名前を聞いて、俺は思い出した。
聞き覚えや見覚えがあると思ったら、むらくもかすみという漫画家が描いた漫画『青天の愛を受けとめて』に出てくる登場人物の名前や舞台の国名、話の内容と一緒なのだ。
要は俺は、『青天の愛を受けとめて』の世界に召喚されたのだろう。聖女として。
しかし作中では、召喚される聖女……つまり主人公は、ちゃんと女だった。男が女体化したという設定はなかった。あと見た目も違う。俺みたいにツンケンしてない。
そもそも俺が聖女として召喚されること自体おかしい。俺は『聖』なんてものが付く存在じゃない。何か色々おかしい。致命的におかしい。
「衣食住は王族並の待遇を約束しよう。要望があればなんでも聞く」
混乱している俺をよそに、執事を下がらせたアイテール・イェーゲルフェルトがそう言った。
「あ、いや俺は別に、屋根さえあればどこでも」
反射的に答えたその言葉に、周囲が「王族並の待遇をしてもらえるというのに、なんと控えめな要求か」「さすが聖女様だ、欲がない」と騒ぎ始めた。本心なので、勝手に持ち上げられても困る。
アイテール・イェーゲルフェルトは俺をまじまじと見つめていた。その目はどこか冷たかった。
「まあ、暮らしていれば不便なところが出てくるだろう。その時は侍女に言うがいい。ところで聖女、お前の名前は何という?」
言葉に詰まった。
俺がどうして聖女として主人公の代わりに召喚されてしまったのかは分からないが、これ以上原作と大幅に設定をずらすのはまずいかもしれない。下手をすれば魔王の封印に失敗し、世界を滅ぼしてしまうかもしれない。
「……南大林玉依です」
俺はアイテール・イェーゲルフェルトの目をじっと見てから、主人公の名前を教えた。
さっきまでいたのは、病院の玄関前だった。漫画家の三日尻月が亡くなったという話を聞いて、居ても立っても居られず病院の前まで来てしまったのだ。
会えるわけがないことは分かっていた。俺は彼女の家族でもなんでもない、ただのファンだから。
彼女が眠っている病院を、5分ぐらいは見上げていたと思う。帰ろうと踵を返したところで、白い強い光に包まれたのだ。
そこまで思い出した後、慌てて左腰を確認すると、ちゃんと刀が差されていた。安堵の息が漏れる。
と同時に、おかしなことに気付いた。胸がでかくなってる。乳房が膨らんでいると言った方が正しい。バレーボールぐらいありそう。俺は男なのに。
「んえっ!? あ゛っ!? なんじゃこりゃ!?!?」
慌てた声をあげていると、足音が近づいてきた。
「ようこそ、フヴェルゲルミル王国へ。歓迎する、聖女よ」
そう言って俺に手を伸ばしてきたのは、金髪碧眼の男。西洋人形を連想させるような出で立ちをしていた。なんというか、漫画とかでよく見るファンタジー世界の王子みたいな感じ。
聞きなれない国の名前と今の自分の状況に、俺の頭は混乱していた。
「いやあのすみません、歓迎とかちょっと置いといて鏡、鏡ください」
俺の言葉に、王子風の男は傍にいた男に「鏡を持って来い」と命令した。やがて運ばれてきた大きな鏡に、俺は自分の姿を映した。
女になっていた。白い髪や紫色のつり目、腰の刀、白いパーカーに灰色のズボンという出で立ちは変わっていないが、全体的に丸みを帯びていた。あと髪が伸びている。まつ毛も長くなっている気がする。股間を触るとあるはずのものがなくなっていた。
「は? どういうこと? なんで俺ァ女になってんだ?」
「聖女、大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃないです」
「混乱するのも無理はない。強制的に呼び出したのだからな。そこについては非礼を述べよう。しかし今、我が国は危険なのだ。異世界からの力を頼りにするほかなかったのだ」
王子風の男は片膝をついて頭を下げた。『国が危険』という言葉が気になって、俺が女になっていることは横に置くことにした。
「事情を聞かせてください。危険っていうのはどういうことですか?」
そう言うと、王子風の男は顔を上げた。
「僕はこの国の王子、アイテール・イェーゲルフェルトだ。この国の危機というのは、魔王復活のことだ」
「魔王?」
「ああ。この世界では100年に一度、魔王が復活する。かつては世界を滅ぼしかけたほどの、凶悪な存在だ。それを再び封印できるのは、異世界から呼び寄せた聖女だけ。前回の魔王封印からもうすぐ100年が経つ。ゆえに聖女であるお前を召喚したというわけだ。魔王の復活にはあと3年ほど猶予がある。その間に、聖女には魔法学校に通ってもらい、魔法を身に着けてほしい」
アイテール・イェーゲルフェルトの話に頷きながら、俺はどこかで聞いた話だなと思っていた。そういえば、『アイテール・イェーゲルフェルト』や『フヴェルゲルミル王国』という名前も聞いたことがある気がするし、目の前の男の顔は見覚えがある気がする。
頭を捻らせていると、執事のような男がアイテール・イェーゲルフェルトに近づいた。
「王子、ディアーナ様が来られていますが……」
「今日の僕は忙しい。帰ってもらえ」
アイテール・イェーゲルフェルトはにべもなく、心底嫌そうにそう言った。しかしその聞こえてきた名前を聞いて、俺は思い出した。
聞き覚えや見覚えがあると思ったら、むらくもかすみという漫画家が描いた漫画『青天の愛を受けとめて』に出てくる登場人物の名前や舞台の国名、話の内容と一緒なのだ。
要は俺は、『青天の愛を受けとめて』の世界に召喚されたのだろう。聖女として。
しかし作中では、召喚される聖女……つまり主人公は、ちゃんと女だった。男が女体化したという設定はなかった。あと見た目も違う。俺みたいにツンケンしてない。
そもそも俺が聖女として召喚されること自体おかしい。俺は『聖』なんてものが付く存在じゃない。何か色々おかしい。致命的におかしい。
「衣食住は王族並の待遇を約束しよう。要望があればなんでも聞く」
混乱している俺をよそに、執事を下がらせたアイテール・イェーゲルフェルトがそう言った。
「あ、いや俺は別に、屋根さえあればどこでも」
反射的に答えたその言葉に、周囲が「王族並の待遇をしてもらえるというのに、なんと控えめな要求か」「さすが聖女様だ、欲がない」と騒ぎ始めた。本心なので、勝手に持ち上げられても困る。
アイテール・イェーゲルフェルトは俺をまじまじと見つめていた。その目はどこか冷たかった。
「まあ、暮らしていれば不便なところが出てくるだろう。その時は侍女に言うがいい。ところで聖女、お前の名前は何という?」
言葉に詰まった。
俺がどうして聖女として主人公の代わりに召喚されてしまったのかは分からないが、これ以上原作と大幅に設定をずらすのはまずいかもしれない。下手をすれば魔王の封印に失敗し、世界を滅ぼしてしまうかもしれない。
「……南大林玉依です」
俺はアイテール・イェーゲルフェルトの目をじっと見てから、主人公の名前を教えた。
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