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一、しろちゃん
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みどり色の草木をかき分けてかき分けていくと、大きくひらけたところに出る。
そこにあるのは、ぼろぼろの神社。ずいぶん前から誰もこないせいで、こうなっちゃったらしい。
神社につづく石の階段も、木の葉と土にうもれてしまっている。
そのよこに、木でできた小さな家がある。私としろちゃんの家だ。
しろちゃんはその家のまえで、丸太を半分に切っていた。白い刀がきらきらと光って、丸太をさくさくっと切ってしまう。
「しろちゃーん、しろちゃーん」
私がかけよると、しろちゃんは手を止めた。
「見てこれ、このお花、きれい!」
私はしろちゃんに、山の中で見つけた青むらさき色の花を見せた。
「それはヤマトリカブトだな」
「やまとりかぶと?」
「ああ。花の形が舞楽……舞いを踊るときにかぶる冠に似てるから、『トリカブト』って名前がついてんだ。毒あるから食べるなよ」
私はよく、山の中で見つけたきれいなものやめずらしいものを、しろちゃんに見せていた。そしてしろちゃんは、その名前を教えてくれた。
「しろちゃんは物知りだね。なんでも知ってる」
「その『しろちゃん』って言うの、やめろ」
「だってしろちゃん、髪も着物も刀も真っ白なんだもん。だからしろちゃん」
「なんの捻りもないな」
「ヤマトリカブトだって見たまんまなんでしょ!」
私がぷうとむくれると、しろちゃんはあきらめたように「はいはい」と言う。
「これ、しろちゃんにあげるね」
私はしろちゃんにヤマトリカブトを手わたした。
しろちゃんは、私の手からそれを受け取った。青むらさき色のそれをじっと見つめる。
その目は、やさしいむらさき色をしていた。
▽
ある日の昼さがりのこと。しろちゃんは「飯を穫りに行ってくる」と言って、みどり色の中にまぎれていった。
私はしろちゃんに日ごろから言いつけられているとおり、家の中でじっとしていた。
こういうときは、家にある本を読む。
紙が黄色くなっていて、へたにさわると破れてしまうので、めくるときには細心の注意が必要だ。
山に生えている植物について書かれてある、生活に必要な本から、女の人になりきって日記を書いている男の人の本まで、たくさんの本が家にはあった。
本を読むのは楽しい。知らなかったことを知ることも、むずかしい言葉をしろちゃんにたずねることも、そしてなにより、文字を追うのはとてもとても楽しいことだった。
どんどんものしりになっていくようで、どんどんしろちゃんに近づいているようで、うれしい。
その日読んでいた本は、おとぎ話といわれるものだった。モモから生まれた男の子が、イヌとサルとキジを連れて、町の人の宝をうばった鬼を退治しにいく話だ。
私は首をひねる。鬼はよく、悪者としてえがかれている。このお話のように。
どうしてだろう。しろちゃんだって鬼だ。白鬼っていう鬼だってきいた
けどすごくやさしい。お話の中の鬼みたいに、人の宝物をうばったり、お姫さまをさらったりなんかしない。
本1冊を読むだけで、どんどん分からないことが増える。しろちゃんみたいにものしりになるには、まだまだたくさん本を読まないといけないのだろう。
そこにあるのは、ぼろぼろの神社。ずいぶん前から誰もこないせいで、こうなっちゃったらしい。
神社につづく石の階段も、木の葉と土にうもれてしまっている。
そのよこに、木でできた小さな家がある。私としろちゃんの家だ。
しろちゃんはその家のまえで、丸太を半分に切っていた。白い刀がきらきらと光って、丸太をさくさくっと切ってしまう。
「しろちゃーん、しろちゃーん」
私がかけよると、しろちゃんは手を止めた。
「見てこれ、このお花、きれい!」
私はしろちゃんに、山の中で見つけた青むらさき色の花を見せた。
「それはヤマトリカブトだな」
「やまとりかぶと?」
「ああ。花の形が舞楽……舞いを踊るときにかぶる冠に似てるから、『トリカブト』って名前がついてんだ。毒あるから食べるなよ」
私はよく、山の中で見つけたきれいなものやめずらしいものを、しろちゃんに見せていた。そしてしろちゃんは、その名前を教えてくれた。
「しろちゃんは物知りだね。なんでも知ってる」
「その『しろちゃん』って言うの、やめろ」
「だってしろちゃん、髪も着物も刀も真っ白なんだもん。だからしろちゃん」
「なんの捻りもないな」
「ヤマトリカブトだって見たまんまなんでしょ!」
私がぷうとむくれると、しろちゃんはあきらめたように「はいはい」と言う。
「これ、しろちゃんにあげるね」
私はしろちゃんにヤマトリカブトを手わたした。
しろちゃんは、私の手からそれを受け取った。青むらさき色のそれをじっと見つめる。
その目は、やさしいむらさき色をしていた。
▽
ある日の昼さがりのこと。しろちゃんは「飯を穫りに行ってくる」と言って、みどり色の中にまぎれていった。
私はしろちゃんに日ごろから言いつけられているとおり、家の中でじっとしていた。
こういうときは、家にある本を読む。
紙が黄色くなっていて、へたにさわると破れてしまうので、めくるときには細心の注意が必要だ。
山に生えている植物について書かれてある、生活に必要な本から、女の人になりきって日記を書いている男の人の本まで、たくさんの本が家にはあった。
本を読むのは楽しい。知らなかったことを知ることも、むずかしい言葉をしろちゃんにたずねることも、そしてなにより、文字を追うのはとてもとても楽しいことだった。
どんどんものしりになっていくようで、どんどんしろちゃんに近づいているようで、うれしい。
その日読んでいた本は、おとぎ話といわれるものだった。モモから生まれた男の子が、イヌとサルとキジを連れて、町の人の宝をうばった鬼を退治しにいく話だ。
私は首をひねる。鬼はよく、悪者としてえがかれている。このお話のように。
どうしてだろう。しろちゃんだって鬼だ。白鬼っていう鬼だってきいた
けどすごくやさしい。お話の中の鬼みたいに、人の宝物をうばったり、お姫さまをさらったりなんかしない。
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