自分が読みたいタイプの追放悪役令嬢のやり直しモノ

じょるでぃ

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本編

王太子派

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 皆が揃った事で一同テーブルに着き、付き添いはそれぞれ後ろに侍る。
 教育係として来てる貴公子も居れば、本当に令嬢の気心知れた侍女として付き添ってるのも居るみたいだ。特に意思疎通して集められたお茶会ではないのだろう。

 様子を伺うに、まだ王太子派として固まっているわけではないらしい。これから成長するにかけて親しくなっていったんだろうか?


 王太子殿下が、今回は少し珍しいおもてなしをしようと思い用意させた、と言って給仕に指示を出す。

(うげ…っ!)

 東洋の“抹茶”というやつだ。

 子供ばっかの集まりに何を考えてんだ?と思ったら、こちらの文化ではなかなかお目にかからない漆黒の分厚い器で、エメラルドグリーンのスープが出される。

 この器、夢の中でも見たわ……。

 一基で蔵が建つというくらい、高価だと言うやつだ。個人的にはコレにそんな価値は見出せないけど、少なくとも子供相手に出すようなもんじゃない。


 うんざりしながら指輪を外し、すぐ後ろのアビゲイルに、そっと耳打ちする。そうしてから、他の子たちに先んじて器を手に取る。
 スッと器を回し、景色の良い面を口元から外し、三度口にする。

(━━━━やっぱ苦いわぁ…)

 結構なお手前で、と器を置くと、伝言が伝わる前にわたしの所作を真似て口にしてしまった何人かが、顔を歪めて悶絶していた。
 伝言に半信半疑だった一部の少女たちは、それを見てギョッとし、指示に従い飲んだふりをして、器を置いた。


「どうでしょう?これは数年前に存在が明らかとなった、辺境区の奥の亜人の国で振る舞われる、新しいもてなしの儀式です。
 わたしたちの新時代、これからは新しい文化に触れて更なる発展を目指し、繁栄していかねばなりません。皆さんとも互いに研鑽し合い、共に努力し、いっぱい勉強して成長していきましょう」


 何を訳の分からない事を言うんだこの王太子は……。つい、イラッとしてしまう。
 わたしはそのまま言葉を引き継いだ。

「そうですね、他国の文化を知る事は外交を深めるのに必要でしょう。しかしそれはそれ、この大人のもてなしは、わたしたち子供にはちょっと刺激が強すぎではないですか?ちょうどミルクも有りますし……」

 と、隣りの令嬢(フェアネスと並ぶ侯爵家の女の子だわ)に断って、手付かずの抹茶をグラスに分け、ハチミツを溶かしミルクで割る。
 器が貴重なため扱いにくく、ちょっとこぼしてしまった。てへっ。

 マドラーでかき混ぜ、件の侯爵令嬢に差し出す。と、驚く侍従が止める間もなく令嬢はグビリとそれを飲み下し、トロンとした表情で「美味しい~」と恍惚の吐息を漏らした。
 これだけお菓子やら果実水を用意してて、甘いのじゃなく苦いのを飲ませようとした王太子の傍若無人さに腹が立つ。
 子供には甘いものを与えろよ。成長する頭脳には糖が必要なんだよ馬鹿。


「アンネセサリー嬢は、抹茶の事をよくご存知なようですね」
 次期宰相が、憎々しげに言ってくる。
「一応、王太子妃教育は一通り受けましたから」
 夢の中で、でだけど。

 実際は、この次期宰相のやらかした外交無礼の尻拭いに、先方と交渉するのに必死になって調べて勉強して実践した事だ。思い出しただけでも胃が痛くなる。
 凄い器でわたしたちの知らない作法でマウント取りたかったんだろけど、上っ面ばかりな上に文化が隔絶しすぎてて、自分たちの側近候補の子らですら戸惑ってるじゃん。馬鹿じゃないの?
 ウチの侍女もたいした人間じゃないけど、やっぱこの次期宰相は“無い”わ。


「さぁ、とても珍しいおもてなしも受けた事ですし、殿下のご用意して下さった他のお菓子なんかも食べてお互い交流を深めましょう。皆さんにお会いするの楽しみにしておりましたわ」
 場の雰囲気を切り替え、令嬢たちの手をとり、促す。次期宰相には腹立つけど、子供たちには関係ない事だからね。楽しんでもらわなくちゃ。

 侯爵令嬢たちとおしゃべりしていると、王太子が馴れ馴れしく話しかけてくる。わずらわしいけど、如才なく受け答えしておく。
 さっさと縁は切りたいが、現状、何ら被害を与えられたわけでもない。そんな王太子を、強引に拒絶するわけにもいかない。曲がりなりにもわたしは、フェアネス侯爵家の令嬢なのだから。

 それにこの頃は、まだ子供らしい素直さでいい子みたいだもんね。


 でも令息の教育係らしき貴公子に話しかけ、令息の兄らしき貴公子に話しかけ、令嬢の執事らしき青年に話しかけ、侍女と縁を結べそうな好人物いないか探していたら、王太子がなにかと邪魔だ。
 最初はアビゲイル自身に当たらせようとしたけど、せっかくおめかししてきたのに普段の柄の悪さを押し殺して小さくなってる。

 何のために来たのよ、あんた。


 子供たちはみな年相応に素直で、王太子も侯爵家を取り込もうと企む様子もなく意外な感じで仲良く溶け込んでいて、数年後の学園でのクソっぷりはまだ片鱗も見せていない。いや、わたしが知らないだけで学園でも小太陽として人気抜群だったっけか?

 一方、付き添いの貴公子たちは事情を察してる派と察してない派でハッキリとわかれ、侃侃諤諤してる。こっちもこっちで初めての交流の機会なのかも知れない。
 と、次期宰相の射殺すような目つきが、わたしを睨みつけてきてた。鼻で笑っておく。
 わたしは侯爵家のお荷物だけど、わたしに何かすれば侯爵家にいい口実を与えるだけだからね?
 むしろフェアネス侯は大喜びするんじゃない?知らんけど。



 パーティー終わりの帰り際、次期宰相がわたしの聡明さ(笑)を誉めそやしながら、「王太子妃になられるならそれ相応の相応しい立ち居振る舞いを身につけるように願いますよ」と嫌味言ってきた。わたしからも、「あなたもちゃんと相手が望むものを考えられるようになれれば、ご自身が思ってる素敵なイメージを保てますよ」と言っておいた。

 あんたが東亜会社なんてもんを作って、交易に相手から全く望まれていないウチの在庫を押し付けようとして、そこで大赤字叩き出した後処理でわたしがどれほど疲弊したか、少しは慮って欲しいわ。





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