自分が読みたいタイプの追放悪役令嬢のやり直しモノ

じょるでぃ

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本編

ラフネス伯爵家

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「侯爵家といえば、この国一の評判のいい名門じゃないか。ウチみたいな家名地に落ちた田舎貴族のとこに、わざわざ来るとはね……」

 お婆様が呆れたように言った。自身の家名が世間でどういう評判にされてるか、痛いほど思い知っているだろう。


 ラフネス伯爵家


 ロワイヨーム王家に仕える、地方貴族だ。
 伯爵位が示す通り、歴史的な成り立ちは外様の家系ながら地域の有力貴族の一つだった。
 だが、王都やその他の地域でラフネスという名前は、悪名として広まっている。

 『ロジャー&ジュリーwithティボー』

 という、庶民が大喜びした勧善懲悪ラブロマンスの歌劇によって、である。
 ロジャーがフェアネス侯爵家、ティボーがラフネス伯爵家の事なのだ。


「そうですね、王都でも芝居のネタになるくらい正義の家ですから。清廉で豊かで純愛の、皆が憧れる貴族そのまんま。
 ただわたしは、その正義の家の敵役だっただけです」


 ロジェール・フェアネスという美貌の貴公子が、ティボール・ラフネスという悪逆中年貴族に虐げられていた旧友ジュリア・ホスタイル子爵令嬢を助け出して添い遂げた、実話ロマンスが元になっている。
 お互い言い分もあるだろうが、公演が重なるにつれ庶民の好むように脚色されていき、ラフネス家は嫁を掠奪された側でありながら極悪非道の悪徳貴族として、指差し笑われる立場に甘んじるようになっていた。


「あれはもう、ウチの死んだ倅が馬鹿だったと思うようにしてるよ。ただ、悪評に負けてこの家を終わらせるわけにはいかないからね」
 衰え、寝たきりになった現ラフネス伯爵の代わりに、お婆様であるラフネス伯爵夫人が全ての切り盛りをして、騒動で半分以下に削られた領地の経営を行っている。


「……で、送ってきた手紙では王太子妃になるのが嫌で逃げてきたって話だったと思ったがね?それのどこが敵役扱いなんだい?」
「王太子の婚約者候補といっても、切り捨てる前提のトカゲの尻尾でしたから。王太子派へのスパイをさせて、不都合が出れば容赦なく処理されるでしょう。
 わたしは死にたくないし、それよりもっと、あの家にいたくなかった。あそこにはわたしの居場所はありませんでしたから」
 淡々と、あの家でのわたしの立ち位置を伝えた。フェアネスの中でラフネスがどう扱われるか、この国でのラフネスの境遇にさんざん苦労したお婆様なら、分かってくれるだろう。

「そういうわりに、ちゃんと教育は受けさせてもらえてたようだけど?」
 わたしの立ち居振る舞いを見て、そう思ってくれたのだろう。つまりは貴族の娘として及第点はいってるって事だ。少し嬉しい。

「ええ、ですから、王太子殿下はごめんですが、この伯爵家に合った貴公子を探して参りましょう。なにもわたしにこの家を継がせろなんて言いません。あと十年もしないうちに適齢期になります。その時、お婆様の選んだ殿方でも構いません、この伯爵家のために、身を捧げましょう」
 これがわたしの生きる道だ。実父は既に死に、後継者の無いまま老いたお婆様が必死に延命させてきたラフネス伯爵家を、わたしが存続させる。
 悪評高すぎで、養子もまともな人物を貰い受けれない状態だったのが、紛れもなくラフネス伯爵家の血を受け継ぐわたしが、婿を取る。


 わたしという人間に、これほどまでの存在価値を見出せる生き方は、他にあるだろうか?

 これこそが、わたしが生まれてきた歓びなのだ。


「……ウチはあんたらふたりもタダ飯食わせられるほど、裕福じゃない。食う分は働いてもらうよ?」
「ありがとうございますっ!!」
 お婆様の庇護を約束してくれた言葉に、嬉しすぎて満面の笑みで御礼を言った。
 お婆様も、わたしに笑顔向けられてちょっと照れてる。やったね!誤魔化すように、コホンッと咳をひとつしてた。

「で、そっちの若いのはなんだい?」
 付き添ってくれた衛士のお兄ちゃんたちを紹介する。
「伯爵領に逃げてくる際に手助けしてくださった、命の恩人の方々です。彼らや、隣町の居酒屋の女将さんに救いの手を延べてもらえたため、ここまで辿り着く事が出来ました。居なかったら、間違いなくわたしは途中で野垂れ死にしてたでしょう」
 と言ったら、アビーが息を飲んで驚いた。泣きそうになってる。
「彼らに何らかのお礼をしたく、ご同行願いました。相応しい恩賞を賜われませんでしょうか?」
「その礼もわたしにさせようってのかい?厚かましい娘っ子だねぇ」
 お婆様がカッカッと笑った。
「いいさ、いくらか包んでおやり」


「お嬢ちゃん、いったい何者なんだ…」
 家令に連れられ執務室を辞したら、衛士のお兄ちゃんがドッと疲れたようにボソリと呟いた。
「ただのアンネですよ」
 間違いなく、今日ここで、わたしという人間が確立したんだ。
「ただの、アンネです」

 アビーが「お嬢様~っ」と号泣してた。わかった分かったって(笑)

 では皆さん、これからどうぞよろしくお願いします。礼。








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