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学園にて
彼女の資質
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という事で、フィーユ・シャルマン嬢をビジネスお友達に加えたわけなんだけど、
「この子、めちゃくちゃ可愛いわ……」
直接話してみて分かった。顔はもちろんそうだけど、それよりも仕草や雰囲気がめちゃくちゃ可愛い。
正直、礼儀作法はなっちゃいない。
熱心に勉強して表面上は取り繕えてるけど、身についてない。ちょっとした拍子に、ボロが出る。
その時に出る素が、可愛い。
独特のリズムがあって小気味良くて、なるほど平民の粗雑さだけれど、慌てたり笑ったりとキビキビ動いて表情をくるくる変える様は、親しく慣れた後に見せられたらより一層鮮やかな印象になる。
庇護欲がかきたてられる。
(でもこれ、小動物的な可愛さじゃね?)
小柄だし華奢だし……。
友達としてはめちゃくちゃ好きになれても、異性からの恋愛対象になり得るんだろうか?
(ま、まぁ、夢の中の王太子殿下は、この魅力に気付いてたと思うし……)
これに関して考えるのはまだまだ先にしよう。
他にもフィーユには美点がある。素直で向上心があるところだ。
そして自分に非がある時には、ちゃんと謝れる謙虚さもあった。
謝る時も相手の顔色を窺ったりとかで卑屈になる事はない。しっかりと受け止めて、次に活かそうという姿勢が見える。
彼女の中には一本芯が通っていて、その矜持に反する事はしないのだ。それこそ、上に立つべき貴族に必要な資質を備えていた。男爵風情でそこまでの教育は受けれてないだろうから、生来の気質なのかもしれない。
(夢の中のわたしは、彼女の表面しか見てなかったんだなぁ……)
わたしの方こそ、反省しきりだ。
夢の中じゃ腹立たしいだけだったのに、思い込みはダメだね。
「でさぁ、すごく基本的なこと訊くんだけど……」
アンバーとエルサが、ふたりでキャッキャしながらコソッと声をひそめた。
「殿下のことって、どれくらい好きなの…?」
わたしがフィーユのやってる殿下へのアプローチは誰かに指示されてじゃないか?と疑ってるのに対して、ふたりは下級貴族が畏れ多くも王太子殿下に恋慕の情をつのらせるロマンスに共感したいらしい。殿下は見た目だけなら正しく王子様やってるからね。夢見るのもわかる。
いや、わたしだってふたりがラブラブになるの信じてんだよ?むしろなってもらわなきゃ困るし。
「……っ」
ぐっと分かりやすいくらいに顔を紅潮させたフィーユは、それを隠すようにすぐ下を向いて両手で火照った頬を覆った。
その仕草だけで、ふたりはもう「うわーっ!」「キャーッ!」と大はしゃぎした。そうなると余計にフィーユは恥ずかしがって、肩をプルプル震わせてる。
あんな好き好きアタックしてるのを皆んな見て知ってるのに、面と向かって言われたら恥ずかしいもんなのか。あんま揶揄うと可哀想だからほどほどに。
でもまぁちょっとだけ深掘りして聞いてみたら、元々フィーユは幼少期にとある式典で王太子殿下と出会っていたらしい。その時起こった出来事で、誰なのかよく分からないまま仄かな恋心を抱いていたそうだ。
会えない間ずっと、憧れと恋慕を募らせていった可愛らしい女の子。
それが王都学園に通うにあたって、父親のシャルマン男爵からあの時の少年は王太子殿下だったと聞かされ、運命だ!とはさすがに不敬だから思わないけど、その頃の気持ちが爆発したみたい。へ~。
(あのアタックの仕方は無謀にしか思えないにしても、それとは別にして、フィーユが王太子に心を寄せてるのは確かみたいね)
本当はその恋心をじっくり大切に育てたかっただろう。
でも何らかの事情で、そういう情緒を無視して急いで結果を求める必要に駆られてるんじゃないかな?わたしたちに話してない事が彼女には別にありそうだ。
(どちらにせよ客観的に見て、今までのやり方は良くないから効果的な方法を探そう)
根掘り葉掘り訊く必要は無い。わたしたちとフィーユの利害は一致してるんだから。
王太子一派攻略に全力で立ち向かうぞ!
「この子、めちゃくちゃ可愛いわ……」
直接話してみて分かった。顔はもちろんそうだけど、それよりも仕草や雰囲気がめちゃくちゃ可愛い。
正直、礼儀作法はなっちゃいない。
熱心に勉強して表面上は取り繕えてるけど、身についてない。ちょっとした拍子に、ボロが出る。
その時に出る素が、可愛い。
独特のリズムがあって小気味良くて、なるほど平民の粗雑さだけれど、慌てたり笑ったりとキビキビ動いて表情をくるくる変える様は、親しく慣れた後に見せられたらより一層鮮やかな印象になる。
庇護欲がかきたてられる。
(でもこれ、小動物的な可愛さじゃね?)
小柄だし華奢だし……。
友達としてはめちゃくちゃ好きになれても、異性からの恋愛対象になり得るんだろうか?
(ま、まぁ、夢の中の王太子殿下は、この魅力に気付いてたと思うし……)
これに関して考えるのはまだまだ先にしよう。
他にもフィーユには美点がある。素直で向上心があるところだ。
そして自分に非がある時には、ちゃんと謝れる謙虚さもあった。
謝る時も相手の顔色を窺ったりとかで卑屈になる事はない。しっかりと受け止めて、次に活かそうという姿勢が見える。
彼女の中には一本芯が通っていて、その矜持に反する事はしないのだ。それこそ、上に立つべき貴族に必要な資質を備えていた。男爵風情でそこまでの教育は受けれてないだろうから、生来の気質なのかもしれない。
(夢の中のわたしは、彼女の表面しか見てなかったんだなぁ……)
わたしの方こそ、反省しきりだ。
夢の中じゃ腹立たしいだけだったのに、思い込みはダメだね。
「でさぁ、すごく基本的なこと訊くんだけど……」
アンバーとエルサが、ふたりでキャッキャしながらコソッと声をひそめた。
「殿下のことって、どれくらい好きなの…?」
わたしがフィーユのやってる殿下へのアプローチは誰かに指示されてじゃないか?と疑ってるのに対して、ふたりは下級貴族が畏れ多くも王太子殿下に恋慕の情をつのらせるロマンスに共感したいらしい。殿下は見た目だけなら正しく王子様やってるからね。夢見るのもわかる。
いや、わたしだってふたりがラブラブになるの信じてんだよ?むしろなってもらわなきゃ困るし。
「……っ」
ぐっと分かりやすいくらいに顔を紅潮させたフィーユは、それを隠すようにすぐ下を向いて両手で火照った頬を覆った。
その仕草だけで、ふたりはもう「うわーっ!」「キャーッ!」と大はしゃぎした。そうなると余計にフィーユは恥ずかしがって、肩をプルプル震わせてる。
あんな好き好きアタックしてるのを皆んな見て知ってるのに、面と向かって言われたら恥ずかしいもんなのか。あんま揶揄うと可哀想だからほどほどに。
でもまぁちょっとだけ深掘りして聞いてみたら、元々フィーユは幼少期にとある式典で王太子殿下と出会っていたらしい。その時起こった出来事で、誰なのかよく分からないまま仄かな恋心を抱いていたそうだ。
会えない間ずっと、憧れと恋慕を募らせていった可愛らしい女の子。
それが王都学園に通うにあたって、父親のシャルマン男爵からあの時の少年は王太子殿下だったと聞かされ、運命だ!とはさすがに不敬だから思わないけど、その頃の気持ちが爆発したみたい。へ~。
(あのアタックの仕方は無謀にしか思えないにしても、それとは別にして、フィーユが王太子に心を寄せてるのは確かみたいね)
本当はその恋心をじっくり大切に育てたかっただろう。
でも何らかの事情で、そういう情緒を無視して急いで結果を求める必要に駆られてるんじゃないかな?わたしたちに話してない事が彼女には別にありそうだ。
(どちらにせよ客観的に見て、今までのやり方は良くないから効果的な方法を探そう)
根掘り葉掘り訊く必要は無い。わたしたちとフィーユの利害は一致してるんだから。
王太子一派攻略に全力で立ち向かうぞ!
応援ありがとうございます!
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