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転換点

八方塞がりからの

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「あまり他の事にかまけて、学業をおろそかにするなよ?」


 放課後たまたま廊下ですれ違った担任から、ちょっと待てと呼び止められて釘を刺された。

「なにかあるのなら自分たちだけで解決しようなんてするな。ちゃんと大人に相談して、頼れ」
 真剣な顔で諭されて、正直、ぐうの音も出ない。


(運営部につづき、会計課にまでカチコミに行っちゃったからなぁ……)
 裏でコソコソ、なんてつもりでいても、そりゃ教職員には「コイツら何かしているぞ?」とバレちゃうよね。

 当然、ホスタイル氏だって気づいてるだろう。
 奴に変な事されると面倒だ。そうなる前に、エルサ周りの証拠固めをしておきたい。



 会計課では、助成金の削減や予算の凍結がどう決定されたのかを聞き出そうとした。
 結果的にエルサと本草薬学クラブを狙い撃ちにしたような動きを誰が決めたのか、そこから手がかりを掴みたかった。

 でも会計課は、「自分たちは預かり知らぬ」と、わたしたちの要求を一考も無く突っぱねた。

「我々はそのように指示が来たから事務処理しただけだ。予算執行の意思決定機関は予算委員会だ。ウチじゃない」
 文句ならあっちに言ってくれ、と取り付く島も無い。


 それが事実なら、困った。

 会計課は学園の予算出納の管理はするが、予算の使いどころの決定は、学園外部機関の予算委員会が決定権をもっている、というのだ。


(国の組織じゃん……)
 学園内でどうたらじゃなく、教育文部省で大筋が決められている。
 そこが『助成金をなくせ』と言ったら、会計課は廃止して計上するだけだ。それが仕事であり、ましてや意見を言うような立場ではない。驚くほど、学園側には裁量権限が無いみたいだった。

 当然、学生にすぎないわたしたちがどうこうできる相手でもない。




「お手上げだ~っ!」

 調べてみたら、確かに学園運営費の出どころは教育文部省で、予算委員会の承認によって諸事運用されていた。
 だから本草薬学部に不利に働いたのは、本当にたまたまっぽいのだ。

(誰かの意志で歪められたとしか思えなかったのに、全部偶然なのかぁ……)
 まさか本省の役人が、学園の一生徒を陥れるためだけに動くはずはないだろう。
 ならエルサの窮地は、不幸にも不運が重なっただけだというのか。


 ともかく、学園の会計課に意思決定の権限が無いのは分かった。なら、ここで喚いてたって、部費奪還は見込めそうにない。

(今の時期の教育文部省委員って誰々がいたっけ?)

 夢の中で大量の書類を処理して、さんざん署名も確認してたはずだ。でも大臣クラスだったならまだしも、さすがに予算委員会メンバーまでは覚えてない。
 そもそも学生の身じゃ、直接クラブ予算凍結解除をお願いしにいくのは、無理がある。

 止まってた論文の査読は金の力でなんとかなるにしても、回答を提示して部費の再支給を申請するには、相手が外部機関なら当然のように根回しが要る。そう簡単に、決定の撤回なんてしちゃくれないだろうから。

 どこかにコネやらツテやらがあればいいんだけども…。



 なんて、考えをまとめるメモを走り書きして頭抱えてたら、意外なとこから超重要な情報がもたらされた。


 








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