HEAD.HUNTER

佐々木鴻

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Trash Land

 stage of struggle VI

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 黒錆色の長い髪、その容貌を隠すかのようなサングラス、身を包む漆黒のロングコート。そして抜ける用に白い肌の色。

 スクリーンに大きく映し出されているその容貌を見て、女性の観衆達が熱い吐息を漏らした。

『では早速、「ウルドヴェルタンディ・スクルド」が選んだ映えある主役にインタビューをしてみようではないか! 現場のスカリー、ばっちり頼むよぉ!』

 司会が大声で叫ぶと、観衆をかき分けて一台のカメラとリポーターがリケットに駆け寄る。そして、

『はい、現場のスカリーです。えー、此方がリケットさんです。〝ヘッド・ハンター〟の間ではかなりの有名人のようです。えー、リケットさんは、あの『天才』と呼ばれた生体機械工学者、ラッセル・Vの最高傑作と呼ばれていますが、それに関してなにか意見はありますか?』

 言い終わり、マイクをリケットに向ける。だが彼はそれを無視した。いや、最初から眼中にないのだろう。そしてゆっくりと歩き続ける。

『えー、今回この「バトル・シティ」の主役に選ばれた感想は如何でしょうか?』

 リポーターは質問を変えた。だがそれにも答える筈はなく、そしてリケットの歩みも止まらない。

 両手をポケットに突っ込んだまま、真っ直ぐに歩き続ける。その先にいる観衆が、道を譲って二つに割れた。

『えー、なにか一言お願いします』

 幾ら話し掛けても無駄なのだと悟ってしまったが、仕事であるためになにか一言貰おうと食い下がるリポーターだった。その行為自体、無駄なのだが。

『……はっはぁ、どうやら今回の主役は非常に無口な様だぁ。スカリー、御苦労様』

 舌打ちをひとつ。司会がそう言って現場リポートの打ち切りを命じた。

 彼女は肩を落とし、何処かへと消えて行く。この仕事が巧くいかないと、自分は解雇だったのに。

「……今夜は自棄酒でもしよう……」

 呟き、肩を落としたリポーターのスカリーは一旦プレス席へ向かい、其処で無言で顎をしゃくるディレクターを見て項垂れた。

 そしてパスを返却して中央公園を後にする。彼女のマンションは43番街の北側。

 その近くに良い飲食店はなかっただろうか? この際どんな処でも良い。

 そんなことを考えながら足取りも重く歩き出し、彼女はその場から立ち去った。

 ――それが幸運であったと彼女が気付くのは、ほんの少し先になる。

『遅かったねぇ。せっかく「ウルドヴェルタンディ・スクルド」が主役に抜擢したのに、もしかして来ないんじゃないかと心配したんだよぉ。いやぁ、参った参った』

 大仰な身振りと共に、そんな台詞を言いながら大袈裟に安堵の溜息を吐く司会のロッディ。
 だがやはりというか、それすら無視してリケットは歩き続けた。

 目標は、公園の中央に浮かんでいる〝結界〟。

 司会のロッディがこの戦いの趣旨とルールの説明をとうとうとしているのを尻目に、〝結界〟の内部に通じている階段の前に立つ。

 その数、十三段。

 それがなにを意味しているか、リケットは考えない。そうする理由がないし、そもそもその必要もないから。

 そしてリケットは、ゆっくりと、全く躊躇せずに階段を歩き続けた。

 階段最上部にはスーツ姿のサングラスを掛けた大柄の男が二人立ち、リケットを迎えた。

〝結界〟はまだ開かれていない。

『さあ、此処からがお楽しみだぁ! この「ウルドヴェルタンディ・スクルド」が設置した〝結界〟には仮想空間が展開してあって、それはその見る者全てに本物と思わせるほどの機能がある! ただ殺風景な〝結界〟の中で戦うんじゃあ面白くもなんともない! この「ウルドヴェルタンディ・スクルド」特製「ハイパー・VAR・システム」で存分に戦って貰おうではないかぁ!!』

 司会が言い終わると、再び盛大な花火が上がる。観衆が熱狂的な雄叫びをあげた。

 そして、遂に〝結界〟が開かれる。

「哀れな……」

 開かれた〝結界〟に入るリケットへ、スーツの男が言った。

「お前は、罠に掛かったんだよ。もう二度と抜け出せない。此処から出ることは、絶対に不可能」

 それに一瞥を与え、リケットは嗤った。

 残虐に、冷酷に、そして――これから始まる出来事を夢想し笑う、無邪気な子供のように。

 そのさまは、まさしく悪魔のようでもあった。

『おおっと忘れていたぞ、リケット君』

 司会が声を掛ける。だがやはり、リケットは反応しない。

 無視ではなく、初めから眼中にないし、興味もないのだ。

 更に言うなら、リケットにとってその司会は、どうでも良い存在でしかない。

『君にはこれから戦って貰うわけだが、このままではあまりに不公平!』

 無視されても挫けずに、司会は大声で叫ぶ。これこそ彼がこの地位まで上り詰められた要因。

 つまり、無視されてもマイペースで続ける。それが例え強引であっても。

『だから、この「ウルドヴェルタンディ・スクルド」謹製の兵器を好きなだけ使用出来るという権限を与えようではないか!!』

 他の人物がやったなら、絶対に噎せ込むというほどの大声を張り上げて叫ぶ。

 だが、それもやはり無視された……というより、聞いていない。

『……おやおやおやおや、大した自信だねぇ。せっかくの「ウルドヴェルタンディ・スクルド」謹製の武器が要らないようだぁ。まあ、私も無理強いはしないからねぇ。余り無理を言うと、女性に嫌われてしまうからねぇ』

 そう言い、ことある毎に『ウルドヴェルタンディ・スクルド』の社名を挙げつつ何故か妙に香ばしいポーズを決める。

 その様が滑稽だったのか、それとも無視されたことでなのか、観衆が吹き出した。

 その反応に満足し、司会のテンションが更に上がる。

『おおっと、もう〝結界〟に入ったね? もう後戻りは出来ないよ。では、いっくぞぉ!!』

 再び盛大な花火が上がり、そして司会の男は絶叫した。
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