1 / 3
全ての始まり
1話 捕らわれた双子
しおりを挟む
2038年8月17日。アメリカ カリフォルニア州で、母ローズと父フラン・クィンシーの間に双子の男の子たちが生まれた。
双子の兄がネロ、弟がバージルとそれぞれ名付けられた。
ローズとフランはこの双子をすごく可愛がっていたが、世話には手を焼いているようだ。
無理もない。この兄弟は喧嘩しかしないからだ。赤ん坊の頃から、片方の世話を始めればもう片方が泣くし、はいはいをして移動できるようになってくると、横取りや本格的に喧嘩をするようになった。だが決まって負けるのは弟のバージルだ。
一歳の誕生日、二人をいつもより少し豪華な料理でお祝いをした。テーブルには丸々と太ったチキンとかぼちゃスープ、クリームがたっぷりと乗ったショートケーキが並んでいた。
父のフランは研究員でお金はあるが、両親を早くに亡くしている。そして両親共々ひとりっ子だったために、親戚もいなかった。ローズは研究員との暮らしは大変だと言う両親の反対を、縁を切る形で振り切っていた。そんなこともある家庭だからか、家の中はローズとフラン、双子の兄弟だけだった。
ローズは優しい声で、二人に囁いた。
「二人はいつも喧嘩ばかりね。きっと大きくなってもすれ違う二人なんだわ。でもね、自分らしく生きていく中でも、繋がりを忘れずにいれば、仲直りだけで何回でもやり直せるの。だから何回二人がぶつかり合っても、自分たちで答えを見つけ出せる、そんな人間になりなさい。」
フランは微笑みながら二度頷いた。その通りだねという表情だ。それからフランは声をあげた。
「さあ、愛の説教は毎年の恒例行事にするとして、美味しそうな料理をいただくとしようか。」
優しい顔で二人が見つめ合ってから、ローズはチキンを切り分け始めた。
その時だ。家の中に男が二人入ってきた。二人とも武装をしている。
「何だお前たちは!」
フランは声をあげた。緊迫した状況に双子は泣き出し、ローズは固まって動けずにいた。
そしてもう一人男が入ってくる。その男を見てフランは驚いた。
「ロイ?これは一体、どういうことだ。」
ロイ・ロックウェルは同じ研究施設の研究員で、サイボーグ実験を極秘裏に進めているプロジェクトのリーダーだった。
「すまないなクィンシー君。研究のためとはいえ、こんな好条件なことはないのだよ。」
フランは顔を険しくした。
「何のことだ。」
ロイは少し間を空けて続けた。
「君たちは家族の規模がとても小さい。母親は専業主婦、ご近所ともまだ付き合いがほとんどない。父親といえば何も成果を残さない研究員ときたもんだ。そして血縁関係がもう無い。君たちが死んだとしても誰も気に留めないだろう。」
ローズが初めて口を開いた。
「私は縁を切ったけど、両親に連絡は行くわよ。」
ロイがわざとらしい悲しげな顔で返した。
「あぁ、ローズさんだったね。知らないのかい、君の両親は昨年病気で亡くなっているよ。」
「そんな!何も聞いてないわ!」ローズは大声をあげた。
ロイが平然と続ける。
「知らないのも無理はないだろう。君たちに知らせが行かないようにしていたからね。」
ローズは放心状態になってしまった。フランがすかさず割って入った。
「なぜそんなことをする!俺たち家族が何をしたと言うんだ!」
ロイは冷静さを欠かさずに返した。
「この時をずっと待っていたのさ。さっきも言ったが君たちは世帯の規模が小さい。そして双子が生まれたという知らせがあってからずっと目をつけていたんだ。そして今日、誕生日会のある家に君たち家族だけで親族もいない。どちらにせよ関与した一般人は処分するが君たちなら事を小さく済ませられる。」
フランとローズは自分たちの置かれている状況を把握し、何も言えずにいた。ロイは続ける。
「まあ質問会はこの辺にさせてくれ。聞いても聞かなくても結末は変わらないのでね。では、双子は連れていかせてもらうよ。」
ロイはそう言うと双子を抱えた。
「待って!やめて!」ローズは取り返そうと飛び出したが武装した男に止められてしまった。
「すまん、ローズ、ネロ、バージル。」フランはそう言うと、
サイレンサー銃の音が二回、クィンシー家の中で鳴った。
双子の兄がネロ、弟がバージルとそれぞれ名付けられた。
ローズとフランはこの双子をすごく可愛がっていたが、世話には手を焼いているようだ。
無理もない。この兄弟は喧嘩しかしないからだ。赤ん坊の頃から、片方の世話を始めればもう片方が泣くし、はいはいをして移動できるようになってくると、横取りや本格的に喧嘩をするようになった。だが決まって負けるのは弟のバージルだ。
一歳の誕生日、二人をいつもより少し豪華な料理でお祝いをした。テーブルには丸々と太ったチキンとかぼちゃスープ、クリームがたっぷりと乗ったショートケーキが並んでいた。
父のフランは研究員でお金はあるが、両親を早くに亡くしている。そして両親共々ひとりっ子だったために、親戚もいなかった。ローズは研究員との暮らしは大変だと言う両親の反対を、縁を切る形で振り切っていた。そんなこともある家庭だからか、家の中はローズとフラン、双子の兄弟だけだった。
ローズは優しい声で、二人に囁いた。
「二人はいつも喧嘩ばかりね。きっと大きくなってもすれ違う二人なんだわ。でもね、自分らしく生きていく中でも、繋がりを忘れずにいれば、仲直りだけで何回でもやり直せるの。だから何回二人がぶつかり合っても、自分たちで答えを見つけ出せる、そんな人間になりなさい。」
フランは微笑みながら二度頷いた。その通りだねという表情だ。それからフランは声をあげた。
「さあ、愛の説教は毎年の恒例行事にするとして、美味しそうな料理をいただくとしようか。」
優しい顔で二人が見つめ合ってから、ローズはチキンを切り分け始めた。
その時だ。家の中に男が二人入ってきた。二人とも武装をしている。
「何だお前たちは!」
フランは声をあげた。緊迫した状況に双子は泣き出し、ローズは固まって動けずにいた。
そしてもう一人男が入ってくる。その男を見てフランは驚いた。
「ロイ?これは一体、どういうことだ。」
ロイ・ロックウェルは同じ研究施設の研究員で、サイボーグ実験を極秘裏に進めているプロジェクトのリーダーだった。
「すまないなクィンシー君。研究のためとはいえ、こんな好条件なことはないのだよ。」
フランは顔を険しくした。
「何のことだ。」
ロイは少し間を空けて続けた。
「君たちは家族の規模がとても小さい。母親は専業主婦、ご近所ともまだ付き合いがほとんどない。父親といえば何も成果を残さない研究員ときたもんだ。そして血縁関係がもう無い。君たちが死んだとしても誰も気に留めないだろう。」
ローズが初めて口を開いた。
「私は縁を切ったけど、両親に連絡は行くわよ。」
ロイがわざとらしい悲しげな顔で返した。
「あぁ、ローズさんだったね。知らないのかい、君の両親は昨年病気で亡くなっているよ。」
「そんな!何も聞いてないわ!」ローズは大声をあげた。
ロイが平然と続ける。
「知らないのも無理はないだろう。君たちに知らせが行かないようにしていたからね。」
ローズは放心状態になってしまった。フランがすかさず割って入った。
「なぜそんなことをする!俺たち家族が何をしたと言うんだ!」
ロイは冷静さを欠かさずに返した。
「この時をずっと待っていたのさ。さっきも言ったが君たちは世帯の規模が小さい。そして双子が生まれたという知らせがあってからずっと目をつけていたんだ。そして今日、誕生日会のある家に君たち家族だけで親族もいない。どちらにせよ関与した一般人は処分するが君たちなら事を小さく済ませられる。」
フランとローズは自分たちの置かれている状況を把握し、何も言えずにいた。ロイは続ける。
「まあ質問会はこの辺にさせてくれ。聞いても聞かなくても結末は変わらないのでね。では、双子は連れていかせてもらうよ。」
ロイはそう言うと双子を抱えた。
「待って!やめて!」ローズは取り返そうと飛び出したが武装した男に止められてしまった。
「すまん、ローズ、ネロ、バージル。」フランはそう言うと、
サイレンサー銃の音が二回、クィンシー家の中で鳴った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる