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ジャメヴ

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帰宅

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「おりゃー!」
バシャーン!
「冷てー!」
俺は海へ勢いよく飛び込んだ。無人島気分を無理やり味わう為に・・・。
バシャバシャ
「おー、冷たいな」
「冷た~い!」
七音と四葉は足だけ海に入れた。四葉は水色のパーカー風のラッシュガードを着ている。「ビキニじゃ無いのかよ!」と突っ込みたくなったが、今の時代、男でも日に焼けるのを嫌がるから当たり前だ。それでも、デニムのショートパンツから白いスラッとした足が見えている。七音は紺色のティーシャツ風ラッシュガードにハーフパンツ風の海パンだ。俺はラッシュガードなどは着ない。折角鍛えた身体を四葉に見せないといけないからね。1年間鍛えた割には、筋肉が言う程ついていないけど、細身の身体で脂肪が無いから、腹筋がハッキリと6つに割れている。荒川と宮本は「さすがにそんな気分にはならない」と言って出て来ていない。でも、後で来てくれるような雰囲気だった。偶然出会えた兄弟なんだし、仲良くしたい。今後も会う事が出来れば最高だ。
  さあ、楽しむぞと思った時、沖からこっちへ向かってくるモーターボートが見えた。
「あれって・・・」
「もう迎えに来たのかしら? 1時って言ってたのに・・・」
まだ10時にもなっていない筈なのに、見覚えのある運転手がモーターボートに乗っている。彼は俺達の近くまで来て、大声で話す。
「電話が繋がらないんですよ! 心配になって早めに来たんです!」
「・・・」
俺達は顔を見合わせた。何と言って良いのか分からない。運転手は続けて話す。
「何かあったんですか?!」
「殺されたんです!」
俺は仕方無くありのままを大声で告げた。
「こ、殺された?! 誰に?!」
「佐々木って人なんですけど!」
「ちょ、ちょっと警察呼んできます!」
そう言うと、運転手はモーターボートを U ターンさせ、沖へ消えていった。
「電話すれば済む話じゃないのか? 俺達置いて行くなよ」
俺がそう言うと七音がボソッと呟く。
「今のは双六が悪いよ」
「えっ? 俺? 何か悪かった?」
「間違った事は言ってないけど、殺されたって言っちゃったら、ここには俺達しか居ないんだし、『殺人犯はお前らじゃないか!』って感じになっちゃうから、ビビって逃げ出すに決まってるよ」
「あ、そうか」
その時、別荘から荒川と宮本が出てくるのが見えた。四葉が話す。
「まあ別に良いんじゃない?  荒川さんと宮本さんも来てくれたみたいだし、もう少し無人島気分を楽しみましょう」
俺達は無人島の最後を楽しんだ。
  約30分後、運転手が警察を連れて戻ってきて俺達はみっちり事情聴取を受けた。事情聴取の後は、最後の晩餐ならぬ、最後の昼餐でお腹を満たした。殺人事件が起こったとは思えないぐらい、不謹慎ながら話が盛り上がった。そして、貧乏性の俺は、今日の晩御飯の分までと、たらふく食べたのだった。

「さよなら、また集合しましょうね」
「色々と楽しかったよ、じゃあまた」
普通電車に揺られて新幹線の駅に着き、俺と四葉と七音が上り方向、荒川と宮本は下り方向の新幹線の為、改札付近で別れを告げた。殺人事件は起こってしまったけど、笑顔でサヨナラが言えて良かったと思う。車内は人があまり乗っていなかった為、俺と四葉と七音は新幹線の2人掛けの席を回転させて、向かい合わせに座った。俺は今回の事件について話す。
「俺、佐々木さんの考えに一部共感出来なかったんだ。確かに、母さんの気持ちを無視して色んな女性に子供を産ませた事は、卑劣で感心できないけど、復讐しようとまでは思わないかな。俺の母さんは再婚して素晴らしい人と巡り会えてるし。俺が男だからそう思うのかな?」
俺は同意を求めるように四葉を見た。
「私も言い方は悪くなっちゃうけど、その程度で?  って思っちゃった。でも、感じ方は人それぞれだから・・・」
「いや、俺は佐々木さんに共感するよ」
「えっ?!」
七音が意外な意見を言ったので、俺はビックリして七音を見た。
「一人で子育てってのは大変だったと思う。しかも、子供が産まれて幸せ絶頂の時にいなくなられる事なんて考えられない。復讐とまでは思わなくても腹立たしい気持ちになるのは理解出来るよ」
そうだった。俺の母さんは再婚して幸せに暮らしているけど、他の家庭の事は分からない。多分、七音の母さんは再婚していないという事なのだろう。俺は四葉の家庭が気になって聞く。
「四葉さんのお母さんは再婚したのかな?」
「あ・・・え、ええ。再婚して幸せに暮らしているわ」
「そうなんだ」
俺は良かったねという表情で返したけど、四葉の言い方に違和感を覚えた。俺に合わせて再婚したと言ったのだろうか?  別に再婚してなければ再婚してないで良いような気がするんだけど・・・。
  四葉が話題を変えるように話す。
「結局、『五』の人とは会えないのかな?」
「えっ?!  居なかったじゃないか」
俺が聞き返すと、七音が話に割って入る。
「いやいや、別荘に来てなかっただけで、何処かに居る筈だよ。四葉って名前の後、双六って飛ばして名前をつける理由が無い」
「あ、そうか」
「日が合わなかったのか、お金持ちなのか・・・」
「実はハヅキちゃんとかキュウタ君とかいるかもしれないよ」
「そうか・・・。また、会えたり出来ないかな・・・」
佐々木は父さんを恨んで殺してしまったけど、結果的に、俺達は兄弟として出会う事が出来たのは感謝しなければならないなと、車窓から見える景色を見ながら、出会えなかった兄弟と佐々木の無事を願った。

「じゃあ、また連絡するね」
「ああ、おやすみ」「さよなら」
俺達は新幹線からそれぞれの路線の電車に分かれた。  この3日間、色々な事が起こり過ぎたけど、殺人事件よりも、今、頭の中を一番占めるのは、四葉と七音の事だ。七音にはハッキリと俺も四葉の事が好きになってしまったと伝えなければならない。兄弟で三角関係とかカオス過ぎる。
  自宅に着くともう夜8時半。俺は家族に無人島での出来事を伝えた。兄弟達と過ごした事、良い人ばっかりだった事、沢山の高級レトルト食品やデザートがあった事、そして・・・長男が父親を殺した事・・・。
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