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第4部 アマランタイン
第1章 首都、再び 2
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「先ほどは何ですか? あれでは王と同じです!」
つい今しがた、広間での事を言っている事は明らかだった。声を荒げて乱暴に王女に詰め寄る様子は普段の勇者らしからぬ態度だ。
三人の貴族の首を刎ねたのは他ならぬ彼だというのに、その表情は青く固かった。憤っているようにも見える。
あの場で彼女に異を唱える者があれば彼が首を刎ねる事はもとより決まっていた事だった。そのように指示を受けていたのだ──だからそうした。セリス王女に異を唱える権利など、勇者にはないから。
その勇者の瞳が、とある恐ろしい考えが浮かんだ……とでもいうように見開かれた。
「あれではまるで──あなたは──」
勇者ワーナーは厳しい表情で王女を見下ろした。
「まるで……なんですの?」
勇者よりもずっと小柄で痩身のセリス王女は、そんな威圧的な態度に微塵も臆する様子も見せず冷ややかに彼を見つめ返した。ワーナーは渋面を作った。
「まさか……この国を滅ぼそうとしているとでも言うのですか?」
躊躇うように言うと、王女の唇が弧を描いた。冷笑が突き刺さるように冷たかった。
「あら。いまごろやっと気付きましたの?」
「なぜ──」
言い募る勇者など眼中に無いかのごとく、セリス王女はゆったりと部屋の中を歩いてゆき窓辺へ向かった。数日前まではここは父の部屋だった。今は──彼女の部屋だ。代々のネリスの王が居室とする部屋だった。
そう……彼女はもはやこの国の王なのだ。
王女は窓辺へ腰掛けると外の景色に目をやった後、再び室内へ視線を移した。そして勇者をひたと見据えた。
「何故と仰る?」
何故勇者がそんな愚問をするのかといった様子で王女は彼を見つめた。紫の瞳が嘲笑するように勇者の姿を映し出していた。
「ついほんの数日前、父を斬り付けてドンジョンへと落としたのは他ならぬ貴方だというのに」
「──あなたのご命令です!」
「ええ。そうでしたわね」
王女は世間話でもしているかのように軽やかに答えた。
国の存亡の危機を語るような様子ではなく、実の父を叛した当の本人のようにも見えなかった。
流れるような美しい白銀の髪も、瀟洒で可憐なその外見も。そして勇者をみつめるその瞳にも。邪なところは寸分も見えず、そのような事を考えてさえも無いように見えた。
──まったく──無邪気な幼子そのままに、過去も未来も見てはいない。今というその一瞬の中だけに生きているかのようにその瞳を輝かせている。
セリス王女はまさに幼子そのものだ。
そう──だからこそ、始末に悪いのだ。
なんの意識をする事もなく邪まな事が出来てしまう。……彼女が傾国と言われる、これこそが所以だった。
ワーナーは顔を顰めた。
「……私は……貴方が王を……この国を守る為に、止めようとなさっているのだと……そう思いました……。だからこそ、陛下に剣を向けることも止むを得ないと──。ですがあれでは──王の二の舞です! 貴方は王と同じ事をなさりたいのですか? あれでは、この国は滅んでしまいます! 貴方は一体、何をなさりたいのですっ?」
搾り出すように言う勇者を、王女は鼻白むように笑って髪を掻き揚げた。そして敢然と言い放つ。
「ご心配は無用です。前にも言ったはずですわ。私の考えどおりに事は進んでいますと。それは今も変わりはありませんわ!」
「──しかし──」
尚も王女に食い下がろうとする勇者を、セリス王女は蔑むように見た。勇者がぐっと唇を噛み締めて、言いかけた言葉を飲み込んだ。
「何を言いかけたのですか?」
セリス王女がゆったりと歩みを進めて、膝をつく勇者の前に歩み出た。「聞かせてくださいませ」伸びた繊手がそっと勇者の顎を摘まみ上げる。ワーナーが迷うように口を開いた。
「──貴方が何をなさろうとしておいでなのか。その考えとやらをお聞かせください」
細く白い指先がゆっくりと動きながら勇者の顎を撫ぜてゆく。
「──先ほど申しましたわ」
「……まさか……」
セリス王女は言った。
──今頃気付いたのか、と──。
勇者は乾いた唇をそっと舐めた。
本当に、この国を滅ぼそうと……?
「やっと……お分かりになりましたのね……?」
そっと吐息を吐き出すように呟いた王女の声に応じるように、勇者が立ち上がった。じっと見下ろされるその瞳を見上げながら、セリス王女は世界を嘲笑うかのような笑みを浮かべた。
「わたくしは『傾国』です! そのように言われ、十年間ずっとあの場所に閉じ込められました!」
それはよく分かっている。毎年二度。半年毎に彼女の元に訪れたのは他ならぬ勇者なのだから。
「それがどういうことか──お分かりですか? わたくしが、あの天空の鳥籠の中で……何を思いながら日々を過ごしてきたか……」
勇者から視線をはずしたセリス王女の瞳が、此処ではない遠くを見つめた。
「父を怨み、世を呪い、姉を呪った──それだけを心の拠り所として生きていくだけの、永遠に続く日々……。かつての、わたくしが何をしましたか──っ? 父に言われるがままに嫁ぎ、城を出ただけではありませんかっ? それ以外に、わたくしが何をしたのですかっ!?」
セリスは激しく声を荒げ、空気を吸い込んだ。
「わたくしは傾国だと皆が言います。亡き夫を、謀反をおこすよう誑かしたのだと……」感情の昂ぶりを抑えきれない様子で、王女は何度も言葉を区切りながら息を継いだ。「……当時六歳のわたくしが……本当にそんなことを……狙ってしたとでも……?」
「──そんなことは、大人の都合のいい屁理屈ですわっ! 道で躓いたら、その場所にあった石が悪いのだと言うのと同じ理屈ですっ!」
紫の瞳が激情に耀いた。激しい怒りで可憐な容貌が凄絶に歪んだ。
「城に戻されることが決まった時、わたくしは誓いました!! わたくしは──もう、決して──誰にも命令されたりしないと! そうなるために、それだけの地位が必要だと言うのなら……必ずそれを手に入れて見せると! わたくしの人生は、わたくしだけのものです! 誰にも、わたくしの邪魔させたりはしません!!」
「そのためなら、父を手に掛ける事も! 姉を手に掛けることも、平気です! そして、わたくしが傾国だというのなら……必ずこの国を滅ぼして見せます! こんな国など、滅んでしまえばよろしいのです! ……わたくしは全身全霊をかけて──必ず、この国を滅ぼします! 草木一本、民人ひとりとして残さず滅ぼして見せます! ──それがわたくしが真に望むことですわ!!」
王女はそう言い放つと、勇者を挑みかかるように睨み据えた。
「なぜそれを私に……?」
「貴方が聞いたからですわ」
「ですが……」
「それに」戸惑う素振りを見せる勇者に向かって王女は微笑んだ。「あなたはわたくしの事を止めたりなさいません」
「だってそうでしょう……? 貴方こそ、かつて姉を殺そうとしたのではありませんでしたか──?」
「まさか!」
勇者は間髪入れず否定した。
「言い訳は無用です! ──あの日。あなたが勇者に就任した任命式の日。城の中庭で──貴方がお姉さまにしたこと……。わたくしはあの時、一部始終を見ていましたの。貴方はあの時、お姉さまを殺そうとしたのでしょう?」
王女の言葉にワーナーは無言で答えた。
「別にわたくしは構いませんのよ。どちらでも。……真実がどこにあっても。ただ、貴方はわたくしには逆らえないという事だけが重要なんですの」
そう言ってセリス王女は勇者をみつめた。
無言で見つめ返す勇者としばし無言の時が過ぎ──。
ふっと──。王女がいつものような零れるような可憐な笑みをこぼした。そっと勇者の肩に手を載せる。
「さあ。抱いてくださいませ。いつものように……。」
酒場の娼婦でさえ足元に及ばぬほどの妖艶な瞳を揺らし、セリス王女は勇者に命じた。
王女を見つめる勇者は眉間に僅かに皺を寄せたが、それもすぐに消えた。勇者の固い表情から、感情の全てが消えた。
その手が王女の繊手をとった。
そして。──いつものように。何度も繰り返されてきたように。今日もまた同じようにして二人の影がひとつに重なった──。
(続く)
+-----------------------------+
| 「語バラ(裏)」
+-----------------------------+
トリニティ:「……なんか、今回すごい?」
セリス:「あら。もっと褒めてくださってもよろしいんですのよ?」
トリニティ:「褒めるっていうかさ。こう……悪女っぷりというか、堕ちっぷりというか」
セリス:「まさに『傾国の美女』にふさわしいでしょう? 始めにも申し上げましたとおり、わたくしの役は大変難しいんですのよ? お姉さまみたいにひたすらまっすぐ突き進んでドカンと壁にぶつかって、突き破って、また真っ直ぐ進む……みたいな単純な役ではありませんの」
トリニティ:「──それはそれでイタイのよ……。やたらとアチコチぶつかるから──いやまぁ、それは置いといて」
セリス:「──なんですの? その、妙に意味ありげな視線は。──ああ! まったく、お姉さまときたら。子供ですわねぇ!」
トリニティ:「鼻で笑うのやめてよ!」
セリス:「鼻で笑ってなんていません! こういうのは嘲笑っているというのです!」
トリニティ:「──もっと悪いじゃない!」
セリス:「フフン!」
トリニティ:「だから姉を馬鹿にするのは止めて!」
セリス:「お子様ですもの!」
トリニティ:「うううっ」
セリス:「いつまでもアレク様とプラトニックな関係のお姉さまと違って、わたくしは大人ですから!」
トリニティ:「──それ以上は喋っちゃ駄目っ!」
セリス:「あら」
トリニティ:「あんたの場合、最後まで全部言っちゃいそうだわ! あんたって外見はそんなだけど、中身はかなり擦れてるから!」
セリス:「あらやだ。……ほんとにお姉さまって子供なんですのね」
アブリエル:「遠くで聞いていると姉妹の会話に聞こえませんね……」
ディーバ:「女って怖ぇーな。今のは怖ぇー会話だった」
アブリエル:「え? そうだったんですか? どの辺が怖いのでしょう。教えていただけますか?」
ディーバ:「……。お前、そのカマトト、天然か? それともワザとか? ──いや、天然なのは分ってるけどさ。だからこそムカつくんだよな!」
アブリエル:「えええっ? どういうことですか? 訳が分りません。ああっ! 痛い!頭叩くのやめてくださいよぅ!」
つい今しがた、広間での事を言っている事は明らかだった。声を荒げて乱暴に王女に詰め寄る様子は普段の勇者らしからぬ態度だ。
三人の貴族の首を刎ねたのは他ならぬ彼だというのに、その表情は青く固かった。憤っているようにも見える。
あの場で彼女に異を唱える者があれば彼が首を刎ねる事はもとより決まっていた事だった。そのように指示を受けていたのだ──だからそうした。セリス王女に異を唱える権利など、勇者にはないから。
その勇者の瞳が、とある恐ろしい考えが浮かんだ……とでもいうように見開かれた。
「あれではまるで──あなたは──」
勇者ワーナーは厳しい表情で王女を見下ろした。
「まるで……なんですの?」
勇者よりもずっと小柄で痩身のセリス王女は、そんな威圧的な態度に微塵も臆する様子も見せず冷ややかに彼を見つめ返した。ワーナーは渋面を作った。
「まさか……この国を滅ぼそうとしているとでも言うのですか?」
躊躇うように言うと、王女の唇が弧を描いた。冷笑が突き刺さるように冷たかった。
「あら。いまごろやっと気付きましたの?」
「なぜ──」
言い募る勇者など眼中に無いかのごとく、セリス王女はゆったりと部屋の中を歩いてゆき窓辺へ向かった。数日前まではここは父の部屋だった。今は──彼女の部屋だ。代々のネリスの王が居室とする部屋だった。
そう……彼女はもはやこの国の王なのだ。
王女は窓辺へ腰掛けると外の景色に目をやった後、再び室内へ視線を移した。そして勇者をひたと見据えた。
「何故と仰る?」
何故勇者がそんな愚問をするのかといった様子で王女は彼を見つめた。紫の瞳が嘲笑するように勇者の姿を映し出していた。
「ついほんの数日前、父を斬り付けてドンジョンへと落としたのは他ならぬ貴方だというのに」
「──あなたのご命令です!」
「ええ。そうでしたわね」
王女は世間話でもしているかのように軽やかに答えた。
国の存亡の危機を語るような様子ではなく、実の父を叛した当の本人のようにも見えなかった。
流れるような美しい白銀の髪も、瀟洒で可憐なその外見も。そして勇者をみつめるその瞳にも。邪なところは寸分も見えず、そのような事を考えてさえも無いように見えた。
──まったく──無邪気な幼子そのままに、過去も未来も見てはいない。今というその一瞬の中だけに生きているかのようにその瞳を輝かせている。
セリス王女はまさに幼子そのものだ。
そう──だからこそ、始末に悪いのだ。
なんの意識をする事もなく邪まな事が出来てしまう。……彼女が傾国と言われる、これこそが所以だった。
ワーナーは顔を顰めた。
「……私は……貴方が王を……この国を守る為に、止めようとなさっているのだと……そう思いました……。だからこそ、陛下に剣を向けることも止むを得ないと──。ですがあれでは──王の二の舞です! 貴方は王と同じ事をなさりたいのですか? あれでは、この国は滅んでしまいます! 貴方は一体、何をなさりたいのですっ?」
搾り出すように言う勇者を、王女は鼻白むように笑って髪を掻き揚げた。そして敢然と言い放つ。
「ご心配は無用です。前にも言ったはずですわ。私の考えどおりに事は進んでいますと。それは今も変わりはありませんわ!」
「──しかし──」
尚も王女に食い下がろうとする勇者を、セリス王女は蔑むように見た。勇者がぐっと唇を噛み締めて、言いかけた言葉を飲み込んだ。
「何を言いかけたのですか?」
セリス王女がゆったりと歩みを進めて、膝をつく勇者の前に歩み出た。「聞かせてくださいませ」伸びた繊手がそっと勇者の顎を摘まみ上げる。ワーナーが迷うように口を開いた。
「──貴方が何をなさろうとしておいでなのか。その考えとやらをお聞かせください」
細く白い指先がゆっくりと動きながら勇者の顎を撫ぜてゆく。
「──先ほど申しましたわ」
「……まさか……」
セリス王女は言った。
──今頃気付いたのか、と──。
勇者は乾いた唇をそっと舐めた。
本当に、この国を滅ぼそうと……?
「やっと……お分かりになりましたのね……?」
そっと吐息を吐き出すように呟いた王女の声に応じるように、勇者が立ち上がった。じっと見下ろされるその瞳を見上げながら、セリス王女は世界を嘲笑うかのような笑みを浮かべた。
「わたくしは『傾国』です! そのように言われ、十年間ずっとあの場所に閉じ込められました!」
それはよく分かっている。毎年二度。半年毎に彼女の元に訪れたのは他ならぬ勇者なのだから。
「それがどういうことか──お分かりですか? わたくしが、あの天空の鳥籠の中で……何を思いながら日々を過ごしてきたか……」
勇者から視線をはずしたセリス王女の瞳が、此処ではない遠くを見つめた。
「父を怨み、世を呪い、姉を呪った──それだけを心の拠り所として生きていくだけの、永遠に続く日々……。かつての、わたくしが何をしましたか──っ? 父に言われるがままに嫁ぎ、城を出ただけではありませんかっ? それ以外に、わたくしが何をしたのですかっ!?」
セリスは激しく声を荒げ、空気を吸い込んだ。
「わたくしは傾国だと皆が言います。亡き夫を、謀反をおこすよう誑かしたのだと……」感情の昂ぶりを抑えきれない様子で、王女は何度も言葉を区切りながら息を継いだ。「……当時六歳のわたくしが……本当にそんなことを……狙ってしたとでも……?」
「──そんなことは、大人の都合のいい屁理屈ですわっ! 道で躓いたら、その場所にあった石が悪いのだと言うのと同じ理屈ですっ!」
紫の瞳が激情に耀いた。激しい怒りで可憐な容貌が凄絶に歪んだ。
「城に戻されることが決まった時、わたくしは誓いました!! わたくしは──もう、決して──誰にも命令されたりしないと! そうなるために、それだけの地位が必要だと言うのなら……必ずそれを手に入れて見せると! わたくしの人生は、わたくしだけのものです! 誰にも、わたくしの邪魔させたりはしません!!」
「そのためなら、父を手に掛ける事も! 姉を手に掛けることも、平気です! そして、わたくしが傾国だというのなら……必ずこの国を滅ぼして見せます! こんな国など、滅んでしまえばよろしいのです! ……わたくしは全身全霊をかけて──必ず、この国を滅ぼします! 草木一本、民人ひとりとして残さず滅ぼして見せます! ──それがわたくしが真に望むことですわ!!」
王女はそう言い放つと、勇者を挑みかかるように睨み据えた。
「なぜそれを私に……?」
「貴方が聞いたからですわ」
「ですが……」
「それに」戸惑う素振りを見せる勇者に向かって王女は微笑んだ。「あなたはわたくしの事を止めたりなさいません」
「だってそうでしょう……? 貴方こそ、かつて姉を殺そうとしたのではありませんでしたか──?」
「まさか!」
勇者は間髪入れず否定した。
「言い訳は無用です! ──あの日。あなたが勇者に就任した任命式の日。城の中庭で──貴方がお姉さまにしたこと……。わたくしはあの時、一部始終を見ていましたの。貴方はあの時、お姉さまを殺そうとしたのでしょう?」
王女の言葉にワーナーは無言で答えた。
「別にわたくしは構いませんのよ。どちらでも。……真実がどこにあっても。ただ、貴方はわたくしには逆らえないという事だけが重要なんですの」
そう言ってセリス王女は勇者をみつめた。
無言で見つめ返す勇者としばし無言の時が過ぎ──。
ふっと──。王女がいつものような零れるような可憐な笑みをこぼした。そっと勇者の肩に手を載せる。
「さあ。抱いてくださいませ。いつものように……。」
酒場の娼婦でさえ足元に及ばぬほどの妖艶な瞳を揺らし、セリス王女は勇者に命じた。
王女を見つめる勇者は眉間に僅かに皺を寄せたが、それもすぐに消えた。勇者の固い表情から、感情の全てが消えた。
その手が王女の繊手をとった。
そして。──いつものように。何度も繰り返されてきたように。今日もまた同じようにして二人の影がひとつに重なった──。
(続く)
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| 「語バラ(裏)」
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トリニティ:「……なんか、今回すごい?」
セリス:「あら。もっと褒めてくださってもよろしいんですのよ?」
トリニティ:「褒めるっていうかさ。こう……悪女っぷりというか、堕ちっぷりというか」
セリス:「まさに『傾国の美女』にふさわしいでしょう? 始めにも申し上げましたとおり、わたくしの役は大変難しいんですのよ? お姉さまみたいにひたすらまっすぐ突き進んでドカンと壁にぶつかって、突き破って、また真っ直ぐ進む……みたいな単純な役ではありませんの」
トリニティ:「──それはそれでイタイのよ……。やたらとアチコチぶつかるから──いやまぁ、それは置いといて」
セリス:「──なんですの? その、妙に意味ありげな視線は。──ああ! まったく、お姉さまときたら。子供ですわねぇ!」
トリニティ:「鼻で笑うのやめてよ!」
セリス:「鼻で笑ってなんていません! こういうのは嘲笑っているというのです!」
トリニティ:「──もっと悪いじゃない!」
セリス:「フフン!」
トリニティ:「だから姉を馬鹿にするのは止めて!」
セリス:「お子様ですもの!」
トリニティ:「うううっ」
セリス:「いつまでもアレク様とプラトニックな関係のお姉さまと違って、わたくしは大人ですから!」
トリニティ:「──それ以上は喋っちゃ駄目っ!」
セリス:「あら」
トリニティ:「あんたの場合、最後まで全部言っちゃいそうだわ! あんたって外見はそんなだけど、中身はかなり擦れてるから!」
セリス:「あらやだ。……ほんとにお姉さまって子供なんですのね」
アブリエル:「遠くで聞いていると姉妹の会話に聞こえませんね……」
ディーバ:「女って怖ぇーな。今のは怖ぇー会話だった」
アブリエル:「え? そうだったんですか? どの辺が怖いのでしょう。教えていただけますか?」
ディーバ:「……。お前、そのカマトト、天然か? それともワザとか? ──いや、天然なのは分ってるけどさ。だからこそムカつくんだよな!」
アブリエル:「えええっ? どういうことですか? 訳が分りません。ああっ! 痛い!頭叩くのやめてくださいよぅ!」
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