宇宙海賊カーチェス・ナイト

伊東 馨

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マダム・マリエールの遺産

終章 エピローグ ~やっぱ、物語ってのは続かないとな

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「ずいぶん昔の写真を見ているじゃないか。いまどき紙にプリントされた写真なんて──何が写っているんだい」
 機関室からブリッジへあがってきたシュタイナーが、俺が座っている椅子の後ろから、身をかがめて覗き込んできた。
「これは……」
「懐かしいだろ。お前が宇宙海賊に転職した、輝かしい記念日に撮ったあの写真だ」
 その紙切れの中には、タナトスのブリッジが写っていた。俺の仲間達全員がその中に写っている。
「だけどどうして、今ごろになって、この写真を見返しているんだい?」
「ん……いや……」
 俺はあいまいに答えて、
「この頃はまだタナトスも可愛らしかったなぁ、と思ってね。
 今じゃもう、神経も図太くなっちまって。ブッ飛んだ性格の宇宙船になってしまったからなあ」
『そりゃ、キャプテン・カーチェスの教育の成果の賜物ですよ』
「俺がお前を、そんな風に育てたと言いたいらしいな」
『その通りです。私は持ち主に忠実で素直な性格ですからね』
「……一生言ってろ!」
 俺とタナトスのやりとりを見て、シュタイナーが楽しそうに笑った。俺がじろりと睨むと、彼は腹を押さえて、
「……いや、いつ見ても楽しいなと思って。こんなに人間臭い宇宙船の主電脳なんて、捜したってまずいないよ」
 と言った。その点に関しては、俺も同意できる。
「最近じゃソーニャも自立してきたし……。志織は昔から人形にしてはトんだ性格だったけど──まあ、トーマが作ったんなら、それも納得できるかな」
 ああ、そうか。ソーニャのメンテナンスは全部トーマがやっているんだから、彼に影響を受けたのかも知れないな。
 そんなことを言っていると、シュタイナーが腹を抱えて笑い出した。
「なんだカーチェス。君は気付いてなかったのかい?」
「何がだ?」
「君の側にいると、機械でも人形でも、みんな人間になってしまうってことをさ」
 シュータイナーにそう言われて、俺はガラにもなく赤くなった。


 (完)
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