十和田くんはセフレだから。

ミネ

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次の日の朝から十和田くんはうちに来た。途中、コンビニとベーカリーに寄ったのかレジ袋を片手に下げている。

十和田くんは俺が寝てる間に朝食の準備を済ませ、スマホより先に俺に声を掛ける。

「真名さん、おはようございます」

俺は眠いのもあって、朝から名前を呼ぶイケメンボイスにも朝食とコーヒーの香りにも反応できない。

「‥‥んー」

「顔洗って来てください。一緒に朝食にしましょう」

十和田くんのはずむ声とカーキ色のエプロン。

顔を洗って部屋に戻るとベッドの横の小さなテーブルには所狭しと二人分の朝食が。

昨日の夕飯もそうだったけど(料理がテーブルに乗らずコース料理みたいに順番に食べた)二人で食事をするにはテーブルも手狭だし、食器も足りない。

寝ぼけた頭で俺はつぶやく。

「週末、テーブルとか、食器とか買いに行こうか」

十和田くんはかじってたパンから顔を上げて目を輝かせる。

「‥はいっ!」

「あ、あと食費‥」

俺が財布を探そうと立ち上がると止められた。

「いえ、それくらいは俺が」

それくらいって、むしろ十和田くんに色々やって貰うのはこちらなのですが‥。

「‥うん」

朝からまだ頭が回らなくてそのまま頷く。あとでまた話そう。

「真名さん、寝癖が」

「うん」

優しい手つきで十和田くんが俺の髪を梳く。だけど俺の頑固な寝癖はそんなもんじゃ戻らなかった。

美味しい朝食を終えて着替えると寝癖を直して家を出た。なんかちょっといつもより元気な気がするのはちゃんと朝飯を食べたからだろうか。いつもはカフェオレかゼリー飲料で終わらすだけだ。

冷たい12月の風を顔に受けながらも、まぶしい日差しに俺は伸びをして軽い足取りで職場に向かった。






家に人が待っているというのはなんて素晴らしいことなのだろう。

俺は綺麗に掃除された部屋の暖かい夕食に感動している。

美味しいご飯、きれいな部屋、そして食後のハグ。

ああ。十和田くんの要望でハグの姿勢が俺たちの定位置だったね。

今は十和田くんの長い脚の間に俺が座って後ろからハグされてる。冬で寒いし、いいかんじにあったかい。

十和田くんが「今日はどうでした?」とか聞いてくれるからすこし仕事の愚痴を聞いてもらったりする。十和田くんは余計なことは言わず「うんうん」ってちょっと低音ボイスで頷きながら静かに聞いてくれる。

なんかこれ、めっちゃ癒される‥!

俺はあまり酒が好きじゃないから家にも置いてないし、飲みにも行かない。飲み会とかもだるいタイプ。ストレスの解消は休日の昼間からごろごろ寝てるか、たまに行くスーパー銭湯くらい。

平日からなんか贅沢な時間を過ごさせて貰っている‥!

俺が感動の眼差しで十和田くんを見つめると十和田くんは俺を優しげに見つめ「お風呂入りますか?」と聞いてくれる。本当に至れり尽くせりだ。

俺が風呂に入ると言うとお風呂を溜め、十和田くんは帰る支度を始める。

「明日は大学なので朝から来れませんが、また夕食作りに来ますので」

「ありがとう‥。なんか今日一日十和田くんのおかげでいい日だった」

十和田くんは少し恥ずかしそうな表情をして「また」って言って帰った。

俺はお風呂に入って、替えてくれたぱりぱりのシーツの気持ちいいベッドに入る。

冷たい布団の中で俺は十和田くんのハグを思い出した。人肌ってあったかい。それに他人と一緒にご飯を食べるのもいい。

人付き合いなんて、気を遣うだけで億劫だと思ってたけど、俺はそういう人といる心地よさを知らなかったんだな。

一人の慣れているはずの狭い1Kの部屋がなんだかさみしい。さっきまで一緒にいたのに、なぜだかまたすぐに十和田くんに会いたくなった。
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