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──人生というのは、本当に何が起こるか分からない。
事故で死亡して次に目を覚ましたら、目の前に美しい金髪碧眼の異国の少女が立っていた。
パッと見の年齢は十代後半で、身長は百六十センチ程度だと思う。
顔や細身のプロポーションは、二次元でしか見る事の出来ない精巧な造形をしていた。
白と黒のシスター風の衣装と相まって、実に神聖的で清楚感が漂っている。
ぶっちゃけ、ドストライク。好みすぎて見ているのが辛いレベルだった。
「ようやく目覚めたのじゃ、新たな狩人ソウスケよ」
どこかのお嬢様なのか綺麗なお辞儀を見せて少女は、自分に向かって犬歯を見せてニヒヒと笑い掛けてくる。
口調に関しては何だか老人みたいだが、ロリババアも守備範囲内なので全く問題ない。
むしろ好きなジャンルだ。
童貞歴二十五年の自分は、彼女の外見と言葉のギャップに呆気なく陥落した。
「え、あ……その……っ」
異性を前にして、頭の中が真白になってしどろもどろになってしまう。
我ながら相変わらず、情けなくなるレベルの奥手男子だった。
でも彼女は醜態を晒す自分に嫌な顔を一切見せず、幼い見た目とは真逆の大人の余裕を見せて話を続けた。
「目覚めて記憶が混乱しているみたいじゃの。これでも飲んで落ち着くのじゃ」
そう言って金髪美少女が手渡してきたのは、コーヒーっぽい香りのする液体が入ったマグカップだった。
知らない人から貰ったものに口を付けるのは、本来なら避ける所だが相手は美少女。例え毒殺されても悔いはない。
中身に口を付けてみると、慣れ親しんだ深いコクのある味わいにホッとする。若干霞が掛かっていた意識がカフェインっぽい効果で明瞭となった。
飲み干してカップは彼女に返す。落ち着いたら、それを見守っていた少女は口を開いた。
「わしはアスファエル、この世界でオマエを担当する事になった天使じゃ」
「どうも、神居です……って、転生? 天使?」
転生と天使といったら、オタクである自分の頭の中に思い浮かぶのは一つしかない。
確かに彼女が天使ならば、あの老人みたいな喋り方にも納得ができる。でも死ぬ間際に願ったからといって、こんな簡単に叶ってしまうのだろうかと不安に思った。
アスファエルと名乗った少女は、疑いの眼差しを向ける俺に軽く頷いてみせる。
次の瞬間に淡い光を全身から放ち、背中から二枚の白翼と頭上に光輪を出現させた。
おお、すごい。──本物っぽい。
「ぶは!?」
思わず手を伸ばそうとしたら、寸前で何か見えない結界みたいなのに阻まれて後方に弾き飛ばされた。
バターンと椅子から落ちる。無様に尻もちを着き傷みに悶えていると、アスファエルは悪戯っ子みたいに笑った。
「ダメじゃよ、天使に許可なくお触りは天罰が下るのじゃ」
「す、すみません……」
「ふふふ、次からは気をつけることじゃ。……さて、これがわしの本当の姿。オマエは別世界で死亡した後に記憶を保持した状態で、この世界──〈プロセシング・ワールド〉に転生したのじゃ」
「転生した、俺がこの世界に……」
立ち上がり冷静に周囲を見回す。どうやら小さな教会っぽい建物の中にいる事が分かった。
偶々近くにあった綺麗な窓ガラスに薄っすらと映る自分の姿は、二十代後半のやや疲れた壮年ではない。
見たところ、十代後半の若々しい少年くらい。恐らく全盛期時代の姿。荒れていた髪の毛はツルツルだし肌にも艶がある。
一生消えないと思っていた疲労感が、全て解消されて実に清々しい気持ちだった。
若いって最高!
……って、ちょっとまてまて。落ち着け、まだ結論を出すのは早いぞ。
目を閉じて大きく深呼吸をしてから、冷静になると迷わずに右拳を──自身の頬に向かって放つ。
べキッと嫌な音と激痛が走り、顔面を殴った俺はその場で蹲る結果となった。
しかし一向に夢が覚める気配はない。ということはつまり、
なるほど、本当に異世界転生したんだ。
本当に憧れていたあの異世界に、しかも前世の記憶を引き継いだ状態で来れた。
これが夢ではない事を実感すると、今度はこの世界に対する好奇心が湧き上がってくる。
相手が年上という事と、念願の異世界に転生した興奮に助けられ、俺は相手が苦手な異性である事すら忘れて話し掛けた。
「し、質問が沢山あるんだけど良いかな?」
「わしに答えられることだったら、何でも聞くがよい」
「じゃあ、遠慮なく質問するよ。──最初に狩人様って呼んでたってことは、俺は何かを狩る為に選ばれたって事?」
「うんうん、理解が早くて助かるのじゃ。この世界がソウスケに求めるのは、平穏なスローライフや自由気ままな冒険じゃない。簡単に説明するのならば、この国の外で定期的に生まれる凶悪なモンスター達を狩る仕事じゃ」
「モンスターを狩る仕事……」
つまり前世で流行っていた、怪物をハントするゲームみたいなものか?
「とても単純な仕事じゃ。でもこれにはちゃんとした理由がある。実はこの世界は無数に存在する他世界が処理しきれない負の感情を集め、モンスターという形に変換して〈狩人〉達が処理する場所なのじゃ」
今の説明で大体理解する事ができた。
合っているのかは分からないけど英語で〈プロセシング・ワールド〉は、
日本語に訳した場合、──〝処理の世界〟という意味になる。
分かりやすく解説するのなら、この世界は一種の『ごみ処理場』。
そして狩人に選ばれた俺みたいな転生者は、集められたごみを片付ける『清掃員』の役割。
世界の仕組みは概ね理解できた、だけどここで一つだけ疑問が生じる。
その狩りに従うメリットは、果たして転生者側にあるのだろうか?
強制的に労働力として召喚されて「今日から清掃員としてゴミを処理しろ」と言われた者が、ハイ分かりましたと素直にどれだけ危険なのかも分からん戦地に向かうとは思えない。
中には絶対に拒否する者も出てくるはず。そんな事を考えていると、彼女は自分を見て何か察したのか今度はメリットについて話を始めた。
「もちろんこれは慈善事業じゃない。毎日のノルマをこなして十年間生き抜いた暁には、その時のランクに応じて望む形で転生させる事を約束するのじゃ」
「……ノルマ? ランクに応じて?」
「ノルマとはお仕事じゃ。狩人のランクは十段階あって、十年後にもしも一番下のGランクだったら頭の良いミジンコに転生するくらいしか選択肢がないのじゃ」
頭の良いミジンコとは一体……。
虫に脳みそはないぞ、とツッコミを入れるべきなのか大いに悩む。
いや、異世界のミジンコにはもしかしたら脳があるのかもしれないが……。
だけど今はそんな天使ジョーク?に付き合っている場合ではないので、彼女に質問する事を優先した。
「分かった。ランク上げが重要になるっぽいけど、どうやって上げれば良い?」
「簡単じゃよ、モンスターを倒してレベルを上げるのじゃ」
つまりそれは、前世で知り尽くしたゲーム感覚で強くなれる事を意味する。
自分にとっては実に分かりやすくて、とても助かるシステムだと思った。
ならば次に、彼女に聞かなければいけないのは。
「モンスターと戦う方法は?」
「この世界に転生した際にソウスケには『万能の言語』が与えられている。今わし等が会話できているのはこれのおかげじゃな。そしてここからが本題なのじゃが、契約を結ぶことで今度は『スキル』が与えられる。戦闘に関しては主に、このスキルを用いて戦う事になるのじゃ」
「万能の言語と、スキル……!?」
異世界転生では定番であり、必須とも言える『言語能力』と『スキル』の存在。
言語能力に関しては、彼女が説明してくれた通りの効果。
それより最も大事なのはスキルだ。
一体どんな能力が与えられるのか凄く気になる。
王道系の属性魔法から始まりマイナーなスキル等、色々と妄想が捗って仕方がない。
やはり昨今の流れでは、誰からもゴミと認定される外れスキルか。
──ああ、楽しい。こんな夢みたいな事を、真剣に考えられる日が来るなんて!
前世でオタクだった俺は、知識だけは豊富に蓄えている。
それらを総動員すれば、例え与えられたのが使えないハズレスキルでも活躍できるはず。
頭の中に浮かんだのは、スキルで無双して異性を助ける自分の姿。
ベタベタなテンプレのようなラブコメ展開を思い描くと、楽しすぎて自然と笑みがこぼれる。
テンションが高くなりすぎて、緊張が解けた自分は彼女にため口で話しかけるようになっていた。
「質問は以上かの。それでソウスケは、この契約を引き受けるのじゃ?」
「俺は……」
契約書と見慣れた黒いペンを目の前に差し出され、改めて新しい人生について考えてみた。
実際にモンスターと遭遇した場合だが、頭の中で思い描いた通りに動けるとは限らない。
最悪のパターンとしては、最初の狩りで雑魚死する事も十分に考えられる。
でも夢にまでみた異世界という千載一遇のチャンスを逃す選択肢なんて、オタクである自分の中には一欠けらも存在していない。
前世で何度も脳内シミュレーションはしてきた。
例え初期装備が石ころでも、上手く戦って見せる自信がある。
なにより美少女天使がいるのだ。他にも可愛い異種族がいるに違いない。
エルフ、サキュバス、獣人、人魚、これらの美女とお近づきになれる機会を逃すのはオタク失格。
彼女達と上手く話せるかは分からないけど、始めてみなければ分からない。
──舞台に立てば、なんとでもなるはずだ!
やってみせる。前世ではできなかった念願の『恋人』を一人でも、俺はこの世界で作って見せるぞ。
勢いのままにサインをした契約書は光の粒子となり、自分の身体に吸い込まれて消えた。
これで契約が完了したのだと理解すると、アスファエルに向かって綺麗な九十度の角度で頭を下げる。
「今日から狩人として、精一杯働かせていただきます!」
「良く引き受けてくれた! ではこれより鑑定眼でスキルを確認し、オマエの狩人ライセンスリングを作成する!」
よっしゃー!
元オタクの転生無双恋愛物語の始まりだーっ!
事故で死亡して次に目を覚ましたら、目の前に美しい金髪碧眼の異国の少女が立っていた。
パッと見の年齢は十代後半で、身長は百六十センチ程度だと思う。
顔や細身のプロポーションは、二次元でしか見る事の出来ない精巧な造形をしていた。
白と黒のシスター風の衣装と相まって、実に神聖的で清楚感が漂っている。
ぶっちゃけ、ドストライク。好みすぎて見ているのが辛いレベルだった。
「ようやく目覚めたのじゃ、新たな狩人ソウスケよ」
どこかのお嬢様なのか綺麗なお辞儀を見せて少女は、自分に向かって犬歯を見せてニヒヒと笑い掛けてくる。
口調に関しては何だか老人みたいだが、ロリババアも守備範囲内なので全く問題ない。
むしろ好きなジャンルだ。
童貞歴二十五年の自分は、彼女の外見と言葉のギャップに呆気なく陥落した。
「え、あ……その……っ」
異性を前にして、頭の中が真白になってしどろもどろになってしまう。
我ながら相変わらず、情けなくなるレベルの奥手男子だった。
でも彼女は醜態を晒す自分に嫌な顔を一切見せず、幼い見た目とは真逆の大人の余裕を見せて話を続けた。
「目覚めて記憶が混乱しているみたいじゃの。これでも飲んで落ち着くのじゃ」
そう言って金髪美少女が手渡してきたのは、コーヒーっぽい香りのする液体が入ったマグカップだった。
知らない人から貰ったものに口を付けるのは、本来なら避ける所だが相手は美少女。例え毒殺されても悔いはない。
中身に口を付けてみると、慣れ親しんだ深いコクのある味わいにホッとする。若干霞が掛かっていた意識がカフェインっぽい効果で明瞭となった。
飲み干してカップは彼女に返す。落ち着いたら、それを見守っていた少女は口を開いた。
「わしはアスファエル、この世界でオマエを担当する事になった天使じゃ」
「どうも、神居です……って、転生? 天使?」
転生と天使といったら、オタクである自分の頭の中に思い浮かぶのは一つしかない。
確かに彼女が天使ならば、あの老人みたいな喋り方にも納得ができる。でも死ぬ間際に願ったからといって、こんな簡単に叶ってしまうのだろうかと不安に思った。
アスファエルと名乗った少女は、疑いの眼差しを向ける俺に軽く頷いてみせる。
次の瞬間に淡い光を全身から放ち、背中から二枚の白翼と頭上に光輪を出現させた。
おお、すごい。──本物っぽい。
「ぶは!?」
思わず手を伸ばそうとしたら、寸前で何か見えない結界みたいなのに阻まれて後方に弾き飛ばされた。
バターンと椅子から落ちる。無様に尻もちを着き傷みに悶えていると、アスファエルは悪戯っ子みたいに笑った。
「ダメじゃよ、天使に許可なくお触りは天罰が下るのじゃ」
「す、すみません……」
「ふふふ、次からは気をつけることじゃ。……さて、これがわしの本当の姿。オマエは別世界で死亡した後に記憶を保持した状態で、この世界──〈プロセシング・ワールド〉に転生したのじゃ」
「転生した、俺がこの世界に……」
立ち上がり冷静に周囲を見回す。どうやら小さな教会っぽい建物の中にいる事が分かった。
偶々近くにあった綺麗な窓ガラスに薄っすらと映る自分の姿は、二十代後半のやや疲れた壮年ではない。
見たところ、十代後半の若々しい少年くらい。恐らく全盛期時代の姿。荒れていた髪の毛はツルツルだし肌にも艶がある。
一生消えないと思っていた疲労感が、全て解消されて実に清々しい気持ちだった。
若いって最高!
……って、ちょっとまてまて。落ち着け、まだ結論を出すのは早いぞ。
目を閉じて大きく深呼吸をしてから、冷静になると迷わずに右拳を──自身の頬に向かって放つ。
べキッと嫌な音と激痛が走り、顔面を殴った俺はその場で蹲る結果となった。
しかし一向に夢が覚める気配はない。ということはつまり、
なるほど、本当に異世界転生したんだ。
本当に憧れていたあの異世界に、しかも前世の記憶を引き継いだ状態で来れた。
これが夢ではない事を実感すると、今度はこの世界に対する好奇心が湧き上がってくる。
相手が年上という事と、念願の異世界に転生した興奮に助けられ、俺は相手が苦手な異性である事すら忘れて話し掛けた。
「し、質問が沢山あるんだけど良いかな?」
「わしに答えられることだったら、何でも聞くがよい」
「じゃあ、遠慮なく質問するよ。──最初に狩人様って呼んでたってことは、俺は何かを狩る為に選ばれたって事?」
「うんうん、理解が早くて助かるのじゃ。この世界がソウスケに求めるのは、平穏なスローライフや自由気ままな冒険じゃない。簡単に説明するのならば、この国の外で定期的に生まれる凶悪なモンスター達を狩る仕事じゃ」
「モンスターを狩る仕事……」
つまり前世で流行っていた、怪物をハントするゲームみたいなものか?
「とても単純な仕事じゃ。でもこれにはちゃんとした理由がある。実はこの世界は無数に存在する他世界が処理しきれない負の感情を集め、モンスターという形に変換して〈狩人〉達が処理する場所なのじゃ」
今の説明で大体理解する事ができた。
合っているのかは分からないけど英語で〈プロセシング・ワールド〉は、
日本語に訳した場合、──〝処理の世界〟という意味になる。
分かりやすく解説するのなら、この世界は一種の『ごみ処理場』。
そして狩人に選ばれた俺みたいな転生者は、集められたごみを片付ける『清掃員』の役割。
世界の仕組みは概ね理解できた、だけどここで一つだけ疑問が生じる。
その狩りに従うメリットは、果たして転生者側にあるのだろうか?
強制的に労働力として召喚されて「今日から清掃員としてゴミを処理しろ」と言われた者が、ハイ分かりましたと素直にどれだけ危険なのかも分からん戦地に向かうとは思えない。
中には絶対に拒否する者も出てくるはず。そんな事を考えていると、彼女は自分を見て何か察したのか今度はメリットについて話を始めた。
「もちろんこれは慈善事業じゃない。毎日のノルマをこなして十年間生き抜いた暁には、その時のランクに応じて望む形で転生させる事を約束するのじゃ」
「……ノルマ? ランクに応じて?」
「ノルマとはお仕事じゃ。狩人のランクは十段階あって、十年後にもしも一番下のGランクだったら頭の良いミジンコに転生するくらいしか選択肢がないのじゃ」
頭の良いミジンコとは一体……。
虫に脳みそはないぞ、とツッコミを入れるべきなのか大いに悩む。
いや、異世界のミジンコにはもしかしたら脳があるのかもしれないが……。
だけど今はそんな天使ジョーク?に付き合っている場合ではないので、彼女に質問する事を優先した。
「分かった。ランク上げが重要になるっぽいけど、どうやって上げれば良い?」
「簡単じゃよ、モンスターを倒してレベルを上げるのじゃ」
つまりそれは、前世で知り尽くしたゲーム感覚で強くなれる事を意味する。
自分にとっては実に分かりやすくて、とても助かるシステムだと思った。
ならば次に、彼女に聞かなければいけないのは。
「モンスターと戦う方法は?」
「この世界に転生した際にソウスケには『万能の言語』が与えられている。今わし等が会話できているのはこれのおかげじゃな。そしてここからが本題なのじゃが、契約を結ぶことで今度は『スキル』が与えられる。戦闘に関しては主に、このスキルを用いて戦う事になるのじゃ」
「万能の言語と、スキル……!?」
異世界転生では定番であり、必須とも言える『言語能力』と『スキル』の存在。
言語能力に関しては、彼女が説明してくれた通りの効果。
それより最も大事なのはスキルだ。
一体どんな能力が与えられるのか凄く気になる。
王道系の属性魔法から始まりマイナーなスキル等、色々と妄想が捗って仕方がない。
やはり昨今の流れでは、誰からもゴミと認定される外れスキルか。
──ああ、楽しい。こんな夢みたいな事を、真剣に考えられる日が来るなんて!
前世でオタクだった俺は、知識だけは豊富に蓄えている。
それらを総動員すれば、例え与えられたのが使えないハズレスキルでも活躍できるはず。
頭の中に浮かんだのは、スキルで無双して異性を助ける自分の姿。
ベタベタなテンプレのようなラブコメ展開を思い描くと、楽しすぎて自然と笑みがこぼれる。
テンションが高くなりすぎて、緊張が解けた自分は彼女にため口で話しかけるようになっていた。
「質問は以上かの。それでソウスケは、この契約を引き受けるのじゃ?」
「俺は……」
契約書と見慣れた黒いペンを目の前に差し出され、改めて新しい人生について考えてみた。
実際にモンスターと遭遇した場合だが、頭の中で思い描いた通りに動けるとは限らない。
最悪のパターンとしては、最初の狩りで雑魚死する事も十分に考えられる。
でも夢にまでみた異世界という千載一遇のチャンスを逃す選択肢なんて、オタクである自分の中には一欠けらも存在していない。
前世で何度も脳内シミュレーションはしてきた。
例え初期装備が石ころでも、上手く戦って見せる自信がある。
なにより美少女天使がいるのだ。他にも可愛い異種族がいるに違いない。
エルフ、サキュバス、獣人、人魚、これらの美女とお近づきになれる機会を逃すのはオタク失格。
彼女達と上手く話せるかは分からないけど、始めてみなければ分からない。
──舞台に立てば、なんとでもなるはずだ!
やってみせる。前世ではできなかった念願の『恋人』を一人でも、俺はこの世界で作って見せるぞ。
勢いのままにサインをした契約書は光の粒子となり、自分の身体に吸い込まれて消えた。
これで契約が完了したのだと理解すると、アスファエルに向かって綺麗な九十度の角度で頭を下げる。
「今日から狩人として、精一杯働かせていただきます!」
「良く引き受けてくれた! ではこれより鑑定眼でスキルを確認し、オマエの狩人ライセンスリングを作成する!」
よっしゃー!
元オタクの転生無双恋愛物語の始まりだーっ!
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