純白のガンブレイダー 〜TSアルビノ美少女、産廃職でエンジョイプレイします〜

神無フム

文字の大きさ
5 / 68

世界の問い掛け

しおりを挟む
 作業に没頭していたら不意に肩を叩かれた。
 何事かと隣を見たら、メタちゃんがマスコットキャラクターのような丸目で見上げていた。

「メタ、メタタ~」

「……うん、もう時間だね」

 確認をしてみると、もう既に午後23時59分となっている。
 片付けを行い机を撤去したボク達は、何もないテラスで向かい合った。

 球状の身体をメタちゃんは変化させ、差し伸べた手と右手で握手を交わす。

 思えばこの子と出会ったのは、このゲームを始めた時にひたすら鉄を求める亡者と化していた時。
 ドーム内でモンスターを素手で殴り殺す、屈強なマッスル老婆に話しかけられたのが切っ掛けだった。

 スペシャルクエスト【変わったスライム】。
 変わった老婆の間違いではないか、この上なくツッコミを入れたくなるタイトル。
 内容はポーションを作るスライム育成所に、突然変異のスライムが生まれたから所有者になってくれないかという実にシンプルなもの。

 育成所に行ったら、沢山のスライム達から離れた所にこの子は一人だけポツンといた。
 その時の目が何だか寂しそうな感じがして、ボクは絶対に友達になる事を決めたのだ。

 しかし所有者になる為には、好物を与えて好感度を上げないといけない仕様。
 老婆は自分で探すのが真の友情と言ってヒントすらくれなかった。
 それから自分は彼が好きな食べ物を探し、マップ中を駆け回る事になった。

 毎日与えたものを不味そうに食べるメタちゃん。
 一体なにが好物なのか、集団に混ざれない孤独なスライムに何度も挑戦していたら。
 ある日隣で日向ぼっこをしている時、何となく『鉄片』を出したら彼は勢いよく食いついてきた。

 そこでようやく判明した、突然変異のスライムの名が──〈メタルスライム〉だという事に。

「最初から金属のスライムだってわかってたら、あんなに苦労する事なかったのに。グレーカラーなのを除いたら、触り心地も全部他のスライムと同じなのはずるいよ……」

「メタ~?」

 小首をかしげるように、身体を斜めにするメタちゃん。
 友達になったこの一ヶ月間、ずっとこの子と冒険をしてきた。

 雨の日も嵐の日も、モンスターの大群に囲まれて大ピンチとなった日も。
 彼は共にいて、沢山の楽しい思い出を自分と作ってくれた。

 最初は女性アバターでプレイするのが目的だったが、この子がいなければ此処まで仮想世界を楽しむ事は出来なかっただろう。
 本当に楽しいひと時というのは、あっという間に過ぎ去っていくものだと改めて思い知らされる。

 目を閉じて弾丸を手に、このゲームを始める際に世界から受け取ったメッセージを思い出す。
 ベータプレイヤーに与えられた先行特典は大きく二つ程ある。

 正式リリースでは『メイン武器』と『所持しているモノの中から自由に一つだけ』引き継ぎに選べるのだ。
 この子はボクの『使い魔』として所持枠に入っている。だから迷わずに選んだけど、その中身まで全部引き継がれるのかは定かではない。

 尋ねようにもこのゲームにはヘルプ機能も無ければ、運営に問い合わせる機能もない。
 だから一緒にいたメタちゃんとは、もしかしたら此処でお別れになる可能性もある。

 そう考えると小さな胸の内側から、深い悲しみの感情がツンと鼻先まで込み上げてくる。
 まったく涙腺が脆いものだ。泣きそうになるのを我慢してボクはパートナーに思いを告げた。

「……次の世界でもよろしくね、メタちゃん」

「メタ~」

 メタちゃんはジャンプして、いつもの定位置である右肩に止まる。
 彼は身体の一部を手に変換した後、自分の頭を成形した手でゆっくりと撫でてくれた。
 ひんやりして気持ち良い感覚と優しさに触れることで、乱れていた心は少しずつ鎮まっていく。

 消えないで、頼むから消えないで。
 ずっと一緒にいた、この子の心が次の世界でも有るように強く願う。

 切ない思いを胸に抱きながら、自分達がいた海と廃都市をテーマにした美しいダンジョンは真っ暗な闇に包まれる。

 気が付けば時刻は、もう午前0時00分。
 夏休みの期間中、180時間以上かけて遊んだベータテストの終わりが遂にやってきた。

「ありがとう、直ぐに迎えに行くから!」

「メタメタ~」

 世界とパートナーとアバターは端の方から光の粒子となる。
 もっとも愛したゲームの中にいた分身のシエルボクと、メタちゃんに感謝と共にひと時の別れを告げた。







 ベータテストが終わった。

 システムから、強制ログアウトする報告が来ている。

 真っ暗な世界の中、現実世界に戻るのを待っていると不意にボクの身体が淡い光を放つ。

 なんで身体が光っているんだ。
 疑問に思う中、淡い光は周囲の全てを照らした。

 光に照らされて姿を現したのは、以前伯父に見せてもらった──プログラミング言語。
 それが世界を満遍まんべんなく埋め尽くす光景に、例えようのない恐怖心を抱く。

「なにこれ………うわ!?」

 気が付けば足場のない、上空何百メートルかも分からない空中に立っていた。

 真下には良く見知った自分が住む町、ヤオヨロズ市がある事に気が付く。
 高所恐怖症だったら心停止しそうな光景、しかもよく観察すると建物や地面などが細かいプログラムの集合体である事に気付いた。

 ──何だこれは、一体何が起きているんだ。

 市の中央区にある大きな空き地にプログラムが集まり、何やら見覚えのある巨大な塔となる。
 形状は〈ディバイン・ワールド〉の各階層で何度も利用した、転移に必要不可欠なシスター達が住むタワーだった。

 しかも変化は、それだけで終わらない。
 気が付くと世界を構成するプログラムは、ボクの身体から発せられている白い輝きによって次々に書き換えられていく。

 まったく理解できないけど、とんでもない事が起きているのだけは理解できた。
 神話の創成期を目の当たりにしているような、次々に起きる衝撃的な光景をただ傍観する事しかできない。

 やがて荒れていた世界の波が収まり、先程の光景がウソだったかのようにシーンと静まり返る。
 もしかしてここまでの演出は、全部プロローグ的なものだったのか。

 期待とか不安とか、言葉にできない感情が胸の内側を占める。
 怖いくらいに光も音もない夜空の中、ただ何もできずに浮いていると周囲から『世界』の声が聞こえた。

【正式リリースの準備が完了しました】

【これより世界は旧データを更新し、〈ディバイン・ワールド〉バージョン47にアップデートします】

【最後に一つだけ、睦月星空様に質問をします】




【アナタは、自分を修正しますか?】




 いつもお知らせをしてくれる『世界』は意味不明な問いかけをしてきた。

【YES】

【NO】

 意味が分からない状態で宙に浮かぶ自分の前に、二つの選択肢が無造作に提示される。

 ……何らかのイベントなのだろうか。

 こんなサプライズは聞いていなかったので、ただひたすら混乱することしかできない。

 正式リリースの舞台は現実を模したマップなのか。

 修正するとは、一体何のことを指しているのか。

 状況と質問の意図は全く読めないが、何故か無視することができなかった。

 システムは『自分』を修正するか問い掛けた。

 自分の修正したい部分、そんなのは気付いてしまった時から一つしかない。

 でも期待して良いのか。こんな簡単に叶えてもらえるのか。

 甘い言葉には罠がある、従姉からいつも気を付けるように言われている。

 しかしさっきの超常的な現象を見てしまった後だと、叶えられるのではないかとほんの少しだが期待してしまう。

 この言葉がもしも、ボクが思った通りの意味なんだとしたら。

 万が一、億が一でも。

 ずっと現実世界で悩んできた、この身体の根底にある悩みを修正してくれるのならば。

 たとえ男性の身体である事に、違和感がなくなるんだとしても。

 ──ボクは、

 ──ボクは、ボクは、



 ────ッ!



 初めて抱いた『欲』に従い持ち上げた右手は、迷わず目の前にある【YES】を指先でタッチした。
 目の前が、眩い真っ白な光に包まれる。


 そのまま意識は、光の中に溶けるように消えた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...