クズだが強いし好き勝手やれる俺の話

じぇみにの片割れ

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アルベルト・バーンシュタイン

第7話 ゴーレム出現

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 壁の中に現れた道をしばらく進むと、また遺跡内部の通路にたどり着いた。俺と女が出ると背後の道は消えて壁に戻った。
 通路に出られたのはいいが、ここがどこなのかはまだ分からない。

「とりあえず、上を目指せばいいか」

 2号の子機を取り出す。女が一瞥してきて驚いたような顔となるが、何も言わない。こいつ、徹底的に俺を無視する気でいるな。
 子機で付近を探索。左右の道のどっちも分かれ道に続いてやがる。

「なぁ、どっちも分かれ道だが、どっちに行く?」

 まだ無視。しばらく沈黙が返ってきた後、女は左の道を歩き始めた。
 なんともむかつく態度で今すぐ殺してやりたくなってきたが、まだ役に立つかもしれないからそうもいかない。仕方なく、女の後ろについていく。
 歩きながら4号が周囲を索敵。女の進行方向にある石畳の下に怪しい空間を発見した。
 俺が声をかけようとすると、女はその石畳だけを正確に避けて進んだ。どうやら向こうには向こうの発見方法があるらしい。

「マスター、次の石畳は怪しいです」

 声は俺の胸元から聞こえた。軍服の胸ポケットに赤紫の小さな花が挿してある。花の分身だ。忠告を聞いて俺は別の石畳に足を下ろす。
 そのまま俺たちは通路を進んでいった。罠は花、4号の物理的探査と魔力感知で避けていく。
 しばらく歩いて分かれ道に辿りついた。女の進みが遅いせいで時間がかかっちまった。
 2号の子機が先行して探索。少しして花が声をかけてくる。

「マスター、この場所、ちょっと変です」
「場所って大雑把だなおい。具体的にはどこだよ」

 独り言を話してるように見えたのか、女がゴミを見るような目で見てきた。独り言のせいじゃねえかもしれねえ。
 異音。それと同時に俺でも感知できるぐらいの魔力。時限式か感知式か知らないが、とにかく罠に引っかかったらしい。

「マスター、何か出てきたぞ!」

 2号が知らせてくる。子機を通して見える映像には、通路を埋め尽くすほどの巨大な石造りの巨人。所謂ゴーレムってやつが分かれ道の先に現れていた。巨大な拳が振り上がり、向かってくる。視界が暗転。

「子機が潰されたみたいだな」
「わっちの身体が!」

 2号の悲痛な叫び。痛みはないらしいんだが、身体の一部ではあるのか、子機が潰されたり壊されたりすると怒る。

「おい、ゴーレムが来るから逃げるぞ」

 女に声をかけようと顔を向けると、壁際で座り込んでいた。ちょうど体力の限界だったようだが、タイミングが悪い。思わず舌打ち。
 ゴーレムがふみ鳴らす地響きが徐々に近づいてくる。どうする。戦ってもいいが、まず間違いなく周囲を壊しながらやるはめになり、報酬はなくなる。つまり、逃げるしかない。
 魔道書を開いて1号を呼び出し、女を触手で持ち上げる。

「え、ちょっと……!」
「1号、しっかり持ってろよ!」

 そのまま分かれ道の片方を全力疾走。忙しなく花と4号が罠の位置を伝えてくるのでそれに合わせてひたすら走る。
 後方を2号に確認させる。思ったよりもゴーレムが速く、距離が詰まっていた。動きが遅くとも歩幅が違いすぎた。
 巨大な掌が俺たちを掴もうと迫ってくる。身を屈んで回避。頭の上を大質量が通り過ぎて風が巻き起こる。こんなものに触ったら豆腐みたいに潰されちまう!
 足元の罠を跳躍して躱す。僅かな減速のせいでさらに距離が縮まる。このままじゃ追いつかれる。
 さらに前方に感圧式の罠。4号が床下に空洞があることを知らせてくる。落とし穴だ。ここで、俺に閃きが生まれた。

「1号、触手であの罠を発動させろ!!」

 触手が伸びていき石畳に触れて罠が発動。床に巨大な穴が開く。

「うぉおおおおおお!!」

 雄叫びと共に跳躍。巨大な穴を、ぎりぎり飛び越えて反対側の床に着地。そのまま振り返って後ろを確認。
 落とし穴にゴーレムを処理してもらおうって作戦だが、我ながら冴えてる。
 落とし穴の手前にゴーレムの広大な足が着地。そのまま進めば奈落の底へ落下だ、ざまーみろ。さらにゴーレムが一歩を踏み出す。柱のような太さの脚が持ち上がり、轟音と共に落下。足がしっかりと床を踏みしめた。

「……えっ?」

 思わず間抜けな声が出た。どこからって俺の口からだ。規格外のでかさのゴーレムは、思いっきり脚を伸ばして落とし穴を余裕でまたぎやがった。
 そんなの、ありかよ。
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