クズだが強いし好き勝手やれる俺の話

じぇみにの片割れ

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アルベルト・バーンシュタインその3:アルベルトと百合の騎士

トラウマってどうしようもねえよな?

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「じゃあ1号、よろしく」
「はいはい、しょうがないわね」

 俺が1号に呼びかけると、通路の奥から巨体が現れる。大小様々な触手が絡まり合った塊。これが1号の本体だ。
 どうやったかっていう話は簡単だ。普通、召喚術師は魔導書から封印してある召喚物を取り出す。
 だが、俺はそもそも封印なんかしちゃいない。こいつらは出ようと思えば勝手に出てこれるのだ。意思の疎通も魔導書を介してやっているわけではないので、引き離したところで無駄だ。

 そういうわけで、1号に鉄格子を破壊してもらう。1号の触手にかかれば鉄の檻なんてものは紙細工みたいなもんだ。簡単にへし折れる。

「よし、行くか!」

 元気よく俺は宣言して階段を駆け上がっていく。

§§§§

 俺はそのままあの女騎士たちがいる部屋まで一直線に進んだ。
 道中何があったかとか気になるか? ならねえよな?
 一応言っとくと、隠密活動ってやつをした。兵士に見つかったら花の花粉とかをぶち込んで眠らせた。以上。終わり。
 そんなことよりもここからが大事だ。俺は部屋の扉の前で立ち止まる。

「よぉし、早速突っ込むとするか」
「待ってください。中の様子を2号さんとかで見ておかなくていいんですか?」
「いいんだよ。これ以上待ってたら俺の股間が爆発しちまう!」

 花の忠告を無視して俺は扉を蹴破って中に突入する。
 そこには素っ裸で互いの身体をいじり合っている美人二人が……いない。
 あれ、どこいった?

「ノックぐらいしたらどうなのかしら、下郎」

 俺の右から剣が伸びてきて首に触れる。つめてえ。

「やっぱり向かってきたのですね、下衆」

 左からも剣が伸びてきて首の後ろに触れる。全身から冷や汗が出やがる。

「な、なんで分かった」

 俺はこの後殺される小悪党みたいな台詞を吐いた。吐いちまった。
 絶大な緊張感の中、ナタリアは呆れたような顔をする。

「あれだけ足音立てていれば誰だって分かるわ」
「え、そんなうるさかったか!?」
「ええもう。すぐに分かるぐらいにね」

 俺は心底から驚いた。さっき隠密活動したと言ったが、どうやらできてなかったらしい。
 っていうか、音が出てるんなら4号が言うと思ってたんだがな!

「いや……あんなにはっきりと音を出してるもんだから、わざとかと」
「わざとなわけあるか!! 馬鹿かお前は!!」

 いきなり怒鳴り出した俺を見てレリカとナタリアが頭おかしい奴を見る目を向けてきやがる。くそ、どいつもこいつも馬鹿にしやがって。
 俺がちょっと動こうとすると、すぐに刃が押し当てられる。やばいな。

「おかげさまで私たちの手であなたを処刑することができる。感謝するわ」

 俺は深呼吸をする。これはマジでやばいかもしれねえ。

「じゃ、さよなら」

 ナタリアの言葉と共に、押し当てられていた剣が二つとも一瞬だけ引かれる。

「今だ1号!!」

 その一瞬を突いて1号の触手が俺の首の前後に現れて剣を受け止める。

「なっ」
「しまったっ!」

 驚いている二人を尻目に俺は大急ぎで屈んで二人の間から抜け出る。
 首を触って確認。大丈夫だ、繋がってる。まだ首無し騎士デュラハンに転生してねえな。

「てめえら絶対に許さねえからなっ!! ぶっ殺してやるから覚悟しやがれ!!」

 二人に向かって指差しながら俺は大声で怒鳴りつける。よぉし、かっこ良く決まったぜ。

 レリカが俺を睨みつけ、ナタリアがレリカに目配せをする。
 何かと思ったら、レリカは「〈エレクトロ〉」と唱え、魔法で剣に紫電を纏わせた。俺の股間に激痛の幻痛が走る。

「……か、覚悟、しやがれよ……絶対、許さねえ、からな……」

 脚ががくがくと震え出して言葉がしどろもどろになる。な、何だ俺は。あのたかが電撃ごときがそんなに怖いのか。
 さらにナタリアも同じように剣に電撃を付与。脚の震えが上半身にまで伝搬。

「……いや……ちょっと俺も悪かったかもしれねえ……」

 口が意思とは裏腹に弱気なことを言い始める。しっかりしろよ!

「謝罪はお好きなだけどうぞ。許さないのはこっちの台詞だから」
「今度こそ完全に焼き切ってあげます」

 女どもは一切俺を許すつもりがなかった。鬼や悪魔の親戚だと思うんだが、どうだ。

「ま、待てよ! 俺そんなに酷いことしてねえだろ!!」
「聞く耳持たないわ」
「ご安心を。私もそんなに酷いことはしないので」

 やばい、恐怖のあまり身体が動かねえ。どうするどうする。

 ──どうする!?
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