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アルベルト・バーンシュタインその3:アルベルトと百合の騎士
二度と電流プレイはしたくない
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俺、絶体絶命。
目の前には電撃を纏わせた剣を構える悪魔、もとい女騎士が二人。
一方で俺は股間に電撃を浴びせられてぶっ倒れたトラウマのせいで全身が震えて動けなくなっていた。
「死になさい」
ナタリアの死刑宣告が俺の緊張感を最大にする。やばい。
ナタリアが剣を真っ直ぐに構えてその切っ先を俺の腹に叩き入れようとした瞬間、1号の触手がそれを阻んだ。
「……あ?」
「全く、世話のかかるマスターね」
俺の周囲の空間が歪み、2号の子機──獣の口部分だけを模したような黄土色の飛行生物が現れて、レリカとナタリアの露出している太腿に食いつく。
「何よこれっ!?」
「ナタリア様っ!」
二人がそれを引き剥がすのに苦戦している間に、俺の背後に巨大な花が現れて蔦で俺の身体を持ち上げる。
「私の忠告を聞かないからですよぉ、マスター?」
持ち上げられた俺の身体は、円盤付きの銀色の球体──4号の上に乗せられる。
「あなたなら飛べるので大丈夫ですね?」
「うむ。任せるがよい」
浮かび上がる4号へとナタリアが切っ先を向ける。
「逃さない……〈ライトニング〉!」
「おっと」
閃光と共に雷撃が俺へと直進してくる。だが目前で黒い霧に阻まれて雷撃は消失。
「……あまり美味くない」
「偉いぞ霧!」
「ひ、光るなやめろ!」
「あっ、やめっ」
霧の援護を褒める4号だったが、いちいち光るせいで霧も花も若干、弱る。
「お、お前ら……」
俺はちょっと感動して涙ぐんでいた。こいつらは俺が動けないと知って、勝手に俺を守ってくれている。
そんなにマスター想いだったとは知らなかったぜ。
「みんな、マスターと一緒にいるのが好きなのよ」
俺の頭の上に寝そべる小竜──6号が言ってくる。
こいつらにここまでされちゃ、俺も震えてるわけにはいかねえな。
「花! 花粉出せ!」
「でも消されますよぉ?」
「いいからやれ!」
花が俺の指示に従って花粉を撒き散らす。吸い込めば多種多様な異常が発生する強烈なやつだ。
「くっ、何度も同じことを……〈クリアウィ」
「2号!」
「っ!?」
魔法で吹き消そうとするレリカに2号の子機をけしかける。ちょっとした詠唱が中断されて魔法の発動が止められる。
レリカが剣で飛び回る子機を叩き落とす。へしゃげた子機は魔力の燐光となって消滅。その間に花粉が充満していく。
「レリカ、私がやるわ!」
「そっちは1号だ!」
ナタリアが代わりに魔法を使おうとするが、1号の触手が迫り中断。しなる触手の群れを上手い具合に剣で捌ききっているが、魔法を使うほどの余裕はない。
かなり花粉が部屋中に回って視界が黄色がかってきた。それにしては効果が表れていない。
「あの人たち、体内で魔法が発動してますね」
「恒常発動か、鬱陶しいな」
花の感知能力が見えない魔法の存在を俺に教えてくる。
恒常発動型の魔法は常に魔力を消費し続ける代わりに常時発動し続ける魔法のことだ。今だったらおそらく、体内の異常を常に修復する類の魔法が発動しているのだろう。花粉の効き目が悪いわけだ。
「意外とめんどくせえな、正規の騎士様ってのは」
「この間の何だったかの……いせかいてんい? とやらの少年より苦戦しておるの」
2号に俺は首肯する。まともな手筋を多数持っている奴の相手は、単に身体能力が馬鹿高い奴よりも遥かに厄介だ。
剣術の技量もちゃんとあるせいで、ナタリアは剛力の1号の相手を、レリカは飛び回る2号の子機の相手を、しっかりとやれている。
あいつらを潰すにはもう少しこっちも手数が必要だ。
「俺様は?」
「恐らく光魔法も使ってくる。お前は大体のものは食えるが、光線なんかを直撃されると困る。それに、俺の守りもあるしな」
「あたし!」
「お前は駄目だ。かなり慎重にやらねえと肉塊とヤる羽目になる!」
霧と6号に答えながら俺は方法を考える。何とかあいつらをぶっ倒してひぃひぃ言わせてやらねえとならねえ。
といっても花は使えない。霧は防御に必要だし、6号は制御が難しい。4号は何をするにしても花と霧に悪影響が出る。1号と2号は前衛で忙しい。
う~~~~~~~~~~~ん。
子機がある程度潰されたせいで、2号の本体が出てきていた。頭部の鼻から上のない四脚獣が、壁を蹴って高速移動しながらレリカに襲いかかる。何度か爪と剣が打ち合いをした後、2号の胴体に剣が食い込む。
「痛いっ!」
屋内じゃいまいち2号の速度が生かせてない。あまり悩んでいる時間もなさそうだ。
一瞬でも動きを止められるのなら──よし、閃いた。
「花と霧は引っ込め!」
「守りがなくなるぞ、良いのか!?」
「構うな、死ななきゃ何とかなる!」
花と霧が魔力の燐光となって魔導書へと戻っていく。これで俺の盾がなくなった。
それを見たレリカが叫ぶ。
「やっぱり召喚時間には限度が……!」
「レリカ、私が時間を稼ぐからそのうちにあいつを!」
ナタリアが1号の触手を打ち返した後、2号に向かって突進をしかける。
自由となったレリカが俺へと切っ先を向ける。よし、かかった。俺は4号の上で立ち上がる。
「今度こそ死になさいっ! 〈ライトニング〉!!」
「どぉりゃぁああああああああっ!!」
相手の電撃に合わせて思いっきり相手に向かって跳躍。全力で魔力を両腕に集中させて身体の前で交差させる。
そこに電撃が直撃。死ぬほど痛いが我慢。腕を広げてそのままレリカの奴に激突。床に押し倒す。
「きゃあっ!?」
「レリカっ!?」
レリカの叫び声にナタリアが振り返る。そこに一瞬の隙が生まれた。
これで条件は揃った。レリカには俺がしがみついているし、ナタリアは振り返ったせいで動けない。
「今だ4号!」
「うむ、任せろ!」
銀色の球体から閃光が放たれ、光線がレリカとナタリアへ降り注ぐ。数条に分かれた光線が女騎士どもの脚を貫いて小さな風穴を開ける。
「あぁっ!!」
「ぐぁっ!?」
二人の悲鳴があがる。俺はごろごろと床を転がってレリカから離れる。
「よ、よぉし、これでいい……後は、任せた……」
息を荒くしながら最後の指示を出しておく。
両腕がちぎれそうなぐらいに痛い。電撃をまともに浴びたせいだ。袖はまくりたくねえな。怖くて見れねえ。
1号がナタリアの鎧を叩き壊し、2号が強靭な爪と顎でレリカの甲冑を引き剥がす。
こ、これで俺の勝ちだ、ざまあみろクソアマどもめ……。
目の前には電撃を纏わせた剣を構える悪魔、もとい女騎士が二人。
一方で俺は股間に電撃を浴びせられてぶっ倒れたトラウマのせいで全身が震えて動けなくなっていた。
「死になさい」
ナタリアの死刑宣告が俺の緊張感を最大にする。やばい。
ナタリアが剣を真っ直ぐに構えてその切っ先を俺の腹に叩き入れようとした瞬間、1号の触手がそれを阻んだ。
「……あ?」
「全く、世話のかかるマスターね」
俺の周囲の空間が歪み、2号の子機──獣の口部分だけを模したような黄土色の飛行生物が現れて、レリカとナタリアの露出している太腿に食いつく。
「何よこれっ!?」
「ナタリア様っ!」
二人がそれを引き剥がすのに苦戦している間に、俺の背後に巨大な花が現れて蔦で俺の身体を持ち上げる。
「私の忠告を聞かないからですよぉ、マスター?」
持ち上げられた俺の身体は、円盤付きの銀色の球体──4号の上に乗せられる。
「あなたなら飛べるので大丈夫ですね?」
「うむ。任せるがよい」
浮かび上がる4号へとナタリアが切っ先を向ける。
「逃さない……〈ライトニング〉!」
「おっと」
閃光と共に雷撃が俺へと直進してくる。だが目前で黒い霧に阻まれて雷撃は消失。
「……あまり美味くない」
「偉いぞ霧!」
「ひ、光るなやめろ!」
「あっ、やめっ」
霧の援護を褒める4号だったが、いちいち光るせいで霧も花も若干、弱る。
「お、お前ら……」
俺はちょっと感動して涙ぐんでいた。こいつらは俺が動けないと知って、勝手に俺を守ってくれている。
そんなにマスター想いだったとは知らなかったぜ。
「みんな、マスターと一緒にいるのが好きなのよ」
俺の頭の上に寝そべる小竜──6号が言ってくる。
こいつらにここまでされちゃ、俺も震えてるわけにはいかねえな。
「花! 花粉出せ!」
「でも消されますよぉ?」
「いいからやれ!」
花が俺の指示に従って花粉を撒き散らす。吸い込めば多種多様な異常が発生する強烈なやつだ。
「くっ、何度も同じことを……〈クリアウィ」
「2号!」
「っ!?」
魔法で吹き消そうとするレリカに2号の子機をけしかける。ちょっとした詠唱が中断されて魔法の発動が止められる。
レリカが剣で飛び回る子機を叩き落とす。へしゃげた子機は魔力の燐光となって消滅。その間に花粉が充満していく。
「レリカ、私がやるわ!」
「そっちは1号だ!」
ナタリアが代わりに魔法を使おうとするが、1号の触手が迫り中断。しなる触手の群れを上手い具合に剣で捌ききっているが、魔法を使うほどの余裕はない。
かなり花粉が部屋中に回って視界が黄色がかってきた。それにしては効果が表れていない。
「あの人たち、体内で魔法が発動してますね」
「恒常発動か、鬱陶しいな」
花の感知能力が見えない魔法の存在を俺に教えてくる。
恒常発動型の魔法は常に魔力を消費し続ける代わりに常時発動し続ける魔法のことだ。今だったらおそらく、体内の異常を常に修復する類の魔法が発動しているのだろう。花粉の効き目が悪いわけだ。
「意外とめんどくせえな、正規の騎士様ってのは」
「この間の何だったかの……いせかいてんい? とやらの少年より苦戦しておるの」
2号に俺は首肯する。まともな手筋を多数持っている奴の相手は、単に身体能力が馬鹿高い奴よりも遥かに厄介だ。
剣術の技量もちゃんとあるせいで、ナタリアは剛力の1号の相手を、レリカは飛び回る2号の子機の相手を、しっかりとやれている。
あいつらを潰すにはもう少しこっちも手数が必要だ。
「俺様は?」
「恐らく光魔法も使ってくる。お前は大体のものは食えるが、光線なんかを直撃されると困る。それに、俺の守りもあるしな」
「あたし!」
「お前は駄目だ。かなり慎重にやらねえと肉塊とヤる羽目になる!」
霧と6号に答えながら俺は方法を考える。何とかあいつらをぶっ倒してひぃひぃ言わせてやらねえとならねえ。
といっても花は使えない。霧は防御に必要だし、6号は制御が難しい。4号は何をするにしても花と霧に悪影響が出る。1号と2号は前衛で忙しい。
う~~~~~~~~~~~ん。
子機がある程度潰されたせいで、2号の本体が出てきていた。頭部の鼻から上のない四脚獣が、壁を蹴って高速移動しながらレリカに襲いかかる。何度か爪と剣が打ち合いをした後、2号の胴体に剣が食い込む。
「痛いっ!」
屋内じゃいまいち2号の速度が生かせてない。あまり悩んでいる時間もなさそうだ。
一瞬でも動きを止められるのなら──よし、閃いた。
「花と霧は引っ込め!」
「守りがなくなるぞ、良いのか!?」
「構うな、死ななきゃ何とかなる!」
花と霧が魔力の燐光となって魔導書へと戻っていく。これで俺の盾がなくなった。
それを見たレリカが叫ぶ。
「やっぱり召喚時間には限度が……!」
「レリカ、私が時間を稼ぐからそのうちにあいつを!」
ナタリアが1号の触手を打ち返した後、2号に向かって突進をしかける。
自由となったレリカが俺へと切っ先を向ける。よし、かかった。俺は4号の上で立ち上がる。
「今度こそ死になさいっ! 〈ライトニング〉!!」
「どぉりゃぁああああああああっ!!」
相手の電撃に合わせて思いっきり相手に向かって跳躍。全力で魔力を両腕に集中させて身体の前で交差させる。
そこに電撃が直撃。死ぬほど痛いが我慢。腕を広げてそのままレリカの奴に激突。床に押し倒す。
「きゃあっ!?」
「レリカっ!?」
レリカの叫び声にナタリアが振り返る。そこに一瞬の隙が生まれた。
これで条件は揃った。レリカには俺がしがみついているし、ナタリアは振り返ったせいで動けない。
「今だ4号!」
「うむ、任せろ!」
銀色の球体から閃光が放たれ、光線がレリカとナタリアへ降り注ぐ。数条に分かれた光線が女騎士どもの脚を貫いて小さな風穴を開ける。
「あぁっ!!」
「ぐぁっ!?」
二人の悲鳴があがる。俺はごろごろと床を転がってレリカから離れる。
「よ、よぉし、これでいい……後は、任せた……」
息を荒くしながら最後の指示を出しておく。
両腕がちぎれそうなぐらいに痛い。電撃をまともに浴びたせいだ。袖はまくりたくねえな。怖くて見れねえ。
1号がナタリアの鎧を叩き壊し、2号が強靭な爪と顎でレリカの甲冑を引き剥がす。
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