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アルベルト・バーンシュタインその5:アルベルト、7号を手に入れる
7号
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巨大な爆発かと思うほどの轟音が四度、響く。
太陽と雲は消え去り空は完全な黒に染まる。大地が脈動してその場にいた全員が地面に身体を叩きつけられた。
「一体、何が……?」
狼狽するバルチャーの顔が俺の気分を良くする。やっと表情を崩しやがったぜ。
一方の俺はひっくり返ってケツを上に向けた間抜けな態勢になってるが、そんなことはどうでもいい。こうなりゃ俺の勝ちだ。
6号の本体は巨大な竜だ。だが、ただでかいってわけじゃねえ。真下からじゃその全身が全く見えないほどのでかさだ。
四つの足は一つ一つが小さな街を一度に押しつぶせるほど巨大。塔を何重にもした要塞と見紛う脚が続き、広大な黒色の大地をそれが支える。鱗に装甲された陸地の先端からは山脈さえ砕く大蛇の尾。真反対からは同等の大きさの首が伸び祭殿の如き頭部を戴く。その切れ目には暗赤色の宝玉の眼球。下部では白色の列塔が覗き、隙間から暴風の吐息を巻き起こす。
もうとにかくでけえ。ちょっと動くだけで街も山も全部更地にできる。このレベルのでかさだから、ほとんどの状況でこいつは出したことがねえ。出せば勝つとか負けるとかそう言う次元じゃなく話が終わるから楽だが、こんなにでかいものをほいほい出すと軍やら何やらに目をつけられそうだから控えてる。
だが今日は別だ。ユラにはそれぐらいの価値がある。
ただもう一つ、でかい問題がある。
「あれー。マスター、どこー?」
6号が俺を見つけようと足を動かす。街の建物が次々に砂のように崩れていき、一歩動くごとに大地震が引き起こされる。
そう、こいつはでかすぎて俺が見えねえんだ! こいつからしたら俺はノミより小さいからな。
「ここだー! ここにいるから動くんじゃねえー!」
「どこー?」
足を僅かにずらしては街が崩壊。連動して尾が木々と地面を薙いで森が更地になっていき、戯れに咆哮しては爆音が衝撃波となって周辺を吹き飛ばす。み、耳がいてえ。
とにかくこいつはちょっと動くだけで災害になっちまう。さらに厄介なことにこいつ自身が自分のでかさを大して認識してない。今だってお散歩気分だ。
中身はどうもガキみたいなんだが、無邪気にも限界がある。
と、戦闘にはまともに使えなさそうだがこれだけ馬鹿げたものを出せばバルチャーだって出し抜けるって寸法だ。
度重なる地震で伏せているしかできないバルチャーを尻目に、俺は何とかユラに駆け寄って身体を抱える。
「ア、アルベルトさん!?」
「いいから逃げるぞ!」
続いて4号を召喚。銀色の球体上で魔法陣が足場となり、それに乗り込む。
「急いで6号の身体の上に行け!」
「うむ、任せよ」
全速力で移動して6号の身体の上に着地。頭の方に向かって叫ぶ。いや、別に叫ばなくても魔導書経由で聞こえるんだが、気分的に叫んでおく。
「背中に移ったぞ! 飛べっ!!」
「はーい!」
少女の声が答え、漆黒の大地の両端にある島みたいな大きさの翼が動き始める。
六つの翼が同時に真下へと振り下ろされ、衝撃音。上昇の勢いで俺は6号の背中に叩きつけられる。鱗のせいでいてえ。
二度、三度とそれを続けて俺たちは空の上へと移動することができた。
「おい2号。周り見てくれ」
ぶつけた頭を押さえながら2号の子機を飛ばして周囲の確認。
どうやらバルチャーはついてきていないようだった。こんなめちゃくちゃな状況じゃ当然だろうが。
ついでに真下の様子も見てみたが、6号が羽ばたいた衝撃で街どころか周囲の森まで完全に壊滅していた。
……流石にやりすぎたかもしれねえ。
「……やれやれだ」
俺は大きな溜息をついた。これでやっと一息つける。
「わぁ、わぁ! 凄いですよアルベルトさん! 空飛んでますよ!」
「見りゃ分かるっての」
ガキンチョは空が初めてらしく、はしゃいでいた。気楽でいいもんだ。
そう思っていたら今度はこっちを睨みつける。
「助けてくれたのは嬉しかったです……でも、あんな無茶しないでください!」
「んだよ、またその話か? 俺が何しようと俺の勝手だろぉが」
「本当にアルベルトさんは何をするにもめちゃくちゃです。これは僕がついていてあげないとダメですね……」
ユラが何かを考えながらわけのわからねえことを言っている。どうやらついてくるらしい。
何だか知らねえが好都合だ。
「これからは僕がアルベルトさんを助けてあげます。今日のお礼も兼ねて」
「おう。そのために必死こいてお前を助けたんだ。これからは俺にしっかり奉仕しろよ」
ユラは笑顔だった。笑うと中々、愛嬌がある。そういう方面でもこいつは稼げるかもしれねえ。
「わーい、7号だ7号だー!」
6号がはしゃいだ声を出す。
「なんだよ、7号って」
「人間じゃないんでしょ、その子?」
「わっちらが2号や6号と呼ばれておるなら、その子は7号じゃ」
「よろしくな、7号」
1号、2号と4号が俺に答える。なるほど、そういう理由か。
「よろしくお願いします! ……ところでこの子たちは何なんですか?」
俺の肩や頭の上に乗ってる小生物たちを見てユラが首を傾げた。
とりあえず、そこから説明してやるか。
「ねーねー、このまま飛んでていーい?」
「おう。久しぶりだからな、好きにしろ」
「わーい。ついでにマスターと交尾したーい」
「それはでかさ的に無理だって何度いやぁ分かるんだ!」
6号で空を飛びながら、俺はユラに色々と教えることにした。
太陽と雲は消え去り空は完全な黒に染まる。大地が脈動してその場にいた全員が地面に身体を叩きつけられた。
「一体、何が……?」
狼狽するバルチャーの顔が俺の気分を良くする。やっと表情を崩しやがったぜ。
一方の俺はひっくり返ってケツを上に向けた間抜けな態勢になってるが、そんなことはどうでもいい。こうなりゃ俺の勝ちだ。
6号の本体は巨大な竜だ。だが、ただでかいってわけじゃねえ。真下からじゃその全身が全く見えないほどのでかさだ。
四つの足は一つ一つが小さな街を一度に押しつぶせるほど巨大。塔を何重にもした要塞と見紛う脚が続き、広大な黒色の大地をそれが支える。鱗に装甲された陸地の先端からは山脈さえ砕く大蛇の尾。真反対からは同等の大きさの首が伸び祭殿の如き頭部を戴く。その切れ目には暗赤色の宝玉の眼球。下部では白色の列塔が覗き、隙間から暴風の吐息を巻き起こす。
もうとにかくでけえ。ちょっと動くだけで街も山も全部更地にできる。このレベルのでかさだから、ほとんどの状況でこいつは出したことがねえ。出せば勝つとか負けるとかそう言う次元じゃなく話が終わるから楽だが、こんなにでかいものをほいほい出すと軍やら何やらに目をつけられそうだから控えてる。
だが今日は別だ。ユラにはそれぐらいの価値がある。
ただもう一つ、でかい問題がある。
「あれー。マスター、どこー?」
6号が俺を見つけようと足を動かす。街の建物が次々に砂のように崩れていき、一歩動くごとに大地震が引き起こされる。
そう、こいつはでかすぎて俺が見えねえんだ! こいつからしたら俺はノミより小さいからな。
「ここだー! ここにいるから動くんじゃねえー!」
「どこー?」
足を僅かにずらしては街が崩壊。連動して尾が木々と地面を薙いで森が更地になっていき、戯れに咆哮しては爆音が衝撃波となって周辺を吹き飛ばす。み、耳がいてえ。
とにかくこいつはちょっと動くだけで災害になっちまう。さらに厄介なことにこいつ自身が自分のでかさを大して認識してない。今だってお散歩気分だ。
中身はどうもガキみたいなんだが、無邪気にも限界がある。
と、戦闘にはまともに使えなさそうだがこれだけ馬鹿げたものを出せばバルチャーだって出し抜けるって寸法だ。
度重なる地震で伏せているしかできないバルチャーを尻目に、俺は何とかユラに駆け寄って身体を抱える。
「ア、アルベルトさん!?」
「いいから逃げるぞ!」
続いて4号を召喚。銀色の球体上で魔法陣が足場となり、それに乗り込む。
「急いで6号の身体の上に行け!」
「うむ、任せよ」
全速力で移動して6号の身体の上に着地。頭の方に向かって叫ぶ。いや、別に叫ばなくても魔導書経由で聞こえるんだが、気分的に叫んでおく。
「背中に移ったぞ! 飛べっ!!」
「はーい!」
少女の声が答え、漆黒の大地の両端にある島みたいな大きさの翼が動き始める。
六つの翼が同時に真下へと振り下ろされ、衝撃音。上昇の勢いで俺は6号の背中に叩きつけられる。鱗のせいでいてえ。
二度、三度とそれを続けて俺たちは空の上へと移動することができた。
「おい2号。周り見てくれ」
ぶつけた頭を押さえながら2号の子機を飛ばして周囲の確認。
どうやらバルチャーはついてきていないようだった。こんなめちゃくちゃな状況じゃ当然だろうが。
ついでに真下の様子も見てみたが、6号が羽ばたいた衝撃で街どころか周囲の森まで完全に壊滅していた。
……流石にやりすぎたかもしれねえ。
「……やれやれだ」
俺は大きな溜息をついた。これでやっと一息つける。
「わぁ、わぁ! 凄いですよアルベルトさん! 空飛んでますよ!」
「見りゃ分かるっての」
ガキンチョは空が初めてらしく、はしゃいでいた。気楽でいいもんだ。
そう思っていたら今度はこっちを睨みつける。
「助けてくれたのは嬉しかったです……でも、あんな無茶しないでください!」
「んだよ、またその話か? 俺が何しようと俺の勝手だろぉが」
「本当にアルベルトさんは何をするにもめちゃくちゃです。これは僕がついていてあげないとダメですね……」
ユラが何かを考えながらわけのわからねえことを言っている。どうやらついてくるらしい。
何だか知らねえが好都合だ。
「これからは僕がアルベルトさんを助けてあげます。今日のお礼も兼ねて」
「おう。そのために必死こいてお前を助けたんだ。これからは俺にしっかり奉仕しろよ」
ユラは笑顔だった。笑うと中々、愛嬌がある。そういう方面でもこいつは稼げるかもしれねえ。
「わーい、7号だ7号だー!」
6号がはしゃいだ声を出す。
「なんだよ、7号って」
「人間じゃないんでしょ、その子?」
「わっちらが2号や6号と呼ばれておるなら、その子は7号じゃ」
「よろしくな、7号」
1号、2号と4号が俺に答える。なるほど、そういう理由か。
「よろしくお願いします! ……ところでこの子たちは何なんですか?」
俺の肩や頭の上に乗ってる小生物たちを見てユラが首を傾げた。
とりあえず、そこから説明してやるか。
「ねーねー、このまま飛んでていーい?」
「おう。久しぶりだからな、好きにしろ」
「わーい。ついでにマスターと交尾したーい」
「それはでかさ的に無理だって何度いやぁ分かるんだ!」
6号で空を飛びながら、俺はユラに色々と教えることにした。
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