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アルベルト・バーンシュタインその6:管理されて嬉しいのはあれだけ
しくじったって認めなければしくじりじゃない
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適当な服屋に入って報酬金を叩きつけて身なりを整え、領主のバカでかい屋敷へと向かう。
大仰な門が俺を出迎える。門番が俺に頭を下げて、俺のために門を開き、俺に向かって「どうぞお通りください」と言ってくる。これが名声の力か! 感動しちまうぜ。
普段は門番どころか酒屋のただのウェイトレスにさえ蔑まれてるこの俺がよ。仕事1つでこれなんだから世の中ちょろいな。
出迎えはメイドがやってくれた。若いメイドを期待したんだが出てきたのはババアだった。多分、メイド長だろう。ちゃんと若い女で接待しろよな、なってねえな。
無駄に踏み心地のいい絨毯を歩き、無意味に装飾の多い通路を歩く。壁にかかってる絵とかなんか置いてある壺とか高いんだろうが、何がいいのかはさっぱりだ。
ババアが扉に辿り着いてそれを俺のために開く(二度目だ)。そして俺はその中に丁寧に入っていく。
「おお、君がアルベルト君かね」
目の前には執務机に座る太ったおっさん。こいつが領主だろう。
「はい。私のような貴族でもない人間をご招待いただけるとは恐悦至極にございます」
とりあえず仰々しい挨拶をして頭を下げておく。多分、間違ってねえだろ。何か間違えて相手が怒ったとしても花の花粉を叩き込んで洗脳すりゃいい。召喚できる連中のうち、花と4号は精神操作ができるからお気楽なもんだ。
「勇者になるとかいうのはどうしたのよ」
1号の言葉は無視。今回はむかつくからではなく、こいつらの声が基本的に俺以外には聞こえていないからだ。人前で迂闊に返事をすると独り言を言う変な奴だと思われる。普段は全く気にしないが今はまずい。
勧められるままに派手なソファに座る。かなりふかふかだ。普段こいつらはこんなもの使ってんのか。そりゃ領地にいる連中が税金に対して何かとうるせえわけだ。わかるわかる、むかつくよな。俺は払ったことねえが。
対面のソファの中央におっさんと、それを挟んで2人が座る。
1人はおっさんの女房。ドレスで着飾ってはいるが年増なので可能な限り視界に入れねえことにする。
もう1人が多分だが娘。若くて美人だ。飾り気のない白色のドレスに小さなネックレスとイヤリング。黄金色の髪を結って纏めている。表情にはやや緊張がみえた。客を出迎えるのは初めてなのかもしれねえ。
こいつは中々の獲物だ。きっと下半身に客を迎えたこともないんだろう。是非ともそっちの方も初めての相手になりたいところだな、へへへ。
「どうかなされましたかな?」
「あ! いえ、何でも」
やっべ。つい顔に欲望が出ちまってたようだ。普段、感情を出さずに表情を隠すって行いが地平線の彼方にしか見えねえぐらい距離があるせいで顔が作れてねえ。ここにきて計画がご破産になっちまったら大怪我した意味がない。気をつけねえと。
なるべくきりっとした顔をする。俺は今は勇者だ。異世界からやってきたとかいう頭おかしいことを平気で言う、あの自称勇者どもだ。あいつらのような顔を作ればいいだけだ。
……ふと思ったが、あの頭おかしい連中を想像してもまともな顔なんて作れねえんじゃねえか? だって頭おかしいだろ異世界とか。でもあいつら勇者っぽい面するのは上手いし……んん?
「アルベルト様?」
「あ、はい!」
やばい、2度も失敗したようだ。予想だがあと1回失敗したらだめなような気がする。
「まあまあそんな緊張なさらずに。わたくしどもは貴方様に御礼を申し上げるためにここにお呼び立てしただけですから」
「は、ありがとうございます」
前言撤回。こいつら楽勝だわ。
そこからは報酬やら勲章やらの話がとんとん拍子に進み、何もかもが成功していった。
しかも話がいい感じに盛り上がったおかげで夜になり、領主が家に泊めてくれることになった。
「これはつまりうちの娘をどうぞってことだよな」
案内された客室のベッドに寝っ転がりながら俺は言う。
「ええ……勇者はそういうことしないんじゃないの?」
「バカ、逆だろ。勇者が姫と結婚するのは定番じゃねえか」
頭の上、は乗れないので枕に乗ってる人差し指サイズの小さい触手に返事をしてやる。1号の小さいバージョンだ。
今の俺は別に勇者じゃねえし相手は姫じゃねえが、領地で頑張ったやつと領主の娘でそれぞれ格落ちしていい感じだとは思う。
とにかく俺は紳士なので据え膳は必ず食う。これが先方に対する礼儀ってやつだ。
……待て。俺はまだしくじってないぞ。しくじってないしこれからしくじる話なんかしねえぞ。
どう考えたって俺は正しい。1号も2号も花も4号も影も6号も全員が全員で止めてきたが俺は間違ってない。
しくじってねえぞ。しくじってないったらしくじってない。おいこら聞いてんのか、おい。
とにかく何も間違ってないし全部正しいしどこもしくじってないが──俺はその後鉱山送りになった。なんでだよ。
大仰な門が俺を出迎える。門番が俺に頭を下げて、俺のために門を開き、俺に向かって「どうぞお通りください」と言ってくる。これが名声の力か! 感動しちまうぜ。
普段は門番どころか酒屋のただのウェイトレスにさえ蔑まれてるこの俺がよ。仕事1つでこれなんだから世の中ちょろいな。
出迎えはメイドがやってくれた。若いメイドを期待したんだが出てきたのはババアだった。多分、メイド長だろう。ちゃんと若い女で接待しろよな、なってねえな。
無駄に踏み心地のいい絨毯を歩き、無意味に装飾の多い通路を歩く。壁にかかってる絵とかなんか置いてある壺とか高いんだろうが、何がいいのかはさっぱりだ。
ババアが扉に辿り着いてそれを俺のために開く(二度目だ)。そして俺はその中に丁寧に入っていく。
「おお、君がアルベルト君かね」
目の前には執務机に座る太ったおっさん。こいつが領主だろう。
「はい。私のような貴族でもない人間をご招待いただけるとは恐悦至極にございます」
とりあえず仰々しい挨拶をして頭を下げておく。多分、間違ってねえだろ。何か間違えて相手が怒ったとしても花の花粉を叩き込んで洗脳すりゃいい。召喚できる連中のうち、花と4号は精神操作ができるからお気楽なもんだ。
「勇者になるとかいうのはどうしたのよ」
1号の言葉は無視。今回はむかつくからではなく、こいつらの声が基本的に俺以外には聞こえていないからだ。人前で迂闊に返事をすると独り言を言う変な奴だと思われる。普段は全く気にしないが今はまずい。
勧められるままに派手なソファに座る。かなりふかふかだ。普段こいつらはこんなもの使ってんのか。そりゃ領地にいる連中が税金に対して何かとうるせえわけだ。わかるわかる、むかつくよな。俺は払ったことねえが。
対面のソファの中央におっさんと、それを挟んで2人が座る。
1人はおっさんの女房。ドレスで着飾ってはいるが年増なので可能な限り視界に入れねえことにする。
もう1人が多分だが娘。若くて美人だ。飾り気のない白色のドレスに小さなネックレスとイヤリング。黄金色の髪を結って纏めている。表情にはやや緊張がみえた。客を出迎えるのは初めてなのかもしれねえ。
こいつは中々の獲物だ。きっと下半身に客を迎えたこともないんだろう。是非ともそっちの方も初めての相手になりたいところだな、へへへ。
「どうかなされましたかな?」
「あ! いえ、何でも」
やっべ。つい顔に欲望が出ちまってたようだ。普段、感情を出さずに表情を隠すって行いが地平線の彼方にしか見えねえぐらい距離があるせいで顔が作れてねえ。ここにきて計画がご破産になっちまったら大怪我した意味がない。気をつけねえと。
なるべくきりっとした顔をする。俺は今は勇者だ。異世界からやってきたとかいう頭おかしいことを平気で言う、あの自称勇者どもだ。あいつらのような顔を作ればいいだけだ。
……ふと思ったが、あの頭おかしい連中を想像してもまともな顔なんて作れねえんじゃねえか? だって頭おかしいだろ異世界とか。でもあいつら勇者っぽい面するのは上手いし……んん?
「アルベルト様?」
「あ、はい!」
やばい、2度も失敗したようだ。予想だがあと1回失敗したらだめなような気がする。
「まあまあそんな緊張なさらずに。わたくしどもは貴方様に御礼を申し上げるためにここにお呼び立てしただけですから」
「は、ありがとうございます」
前言撤回。こいつら楽勝だわ。
そこからは報酬やら勲章やらの話がとんとん拍子に進み、何もかもが成功していった。
しかも話がいい感じに盛り上がったおかげで夜になり、領主が家に泊めてくれることになった。
「これはつまりうちの娘をどうぞってことだよな」
案内された客室のベッドに寝っ転がりながら俺は言う。
「ええ……勇者はそういうことしないんじゃないの?」
「バカ、逆だろ。勇者が姫と結婚するのは定番じゃねえか」
頭の上、は乗れないので枕に乗ってる人差し指サイズの小さい触手に返事をしてやる。1号の小さいバージョンだ。
今の俺は別に勇者じゃねえし相手は姫じゃねえが、領地で頑張ったやつと領主の娘でそれぞれ格落ちしていい感じだとは思う。
とにかく俺は紳士なので据え膳は必ず食う。これが先方に対する礼儀ってやつだ。
……待て。俺はまだしくじってないぞ。しくじってないしこれからしくじる話なんかしねえぞ。
どう考えたって俺は正しい。1号も2号も花も4号も影も6号も全員が全員で止めてきたが俺は間違ってない。
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