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アルベルト・バーンシュタインその6:管理されて嬉しいのはあれだけ
クソガキが一番やべえかもしれねえ
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ユラについていきながら街の中へと戻る。まだこれといって騒ぎにはなっていないようだ。
なるべく路地裏を使いながら人目を避けて保管所へと近づく。保管所自体は壁に覆われているわけじゃないが、見張りの兵士が4人ほどいる。これをクソガキはどうしようっていうんだ?
擲弾砲をぶっ放そうものなら流石に兵士がわらわら出てきて囲まれちまう。まあ兵士どもが来る前に魔導書を回収しちまえばどうにでもなるが。ここで俺に違和感。
「あれ。お前、あの大砲どうした」
「もう使わないので置いてきました」
おいおい、じゃあマジで俺たちは丸腰じゃねえか。こいつどうする気なんだ。
ガキの見た目を利用して保管所の中がみたーい、とでも言えばもしかしたら入れるかもしれねえが。
「ここで大人しくしていてくださいね」
あれこれ考えている俺を無視してユラは普通に保管所に近づいていった。見張りの兵士どもに何やら手を向けるとそいつらがばたばたと倒れていった。
え、あいつ何してんの?
「アルベルトさん、急いで!」
呼ばれるままに俺はユラのところへ行き、ユラが兵士から回収した鍵で保管所に入る。
「お前、一体何したんだ?」
「眠らせました」
クソガキは簡単に答えやがった、と思ったら。
「彼らの血中のベンゾジアゼピンの濃度を上げて、更にプロポフォールを併用することでガンマアミノ酪酸受容体の機能を亢進させました。これによりビーゼット受容体がガンマアミノ酪酸受容体と共役しているのを利用してベンゾジアゼピンによりクロルチャネルの開口を促進することで細胞内のクロルマイナスを上昇させて」
次から次へとべらべら喋りだす。内容は全くこれっぽっちも分からねえ。面白くなさそうだから聞き流しておく。
それにしてもこいつ、指先1つでこんなことまでやりやがるのか。暗殺者になったら無敵じゃねえか。
そう思ったら俺の背中を冷や汗が伝った。全自動人間治癒マシーンお小言つきエディションとか全自動お小言マシーン治癒機能付きとかじゃなくて、実は純粋に人型殺戮マシーンなんじゃねえかこいつ。
余計なことを考えるのはよそう。クソガキがお喋りしている間に魔導書を探す。場所は感覚で分かってる。邪魔なものを放り投げて探す。あった。
「バルビツール酸を用いてもいいんですがこちらは直接クロルチャネルを開口する上に脳幹網様体に作用するために」
「おい見つかったぞ、いつまで独り言言ってんだ」
俺の指摘にユラは「アルベルトさんが聞いたんでしょ!」とおかんむり。
魔導書には封がしてあったので開けてやる、と。
「「「「「「マスター!!!!!!」」」」」」
俺の脳内で6種6様の声が響いた。
それと同時に頭の上に2つの感触。1つは柔らかい感じ。1号で指サイズの触手だ。もう1つは少し硬い6号。小型の竜だ。肩の上には獣の口部分だけのミニチュアである2号。胸ポケットには小さな花。俺の周囲を、光る球体である4号と黒い霧が飛び回る。
「心配したわよもう」「迎えに来るのが遅いのじゃ!」「あれだけ私たちが止めたのに夜這いに行くからぁ」「たまには吾輩たちの忠告も聞いたらどうだ」「光るやつと同意見なのは嫌だが俺様もそう思う」「うわーん寂しかったよー!!」
出てくるなり怒号の嵐。忠告を無視したあげく、一時とはいえ封印されたこいつらの怒りは相当なものだった。
「だーもう悪かったって。そんなに怒るなって」
「怒るに決まってるでしょ! 大体なんで僕から離れたんですかアルベルトさんは! 弱っちいくせに1人で何かしようとして僕がいないところで怪我したら僕が治してあげられないっていうのにすぐどっか行って失敗してすぐひどい目にあうっていうのに全然反省もしないで」
召喚物どもに話してたはずなのにユラが1人で6体分ぐらい怒っている。
「わかったわかった悪かったって!」
全くこれっぽっちも俺が悪いとは思わねえし悪いのはあのくそ領主とその娘だと思うが、実際こいつらが封印されてユラに手間をかけさせたのは事実なのでそこは謝っておく。というか謝らないと止まらねえ。
「あ、やっぱり7号が助けてくれたのね」「マスターは7号がおらんとダメじゃのう」「ちゃんと言うこと聞くんですよぉ」「何にせよ合流できたのはめでたいな!」「うっ、やめろ光るな眩しい」「あっ、あっ、やめてください眩しいですぅ……」「わーいわーい7号も一緒だー!」
「僕もみんなと再会できて安心しました!」
1号2号花4号霧花6号7号の順番で喋っている。俺抜きで楽しそうだ。
そういう俺もこいつらと合流できて安心しているし喜んでもいる。ユラの言うとおりとは言いたくはねえんだが、しかし俺は1人じゃほとんど何にもできねえ。
こいつらがいてこその俺だ。
よし、全員の友情や絆を確認したところで次だ。
「あのくそ領主をぶちのめして生意気なあの娘を襲いに行くぞっ!!」
「ダメに決まってるでしょ!!」
俺の意気揚々とした宣言は速攻でユラに却下された。
なるべく路地裏を使いながら人目を避けて保管所へと近づく。保管所自体は壁に覆われているわけじゃないが、見張りの兵士が4人ほどいる。これをクソガキはどうしようっていうんだ?
擲弾砲をぶっ放そうものなら流石に兵士がわらわら出てきて囲まれちまう。まあ兵士どもが来る前に魔導書を回収しちまえばどうにでもなるが。ここで俺に違和感。
「あれ。お前、あの大砲どうした」
「もう使わないので置いてきました」
おいおい、じゃあマジで俺たちは丸腰じゃねえか。こいつどうする気なんだ。
ガキの見た目を利用して保管所の中がみたーい、とでも言えばもしかしたら入れるかもしれねえが。
「ここで大人しくしていてくださいね」
あれこれ考えている俺を無視してユラは普通に保管所に近づいていった。見張りの兵士どもに何やら手を向けるとそいつらがばたばたと倒れていった。
え、あいつ何してんの?
「アルベルトさん、急いで!」
呼ばれるままに俺はユラのところへ行き、ユラが兵士から回収した鍵で保管所に入る。
「お前、一体何したんだ?」
「眠らせました」
クソガキは簡単に答えやがった、と思ったら。
「彼らの血中のベンゾジアゼピンの濃度を上げて、更にプロポフォールを併用することでガンマアミノ酪酸受容体の機能を亢進させました。これによりビーゼット受容体がガンマアミノ酪酸受容体と共役しているのを利用してベンゾジアゼピンによりクロルチャネルの開口を促進することで細胞内のクロルマイナスを上昇させて」
次から次へとべらべら喋りだす。内容は全くこれっぽっちも分からねえ。面白くなさそうだから聞き流しておく。
それにしてもこいつ、指先1つでこんなことまでやりやがるのか。暗殺者になったら無敵じゃねえか。
そう思ったら俺の背中を冷や汗が伝った。全自動人間治癒マシーンお小言つきエディションとか全自動お小言マシーン治癒機能付きとかじゃなくて、実は純粋に人型殺戮マシーンなんじゃねえかこいつ。
余計なことを考えるのはよそう。クソガキがお喋りしている間に魔導書を探す。場所は感覚で分かってる。邪魔なものを放り投げて探す。あった。
「バルビツール酸を用いてもいいんですがこちらは直接クロルチャネルを開口する上に脳幹網様体に作用するために」
「おい見つかったぞ、いつまで独り言言ってんだ」
俺の指摘にユラは「アルベルトさんが聞いたんでしょ!」とおかんむり。
魔導書には封がしてあったので開けてやる、と。
「「「「「「マスター!!!!!!」」」」」」
俺の脳内で6種6様の声が響いた。
それと同時に頭の上に2つの感触。1つは柔らかい感じ。1号で指サイズの触手だ。もう1つは少し硬い6号。小型の竜だ。肩の上には獣の口部分だけのミニチュアである2号。胸ポケットには小さな花。俺の周囲を、光る球体である4号と黒い霧が飛び回る。
「心配したわよもう」「迎えに来るのが遅いのじゃ!」「あれだけ私たちが止めたのに夜這いに行くからぁ」「たまには吾輩たちの忠告も聞いたらどうだ」「光るやつと同意見なのは嫌だが俺様もそう思う」「うわーん寂しかったよー!!」
出てくるなり怒号の嵐。忠告を無視したあげく、一時とはいえ封印されたこいつらの怒りは相当なものだった。
「だーもう悪かったって。そんなに怒るなって」
「怒るに決まってるでしょ! 大体なんで僕から離れたんですかアルベルトさんは! 弱っちいくせに1人で何かしようとして僕がいないところで怪我したら僕が治してあげられないっていうのにすぐどっか行って失敗してすぐひどい目にあうっていうのに全然反省もしないで」
召喚物どもに話してたはずなのにユラが1人で6体分ぐらい怒っている。
「わかったわかった悪かったって!」
全くこれっぽっちも俺が悪いとは思わねえし悪いのはあのくそ領主とその娘だと思うが、実際こいつらが封印されてユラに手間をかけさせたのは事実なのでそこは謝っておく。というか謝らないと止まらねえ。
「あ、やっぱり7号が助けてくれたのね」「マスターは7号がおらんとダメじゃのう」「ちゃんと言うこと聞くんですよぉ」「何にせよ合流できたのはめでたいな!」「うっ、やめろ光るな眩しい」「あっ、あっ、やめてください眩しいですぅ……」「わーいわーい7号も一緒だー!」
「僕もみんなと再会できて安心しました!」
1号2号花4号霧花6号7号の順番で喋っている。俺抜きで楽しそうだ。
そういう俺もこいつらと合流できて安心しているし喜んでもいる。ユラの言うとおりとは言いたくはねえんだが、しかし俺は1人じゃほとんど何にもできねえ。
こいつらがいてこその俺だ。
よし、全員の友情や絆を確認したところで次だ。
「あのくそ領主をぶちのめして生意気なあの娘を襲いに行くぞっ!!」
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俺の意気揚々とした宣言は速攻でユラに却下された。
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