クズだが強いし好き勝手やれる俺の話

じぇみにの片割れ

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アルベルト・バーンシュタインその7:地獄の1日

とにかく作戦決行

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 俺の言うことを文句を言わずに聞く忠実なるしもべどもは、文句を垂れながら俺の指示どおりに作戦を決行することになった。一文章中で矛盾したこと言うなって? 黙ってろ。
 2号の子機で獲物を追尾しつつ4号に乗った俺とユラがさらにその後を追いかける。しばらく追い続けて念の為、街から十分に離れたところで仕掛けることにした。

「あいつだけならまあ、俺も死なずに済むだろ」
「そこは僕がいるから安心してください。頭だけはちゃんと残してくださいね」

 俺の全身に震えが走る。頭部だけ残ってれば蘇生できるという治癒術師は頼もしいはずなんだが、こいつが言うとどうにもおっかなくて仕方ねえ。なんかこう、頭だけでも残ってれば頑張って助けます、じゃなくて、頭さえ残ってれば生き返らせられるからいいか、ってニュアンスに聞こえるんだよな。頭以外も大事にしよう。
 と、ユラの恐ろしさの話は置いといて、だ。ちゃんとやらないと殺されるかもしれねえが、肉弾戦じゃなく精神系で攻めれば楽勝だろ。

 それに最悪、殺されそうになったらユラが土下座とかして助けてくれるだろうし。俺の土下座はともかく、ユラみてえな顔から雰囲気から何から何までお人好しのショタが土下座して命乞いしてきたら、あんな女ころっといくだろ。そう考えたらこいつを使って油断させればいい気もしてきたが、どうせ演技できねえから無理か。

「よし、そろそろやるか。いいな、花、4号」
「はぁい」
「あの痛いのはもう嫌なので近づかないようにするのだ」

 精神汚染を行える連中に号令。いつもなら片方だけで事足りるのでどっちかだけにするが、今回は最初っから全力でいく。
 4号が獲物の上空付近に到着。何故か地上にいる女がこっちを振り向きやがった。勘良すぎだろ。

「あなたは昼間の!」
「頼むぞ花!」

 地上で魔法陣が展開されて巨大な一輪の花弁を持つ植物が召喚される。視線が上空の俺たちに向いていたおかげで召喚の邪魔をされなかったのは僥倖。
 すぐに花が花粉を撒き散らし始める。吸えば身体が痺れるきついやつだ。濃黄色の煙に見紛う量の花粉の中に女が覆われる、が。

「〈クリアウィンド〉!」

 いつぞやの女騎士と同じ魔法が発動。突如吹いた突風で花粉が吹き飛ばされていく。またかよ。じゃあ4号の催眠光でいくか。

「これ前と同じ流れじゃない?」
「うるせえな不吉なこと言うんじゃねえよ。嫌なこと思い出しちまったじゃねえか」

 1号が俺のトラウマを呼び起こす。前にも花⇨魔法で消される→4号で催眠の流れをやって女騎士を捕まえたことがあったが、酷い目に遭わされた。股間に電撃流すプレイは2度とごめんだ。

「吾輩としても破壊された雪辱を晴らしたいので全力で行くぞ!!」

 夜空で三角錐が強烈な光を放つ。この光を浴びた人間は4号の好きなように、つまり俺の好きなように操れるようになる便利な能力だ。

「あっ、眩しいですやめてくださいぃ……」

 難点は花と霧にダメージを与えること。特に花は役割が被ってて連携させたいのにこのせいで同時に使いにくい。いつも片方で済ませるのはこのせいだ。
 しおしおとしおれていく花は無視して女の動向を見る。

「おいどうだ、やったか?」
「ア、アルベルトさん、その台詞は」

 言ってから俺は慌てて口を押さえた。絶対に、何があっても絶対に結果を知るときに言ってはならない台詞を言っちまった!
 そのせいかどうか知らないが……いや、多分そのせいだろう。地上から女の姿が消えていて、すっかり鎧で全身武装した状態でそいつは俺たちの目の前にいた。跳躍してきてでかいランスを振り上げてるところだった。

「せいっ!!」

 ランスが振り下ろされて俺とユラの間を通り抜けて4号に激突。強烈な勢いで叩き落とされて俺たちごと地上に落下。4号が地面にぶっ刺さった衝撃で俺とユラが放り出される。そのまま俺は地面をごろごろと転がって停止。衝撃で全身が痛かったが急いで立ち上がってユラの状態を確認する。

「クソガキ生きてるか!!」
「はい!!」

 すぐに返事がきたから一安心。あいつが死ぬと全てがおじゃんだ。

「い、痛いのだ……」

 思いっきり強打された4号は三角錐の面から亀裂が入り拡大。端まで到達したせいで全体がばらばらに崩壊していき、青い粒子となって消えていった。
 だから高次元生命体を打撃して破壊できる兵器って一体なんなんだよ。誰がそんなもん作りやがったんだ。
 悪魔の兵器を持った殺人神が俺の前に立ちはだかる。俺の額から冷や汗が流れるがこんなところで諦められるかってんだ。

「花、蔦! 1号、触手!」
「やるだけやるけど……!」
「効果は期待しないでくださいねぇ」

 俺の周囲から漆黒の触手が、女の背後から花の蔦がそれぞれ高速で直進。前後からの挟撃となるが、頭上に構えたランスが超速度の回転でもってその両方を弾き飛ばす。

「2号! 霧!」
「わ、わっちか!? 牙も爪も立たぬぞ!」
「守護魔法とやらが食えるか、試してみるか!」

 俺の号令に困惑しながらも2号が現れて四脚の運動能力を生かして女に飛びかかる。横降りされたランスを2号が空中回転して無理やり回避。鎧に噛みつこうとしたがやはり弾かれる。
 その隙に黒い霧が女に纏わりつく。だが纏わりついているだけで何も起こらない。

「やはりこいつは全身どこも食える箇所がないぞ!」
「くそ、兜がないから洗脳できるってのは間違いだったか! だったら奥の手しかねえな!!」

 花の触手と2号が女の注意を引いている間に俺は魔導書を取り出して女に向けて開く。

「6号! 先っちょだけだぞ!」
「はーい!」

 少女の声が響き、魔導書から巨大な白く歪曲した何かが突撃。街を覆えるほどの巨体を持つ竜である6号の爪の先端だけを部分召喚した大質量攻撃だ。これを防げるやつなんざ殆どいねえ。
 直進するはずの爪が急停止。俺の手に恐怖の震えが走る。爪がどう考えても何かに受け止められてる。まさか……。
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