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第五章 求むるは何を欲するものなり

第百話 お前に俺のなにがわかる

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「一応念のために聞くけど、君はどうやってここへ」
「答えるつもりはない」
「そうだよねぇ。もう一つ聞いていいかな? ラーンの捕縛網はどこへ?」
「お前に答える事など何一つないよ。常闇のカイナ」
「それを何で知ってるかも聞きたいんだけどねえ。まぁいいや
捕獲してきこうか……な!」

 とてつもない速度で俺にせまり蹴りをいれる。籠手で防ぐと
奴はその足を蹴り込み、そのまま空中へ飛翔。
 
 回転しながら俺に剣を突きさそうとしてくる。
 ここは場所が悪い。バックステップすると追い詰められる。

 蛇籠手から奴を捕まえるよう指示をだす。

「むぅっ……それは」

 やつは剣を俺ではなく蛇の方へ向ける。

 俺はすかさず蛇佩楯で跳躍して奴の高さを上回ると
下に向けて消化液を噴射する。

 奴は着地と同時にバックステップをする。しめた! 
 そのまま飛翔し続け、天井に足をつけて天井を蹴り、奴との距離をつめる。
 
 この高さじゃ天井までは余裕で届く高さだ。
 そのままブロードソードをつきたてるが回避された。刹那奴の攻撃が来る。

「妖楼」
 
 奴のもう片方に装備された格闘爪を回避して中央で対峙する。
 ただの司会野郎じゃないと思ったが、さすがは常闇のカイナ……の幹部か? こいつは。

「参ったね。君の戦闘スタイルがまるで違う。
司会中ずっと見ていたんだけどね。なんだい、その能力は」
「……」

「しょうがないね。このままじゃやられちゃうか。
裏技を使おう」
「……はったりはよせよ。力の差は歴然だろ」
「そうだね、今のままだと……ね」

 そういうと奴は頭の上に何か乗せた。すると一気に巨大化して建物が破壊される。

 俺は慌ててマッドシールドを展開して、目の前の崩れる建物の隙間へ跳躍して外に出る。
危ねぇ。

 あれ、なん……だ? 見覚えのあるような姿に奴は変わった。
 ギルドグマに近いサイズ。でかい剣を一本。尻尾が生えている。
 目つきはキツネのようにするどく、牙もある。

「さぁ終焉のはじまりだよ」
「いや、終わるのはお前だよ。バーカ」
「何だって? この状況を見てまだ僕に勝てるとでも?」
「そりゃそうだろ。お前がぶち壊して出てきたおかげで
全員集合だよ」

 俺の横にメルザがいて、俺を掴んで離さない。
 ミリルがいて、真奈美もいた。ココットもパモもいる。

 きていたのかライラロもハーヴァルも怖いお姉さんもいる。
 師匠は連絡役で遅れてるのかな。
 ファナとニーメは領域で祈ってくれているだろう。

「ここでお前に勝たなきゃ、俺は何千回俺を殺しても足りない位自分を呪う」
「下等種族の人間如きが、すりつぶしておしまいだよ」
「人間……ねぇ。そう思ってた時もあったな。
メルザ、ちょっと支えててくれ。オペラモーヴ!」

「なっ 斬撃が見えなかった。なんだこの甚大なダメージは!?」

 あーやっぱりか。そうだとは思ったんだよな。

 アナライズも出来るだろ、どうせ。メルザの間近で使ったから身体やばいけど。
 幻薬を使っておこう。目も血だらけだ。メルザが拭いてくれる。

キャットマイルド(超暗鬼形態)

常闇のカイナの一員
暗鬼の狐と呼ばれる幹部の一人
ギル化しても意思を保つ
素早く動き獰猛で残忍


 この目の力は俺の力じゃないんだな。メルザと離れれば離れるほど弱くなる。

 近くにいればこれほど強いのか。主従関係にぴったりの力だな。ほんとうに。

「メルザ、心配かけてごめん。だが今はあいつを倒してからだ」
「ああ、ああ……わかった! 早く倒しちまおう!」
「ずるいですわ、メルザさんだけ! わたくしも心配したんですのよ」
「やっぱベルディスの弟子ってだけはあるわね、あんた。あれで生きてるとかどうなのよ。
本当に。けど、よかったわ。あんなベルディスの顔見せた罰は受けてもらうわよ!」

 そう言いながらライラロさんは特大の水竜を奴に向けてぶっ放す。
 
 この人やっぱ凄いわ。

「そいつ、動き素早いらしいんで気を付けてください。
今の斬撃でかなりダメージは与えたけど」

「ふざけるなよ。なんだあの赤い斬撃は! いいだろう、こっちも
斬撃を飛ばしてやる! 暗円の舞斬アンエンのブラッシュ!」

 やつはそういうと円を描くように大剣を振るい
俺たちに無数の斬撃を飛ばしてきた。範囲が円状で広い! 

「ヘインズの盾」

 ハーヴァルがさっと前に出てでかすぎるほどのシールドを張る。

「いやー、毎回盾にしかなってないな。こんなでかい剣もってるのに。お前さん生きてて
よかったな。ようやく傭兵になれるか?」
「すみません。そっちもちゃんと考えてましたから」

 ハーヴァルさんはにっと笑うと上を指す。俺は上空を見ると……。

「巨爆烈牙斧」

 厚さ四十メートル程の分厚い斬撃がマイルドキャットを襲う。
 何あれ、何それ。

「がああああああああああああ」

 奴は尋常じゃないダメージを追って苦しみだす。
 師匠はやっぱりとんでもない。

「俺ぁ微塵も心配しちゃいなかったけどな。元気そうだが
おめえなんか、弱くなってねえか? 
また小僧からやり直しだな、こりゃ」

 そこまでお見通しとは、流石です……けど新たな力も手に入れたんですよ。師匠! 

「メルザ、行こうか」
「ああ!」

 俺たちは最後を飾るべく、奴の前に出る。
 師匠の一撃をもろに食らった奴はもうふらふらだ。

「ほら、目の怪我は治してやったからな、オイテメェ。
死んで戻ってくる
とは上等じゃねえか、こら」

 本当怖いです。セフィアさん。

 メルザは杖を握り唱える。俺は蛇籠手に意識を集中させて技を振るう。
「燃刃斗!」
「プラネットフューリー!」

 燃え盛る巨大な剣と燃え盛る巨大隕石が重なり
奴を引き裂いて押しつぶした。
 
 やつは音もなく崩れ落ち、小さくなって倒れた。
 俺も意識が飛びそうだ。

「それじゃ倒れるだろしまらねえな全く」

 セフィアさんがすぐ回復してくれた。あぶねっ。

 メルザに支えながら俺は奴の近くまで行く。
 死んではいないようだ。

「こいつは俺たちが連れて行く。お前らはやることあんだろ」
 そういうと師匠たちはキャットマイルドを捕縛し
どこかへ連れて行った。

 俺たちだけが残る。あいつは何だったんだろうな。
 今はどうでもいいか。


「メルザ、ただいま」
「おかえりルイン、会いたかった。ずっと会いたかったぜ。ばか! ばか!」
「ああ、俺もだ」

 俺は無事戻って来れた。我が主のために。

 今はそれだけを嚙みしめていたかった。
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