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第二章 知令由学園 前編

第百七十二話 夜の戦い

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 ヘンテコな岩を過ぎてから、二時間程経っただろうか。
 俺たちは遠目に林が見える所まで来ていた。
 リルに空から確認してもらったが、都合よく小屋が何度もある筈もなく、困っていた。

「何処かで休まないとな。林まで出たらミドーを使って交代で休もう」
「そうだね。僕はまだ元気だよ。
林に着いたら僕が見張りをするから、二人はゆっくり休んでね」
「リルさん、本当優しいわね。ありがとう」

 カノンに言われて顔を赤くするリル。
 青春だ! 青春の丘……違う林は近いぞリル! ……と思っていたら
ターゲットに感知。今度はヘンテコな岩じゃない。明らかに動く何かだ。

「リル。前方に二匹。上空から頼む」
「ああ……あれはデスマンティス! まずいね。
この疲れた時に猛毒持ちだよ」
「一匹は私に任せて! その後しばらく動けなくなる。
リルさん、お願い!」

 そう言うとカノンは前に出る。俺より前に出るのは危ない! 
 慌ててデスマンティスを挑発するため、ゴブリンの騒ぎ立てるを使用した。
 デスマンティスは両方共俺の方を見る。

「っ! 急ぐわ! 
出ん出らりゅうば、出て来るばってん。
でん出られんけん、出て来んけん。
来ん来られんけん、来られられんけん。こーん来ん」

 クインとニーナがデスマンティスの一匹を囲みグルグルと回る。
 巨大な扉が現れてデスマンティスを中に引きずりこんだ!
 封印したのか……恐ろしい技だ。だが扉を抑えるのに
 クインとニーナは動けないようだ。
 封印に時間がかかるのか。

 だが、一匹封じてくれるだけでも十分助かる。
 俺はアイアンクラッシャーを放ち中距離でデスマンティスをけん制する。
 リルはカノンの方へ行き、カノンを守る形で俺の反対側へ立つ。

「妖赤星の針」

 無数の針をデスマンティスに飛ばすが、全て鎌部分で撃ち落される。
 決して遅くはない攻撃だが……強い。この大陸のモンスターが
 強いと言われるだけはある。
 奴は素早い動きで俺を攻撃してくる。

「妖楼!」

 貫通攻撃じゃなければ避けるのはたやすい! 

「赤星の小星」
「ギギイイイイイイイイイイ!」

 げ、一発当てても封印値三十かよ。
 カットラスで二撃与えてようやく五十。
 少し動きが遅くなったが持続時間は短い。
 あれをやるか……「バネジャンプ」


 俺は高く飛び上がり滑空した。
 蹴りは危ないのでそのままカットラスを突き刺した。
「赤星の矢・爆」

 ねじ込んだ部分から爆発させる。封印値が無事溜まったが
 おれも吹き飛ぶ。
 マッドシールドで受け身を取れるが少しダメージが残る。

「リル、そっちはどうだ!?」
「大丈夫、解除した後火炎で仕留めたよ!」

 流石二人がかりとはいえリルも強くなった。元はリルの方が強かったんだ。
 心配するまでもないな。

 だがカノンの技は相当消耗するようだ。
 ぐったりしているのをリルが支えている。
 無理もない。クインニーナになった上そこから技をかける。
 しばらくは休ませてやらないと。
 俺たちは急いで奇岩の海道を抜けて知床農林まで
辿り着く……だが! 

「くそ、もう夜な上、連続バトルかよ!」
「ごめん、さっきのデスマンティスでだいぶ草臥れてしまったかも」
「リルはカノンを守っててくれ! ここならミドーと一緒に戦える!」

 俺は蒼銀蛇リングからミドーを戦闘形態で呼ぶ。
「シュルー」
「頼むぜミドー! 相手はよりによって飛行するやつだ。
「あれはホークフレイムだね。運がない。こんな時に……」

 俺はゴブリンの騒ぎ立てるを再度使用した。
 夜で見づらいが相手は燃えているから明かりになる。
 炎を的確に俺に向けて放ってくるのを躱しつつ攻撃の
隙を伺う。
 ミドーも上空相手な上、炎に弱い。

「妖赤星の矢・速!」

 俺は速度特化型の矢へ切り替えて赤星を放つ。
 一匹に当たったが封印値はたったの五! 
二十発当てる頃には燃やされてる。

 ホークフレイムの炎攻撃を避けるスペースがない! 

「熱っ! 畜生っこのままだとじり貧だ」
「僕が……」
「駄目だリル! あいつを封印出来るようなんとかしてみせる! 
今はお前に出来た大切を守れ!」

 俺がそう言うとリルははっとなりカノンを見る。
 おまえは優しすぎる。特に俺には。
 相手は炎の鳥。水か氷の攻撃手段があればいいんだが……俺にはその術がない。
 何か、何かないのか? 燃やされた手がひりひりする。
 ……海星神とやらの庵に居た奴は俺に力をやるとか海底に来いとか言ってたな。
 頼む、出来てくれ。
「妖赤海星の矢レッドシースターナル・酸!」

 俺のカットラスから赤い海水の矢が放たれホークフレイムを一匹貫いた。
 出来た……イメージが湧いた。あんな場所に行ってなかったら思いもしなかった。
 さらに、イメージが引き金だったのか何が引き金だったのかわからない。
 突然ターフスキアー……ター君の技が頭をよぎった。

「氷塊のツララ」

 氷のツララが飛翔して残りのホークフレイムを串刺しにして落としていく。
「リル、いいぞ!」


 リルは、落ちて来たホークフレイムにジュミニをねじこみ封印させた。

「全く君は。突然とんでもない技を考えつくね。頭の中で閃いているのかい?」
「まぁそんなとこだろうな。無事でよかった……ミドー、しばらく安全確保を頼む……」
 俺は少しふらつきながらミドーに背を預けた。
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