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第三章 知令由学園 後編

第二百十三話 移り行く情勢

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 さすがに落ちてくるとき派手にやりすぎた。
 モンスターが迫ってくるのにターゲットが反応。封印の確認は後だ。
 先にみんなへ伝えよう。

「前方に三匹、左から四匹来る。何が来るかはわからないが、多分俺達を狙ってる」
「え? 僕には何も見えないよ? ……どどど、どうしよう。モンスターかな?」
「服が欲しいっしょ。この格好戦いづらい」
「参ったねぇ。わしは少し休みたいんじゃが」
「俺とドーグルで戦う。こんな事になるならレウスさんも連れてくればよかったな、全く」
「ぱみゅ!」
「パモ、また出て来たのか? 戦いたいって? 
二方面だと手が足りないが……うーん」
「わらも十分休んでいたのでまだまだ戦えるぞ。ちみは平気か?」
「ああ。まだまだ元気だよ。コラーダの扱いも少し慣れてきたが
ここからはアドレスで行く。封印も増やしたいし馴染ませたい」


 俺はアドレスからカットラスを引き抜き、身構える。

 封印したモンスターは多いが、プログレスに馴染んでいる
モンスターはだいたい置いてきている。とてもじゃないが持ち歩いていられない。

 今使用できるのはドーグル、イーファ、パモを除けばデュラハン後輩とデュラハン先輩
それにレッドスケルトンとター君くらいか。もしかしてジオの封印の影響か? 

 確証がないが無機質系のモンスターだけ効かなかったってことか。
 そうするとミドーも出せない。蛇籠手もだめか。
 トウマがめっちゃ可愛くなってる……と今はそれどころじゃない。

「前方のは魔吸鼠だよ! 気を付けて! 術は全部食べちゃう!」
「くそ、モンスターには詳しくない! ほかのやつの特徴も教えてくれ!」
「左の上空から来るのはバジリスクウィングじゃ! 爪に石化能力がある。
気を付けて戦うんじゃ!」
「仕方ない、パモも手伝ってくれ! 俺と左のを! 
ベルディア、ドーグルは正面からくる魔吸鼠ってやつをたのむ! 
イビン、婆さんを守ってくれ!」
「やってやるっしょ。私一人でも」
「わぁー、死んじゃうよぉ。魔物がいっぱいくるよぉ」
「わらも外に出て戦う。油断するな」
「ぱーみゅ!」

 俺はバジリスクウィングとやらが来る方に構える。
 相手は四匹、爪に石化。最初から全力でいかないとまずい。
 
 上空を見やるとニワトリみたいなやつが飛来してくる。
 あれか……まずは先制!

「妖赤星の矢・速!」
「ギュアアアア!」

 最速の矢がバジリスクウイングの一匹にあたる。
 封印値は二十。そこまで固い相手じゃない。

 俺を獲物として見定めた四匹はこちらへ向かってくる。

「ぱーみゅ!」

 パモの幻術、氷斗がバジリスクウイングを次々と攻撃していく。
 氷を嫌ってるのか? 相手の動きが急に悪くなる。

「なら……氷塊のツララ!」
「ギュアー!」

 一匹にもろに突き刺さり、封印出来た。弱点は氷で間違いない! 

「パモ、そのまま氷斗で攻撃してくれ! ……氷塊のツララ!」

 二匹目を撃墜。
 俺とパモでバジリスクウイングを片付けてる頃、ベルディアも戦闘を開始したようだ。
 少しベルディアの方を見ると……一匹一匹がでかい! あれが魔吸鼠か。
 余裕で倒せるってほど小さくない。加勢に行かないと。

「ぱーみゅ!」
「ギュアアー!」

 パモが三匹目を倒したが、うち一匹が婆さんの方へ向かう。

「剣戒! コラーダの一振り!」

 俺はコラーダを出してバジリスクウイングを攻撃した……が剣が消える! 
 使いすぎたか……こんな時に! 

「うわあーーー! 魔物がくるよぅ、怖いよー!」
「やれやれ、全く仕方ないねぇ。
……雄大なる魔の世界より這い出て力となれ。
流水の矛となりかの者を打ち滅ぼせ。
ウォーターランサー!」
「ギュアー!」
「氷塊のツララ! すまない婆さん! イビン! 怖がるな! 守って見せろ! 
年寄り一人守れず生きていくつもりか!」
「無理だよぉ、死んじゃうよぉ!」
「ベルディア、加勢に行く! ……くそ、この大陸は相変わらず容赦ない。追加で右から……七はくる!」

 容赦ない連続バトル。俺とパモでやるしかない。
 ベルディアも奮闘しているが、武器がない。超撃と格闘で巨体鼠を相手にしている。

「ベルディア! 俺はデュラハンの技剣で戦うからこれを使え!」
「助かるっしょ! こいつ打撃全然きかない!」
「ブシュウーーー!」
「鼠ならチュウチュウ言え! 頼むぜデュラハン先輩!」

 ようやく出番が来たデュラハン先輩。剣攻撃は正直微妙だと思ったが
役に立つときがきた。
 だが実剣と違って使いづらい! あたらない! 
 プログレスウェポンやコラーダの強さに慣れすぎたか。師匠にどやされるな。

「念動力、重!」
「赤星の……いや駄目なんだった。戦い辛い!」
「無理っしょ! この武器私には使えないから返す!」
「プログレスウェポンじゃだめか……イビン! 何か武器をもっていないか?」
「ナイフならあるよ! けど使った事ないし」
「それ貸すっしょ! 早く!」

 カットラスを返してもらい一閃して一匹の魔吸鼠をしとめた。
 まだ二匹いるうえ七匹何かが迫っている。

「パモ! ドーグル! 別の場所から七匹くる! そっちを頼む! ベルディアもだ!」
「ぱみゅ!」
「わかった」
「任せるっしょ!」

「ブシュウーーー」
「ぐっ くそ、巨体の割にこいつ動きも速い!」

 さっき着地したときに痛めた足の影響で高い跳躍は危険か。
 ター君の氷塊のツララは術じゃなさそうなので効くかもしれないが、技を連発しすぎた。

 仕方ない! やってみるか! 

「試してみろって事だろ、ジオ! 吸えるもんなら吸ってみな! 円月輪・海水!」

 俺は思い切り円月輪を投擲した。
 刃に薄く海水を纏わせるイメージ。すると円月輪の刃部分に
水が広がり、二メートル程の大きさで正面を切り裂いた! 

「ブシュウー!」

 二匹同時に真っ二つにして円月輪が周りを切り裂き
元の形で戻ってくる。
 貰いものにしちゃとんでもない破壊力だよ、全く。

「こっちは片付いた!今行……おいベルディア! ドーグル! 
しっかりしろ!」

 二人とも吹き飛ばされかなりのダメージを負っている。
 婆さんは術を使いすぎたのか、昏睡してしまっているようだ。

「おしまいだよぉ! ブルーリーベアーが七匹もいるよぉ!」
「イビン! 婆さんを連れて逃げろ! 二人は俺が助ける!」
「グガアアアアアア!」
「さわぎたて……だめだ、使えない! 頼む! 剣戒!」

 コラーダで一閃してベルディアとドーグルに迫るブルーリーベアーを切り裂いた。
 封印に吸収される。
 だがまだ六匹もいる。急いで駆けつけてドーグルを封印にしまい
ベルディアを担ぎ上げる。

「イビン! 早く逃げろぉーーー!」
「足がすくんで、動けないよおーーーー!」

 俺は急いでイビンの前へ行き、カットラスでブルーリーベアーをけん制する。

「ぼ、僕なんて置いて逃げればいいのになんで」
「ふざけるな、目の前で襲われそうなやつを見捨てて逃げれるか! 立て! 
俺達が落ちるのを助けてくれた婆さんを救え! ベルディアを今度こそ助けてみせろ! 行けぇーー!」
「わぁああああーーーーーー! 動け足ぃーーー! うわああー---!」
「アイアンクラッシャー! 俺を狙え! かかってこい!」
「ぱみゅ!」
「ぐっ、すまないルイン。油断した」
「パモ、封印に入れ! ドーグルも出てこなくていい!
赤星の小星!」
「グガアアアアアア!」
「がはっ くそ、ピンチだぞこれは……」

 一匹封印して残り四匹。やれない数じゃない! 
 
 離れたところでイビンの声が聞こえる。

「うわああーーー! 囲まれたよぉ! 逃げられないよぅ」
「なっ!? まじかよ……」
 
 新手に反応。数は三十を超える。到底逃げられない。
 せめてモンスターが封印されてなければ逃げる術もあるのに! 

 試すしかない。身体がどうなろうとやるしかない。

「おいイビン。ベルディアも頼む」

 ブルーリーベアーをカットラスで一閃して退け、イビンの元へ跳躍してベルディアを預ける。

「俺がどう変わろうと、怖がるな。お前たちに危害は加えない。必ず生きて戻る。それまでメルザって子を探して守ってくれ」
「えっ? 何言ってるの? どういう……」

【妖真化】

「グッ! 意識が刈り取られる……ううっガアアアアアーーー! ……」
「ひっ……」

「……妖赤海星の津波……頼んだ……ぞ」
「ルイン、ルイーン!」

 マァヤ、ベルディアはイビンに担がれそのまま浅い津波に流されていった。
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