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第三章 知令由学園 後編

第二百十八話 友の異変

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 リルはサラ達に頼まれた荷物を置き、ルーンの町で一休みしていた。
 ベルローゼにデートの邪魔をされて少しへこんでいた。


 リルは純粋な妖魔。その身に宿すモンスターの影響により、力が大きく増減する。

 さらに、アルカーンの造ったジュミニ……プログレスウェポンの効果により、ベルータスに
捕らわれる前の力を取り戻しつつあった。

 連日ぼーっと過ごすのにも飽きてきた頃……フェドラートより受け取っていた位置を示す
魔道具を見ると、ルインとベルディアの位置がおかしい事に気づく。

 慌てて知令由学園方面へ出て、シャドウムーブを使用し移動。その後フルフライトで移動し始める。

「ここからならルインの方が近い。一体何でこんな所に? 
おかしい、空中に浮かび上がってるのか?」

 ようやく近づいた……が、ルインはボロボロで変な乗り物に乗る集団へ捕まっていた。 

「君たち。僕の友達をどうするつもりだい?」
「もう一人いやがった!? どうしやす?」
「おいおい、妖魔一人でも厄介事極まりないってのにもう一人仲間の妖魔がいるのか? 
冗談じゃねぇ。ボロボロで意識なきゃ、真化してたこいつ一人でも全滅するとこだったぞ! おい! 
お前の仲間を殺すつもりはねぇ! 交渉だ!」
「彼は無事なんだね。よかったね、君ら、首の皮は繋がったよ。彼をまず返せ。
殺すかどうかはその後決める」
「……! ちっ、ダメだこいつも真化しやがる個体に違いねぇ! 渡せ! 丁重にだ!」
「へ、へい! ほら、返すぜ。やったのは俺達じゃねぇ」
「……話を聞かせてくれるかい? それと回復出来ないか? 頼む」
「ならあんた、俺たちのアジトへ来い。仕事の目標はあんたらじゃないからな」
「……わかった。ただ僕に噓はつかない方がいい。念通が使えるからね。噓は見抜ける」
「……ああ。そんなことはしねえ。お前、そいつの事が余程大事なんだな。
俺にも大切に思う人がいるからよ。だからそんな顔すんなよ。安心しろ。
連れが必ず治してくれるからよ」
「ああ。僕の命の恩人で、もうこの世の誰よりも大切になってしまった友達だよ。
彼が死ねば僕も死ぬ。僕が死ねば彼も死ぬ」
「そうか……俺のヴァイスに乗せてやる! 特別だぞ、捕まりな!」
「君は女性なのに女性らしくない喋り方をするね。どこかの誰かみたいだな」
「はん。こちとら荒稼業なもんでね。飛ばすぞ野郎ども!」
『おう!』

 リルを乗せたヴァイス……ルクシールは高速で移動し始めた。
「俺の名前はルシアだ。お前は?」
「リルカーン。フェルス皇国の妖魔だ。こっちはルイン。
僕らを捉えれば
フェルス皇国が黙っていない」
「恐ろしいねぇ。俺らの情報だと地底にある国だな」
「へぇ。人間が良く知っているね。あまり普通の人間が好きじゃないんだけど」
「光陽族だ。ただの人間じゃねぇよ。ルクシールは俺らにしか扱えねえ」
「そうか、悪かったね。僕もまだまだ人に言えたもんじゃない。それより
何でルインを?」
「言ったろ? そいつじゃない。そいつの中にいる者に用事があるのさ」
「……もしかして君ら、常闇のカイナか? ライデンの手の者か?」
「……どっちもちげえがやはり当たりだな。部下が水珠の中に青銀色のスライムを見たって
言っててな。確証はなかったが、王様が青銀スライムに変えられたって
情報を仕入れたんだがよ」
「イーファを外に出したのか。きっと彼の事だ、人助けか何かのためだろうな」
「それで常闇のカイナかって聞こうとしたのはこっちだぜ。
青銀スライムを連れ去ったのは常闇のカイナって情報だった」
「彼はイーファが常闇のスライムに捕まってるところを助けたんだ。
そして匿いつつ元に戻す方法を探してた。ライラロさんとベルディスさんが……」
「おっと二人とも知り合いかよ。なら話がはええ。あんたらと俺らは味方だ。
こりゃ褒章が増えそうだぜ。いっそ下着を……」
「どういうことだい? それにルインがこうなった理由を聞きたいんだが」
「俺らが着いた頃にはひでぇ状態だった。
おびただしい数のモンスターに襲われたんだろう。
死体はゆうに百を超えてた。
ちなみにここから離れた場所に何人かいやがったから、そいつらもアジトに連行中だ」
「そうか、それならベルディアも平気だね」
「やっぱそっちも仲間かよ。いやっふぅ! 報酬さらに増量だぜぇ! キス位いけるだろ、こりゃもう!」
「……よくわからないけど、とにかく無事でよかったよ……ふう」
「ところでお前、さっき真化しようとしてただろ。制御できるのか?」
「いや、多分出来ないね。アルカーンやフェドラートとは違って真化すればただじゃすまない」
「おいおい物騒だな。早めに止めてよかったぜ……さぁもうじき
アジトだ、しっかり捕まれよ!」

 ヴァイスは風を切り、建物が乱立する場所へ降りていった。
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