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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百五十六話 知令由城入口

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「おいジオとやら。命令だから一緒に行ってやるが出来る限り早くフェルドナージュ様の元へ戻りたい」
「そうは言ってもねぇ……そう簡単に円陣の城に入れるかどうか。見てよ、あのモンスター」
「空間の中に百体ほどこちらもモンスターを作成した。あれらをぶつけるぞ」

 円陣の都は既にモンスターで溢れていた。町民はどこにいったのかわからないが見当たらない。
 明らかに異常な風景に、ジオは心を痛めていた。自分の国がこのような惨状になるとは。
 この都は円で城を囲むような作りになっており、中央の城には深い堀があり、一本の桟橋を使わないと
城内へは入れない。それに城内へ入った所で町がこの惨状。

 もはや町ではなくモンスターの巣窟。町民がもしモンスターに変えられているだけであるなら
傷つけたくはない……そう思案して、城へ潜伏する手立てを考える。

「ここはやはり潜入したい。アルカーン殿。それは少し待ってもらえないかい? 僕が潜入してくるから」
「よかろう。ならば俺はここで時計を作るとしよう」
「緊張感の欠片もないねぇ? まぁいいけど。合図出したらなるべくモンスターと戦わずに来て欲しいな」
「……可能といえば可能だ。いだろう。だがベルローゼの調べでは、この中にベルータスを見たという
報告もある。移動牢にいるはずだが十分注意しろ」
「そんなに強いなら手合わせしてみたいんだけどねぇ。気を付けていってくるよ」
「これを貸してやる。終わったらちゃんと返せ」
「これは……アーティファクトの剣? いいのかい?」
「ルインより相談を受けた。信用なるまでは貸すだけだ。俺の意思でこちらへ戻す事が出来る」
「そうだねぇ、まずはしっかり信用確保しないと、国交も開けないか。それじゃありがたく借りておくよ」


 剣を受け取ると、ジオは自らの瞬発力、跳躍力を活かしてなんなく城へと入って見せる。
 よくこうして城を抜けだしていたので、彼の身体能力であれば造作もない。

 円陣の城内はとても広く、要所要所に罠などが仕掛けられているが、モンスターはそれらを全て避けて
いる。それを見てジオはほぼ確信した。これらは元兵士。全てモンスターに変えられたのだと。
 冷や汗が落ちる。これほど大掛かりにモンスターへ変異するなど人間にはおおよそ不可能。
 神の力において他ならない。

 覚悟を決めて城内に入ったその時だった。

「おいおい、円陣の都の王子じゃねえか。ようこそ俺たちの城へ。クク、王子を殺すってのも
たまらねえんだろうなぁ」
「……君は誰だい? 相当やるようだけどねぇ。この瞬剣のジオにかなうとでも?」
「いいぜ、名乗っても。常闇のカイナ最大幹部の一人、常桂馬ジョウケイのイポティス。
踏みにじり、ぐちゃぐちゃにしてやるぜぇ……」
「僕は瞬剣のジオ。王子でも何でもない、国さえ救えない無能な凡人さ……」

 イポティスは頭に何か乗せると、大きく変身する。それは四足の真っ黒な馬となりジオを襲う! 

「速いねぇ。速度で負けるわけにはいかない……瞬剣! 微塵斬改!」
「効かないねぇ……相当な威力だろうけどな!」
「グッ……ばかな。微塵斬改が完全に入ったはずなのに……」

 凄まじい速度で上下左右を移動する黒馬にジオは防戦一方となる。
 この瞬剣ともあろうものが……だが、攻撃の手を加え続けなければ! 

「瞬剣! 無明連斬!」
「ちっ、なんつー連撃かましやがる。こんな使い手初めてみやがるぜ。大したもんだ」
「うぐっ、これでも仕留められないとは。トウヤ以来の強敵だねぇ」

 剣を下段構えに斬撃を二十程飛ばしてけん制する。素早い左右へのステップで華麗に躱す黒馬。

「そこだ! 瞬剣! 連刃絶命斬!」
「ちっ また連続技かよ。一撃で仕留められる技じゃねえと意味はね……」
「はい、お終いだよ。瞬剣!」
「なっ……ぜ」
「自分の状態に気付かないのは、馬の目の位置のせいかねぇ。僕が狙ってたのは背中だから」 

 黒馬はジオの瞬剣により、真っ二つに切り裂かれた。
 馬はその形状から、自分の体を確認し辛いにも関わらず、背中を攻撃しやすい。
 その位置に集中的に小さい傷を負わせていた。それだけではとうてい勝てないが……城内に突入する
少し前だった。



 ――――

「言い忘れていたが」
「うわぁ! 剣が喋った!」
「ふっ、そんなに驚くとやり甲斐が増すというものだ」
「アルカーン殿!? 驚かさないでほしいねぇ?」
「貴様のその剣には、斬りつけた対象の行動を、斬った数だけ遅くする効果が付与されている。
有難く使え」
「へぇ。それは僕の瞬剣と相性がいいねぇ」
「そうだな。あいつはうまく使いこなせなかったようだ。相性の問題だろう。
それと言い忘れていたが」
「まだ忘れてるのかい?」
「その剣で斬った対象の防御力を下げていく。有難く使え」
「それも僕と相性が抜群だねぇ」
「それと言い忘れていたが」
「……あんた、わざとやってないかい?」
「失礼な。その剣で戦った内容は俺へと伝わり、俺をさらに強くする。存分に戦え」
「……恐れ入ったよアルカーン殿。では行ってくるかねぇ」


 いつも通り言い忘れを連発したアルカーン。その武器の力により大きなアドバンテージを取り
常闇のカイナ最大幹部クラスの一人を撃退した。

「入口でこれとは参ったねぇ。この瞬剣のジオともあろうものが、この武器が無ければ
負けていたかもしれない。奥にはもっとやばいのがいるってことかねぇ。
やはりアルカーン殿を呼ぶべきだ」

 一度外へ出て、アルカーンへ合図を送り待機するジオ。
 奥にいるのは父親なのか。或いは……。
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