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第三章 舞踏会と武闘会

第三百七十四話 もう一柱の絶対神 スキアラ

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「スキアラよ。そろそろ出てこないかい? ずっと見守っていたのだろう」

 空間に歪みが生じて突如、神々しい光を放つ存在が現れる。
 非の打ち所の無い容姿端麗な外見。

「汝らは身勝手だ。構築した神殿を好き勝手つかいおる」
「君なら好きなだけ神殿を構築できるだろう」
「そういう話ではない。今回守護者の選定に失敗した。これは一体どういうことか。
なぜ彼はバラムになっておらぬのだ」
「彼の存在がバラム以上の存在だからだよ。本来であれば彼を取り込み、新たなブレアリア・ディーン
として神剣の守護者となるよう、永劫ティソーナを封印し続けられるように改変したのだろう? 
それはもうやめにすべきだろうね」
「なぜだ。あれらが二剣揃い、真の力を発すればそれは恐ろしい力となる。紫電並みにだぞ」
「彼を見定めた。私は彼に託してみる事にしたんだ」
「つまりティソーナの所持者を神兵にすると?」
「いいや。今のままでいい。それで太刀打ちしてもらうつもりだよ」
「理解できぬ。イネービュの庵を出た後、始末するつもりであった」
「それは困るね。やめてもらえるかな」
「汝は本当に身勝手だ。条件次第では聞こう。それにディーンの件も飲んでやる」
「へぇ。君にしては随分と珍しいね。なんだろうか」
「我が神兵たちの相手をするものがおらぬ。そちらにいる人の子を訓練兵として提供してほしい。
安心しろ、身柄や寝食は保障しよう」
「……それは人の子らに確認が必要だ。私の一存では決められないが……そうだね、彼と、彼……彼女
辺りはついていくだろう。ルインに負けないために。これはバトルロイヤルの幅を拡大しないと
いけないかもしれないね」

 少しイネービュは思案すると、再度スキアラに向き合う。

「先の闘いは我が神兵たちにも見せていた。実に熱狂していたようだ。あれに参加したいと申す
者もいるだろうな」
「ならば八人のバトルロイヤルと言わず、数十人規模のバトルロイヤルとなるよう改めて
構築しようか」
「それはいいとしてだ。タルタロスの事は聞いたか」
「ああ。黒曜の剣を求めた争いにより大分忙しいようだね」
「そのタルタロスの許へ攻め入っている者がいるのは?」
「知っているよ。実に策士だね。しかしベオルブイーターをかいくぐれるものだろうか」
「これを見よ」
「これは……地の底を完全改変したのか。大した力を身に着けたようだね。彼の子孫たちは」
「汝はなぜそこまで悠長なのだ。ネウスーフォが黙っておるとは思えぬ」
「このイネービュがネウスーフォを苦手なのは知っているだろう?」
「汝は成り行きを見守る……か。まぁよい。ではな」
「ああ。訓練に向かう者は募ってから向かわせよう」

 ふっといなくなるスキアラ。突然の別神訪問に全員硬直していた。

「おや、ようやく起きたようだね。聞いていたのかいベルディスそれにライラロよ」
「……俺を連れて行け。師匠としてのメンツがたたねぇ」
「わ、私も行くわ! いやよ離れるのなんて! 絶対に行くか……」
「だめだ、邪魔すんじゃねえライラロ!」
「なんで、なんでそんな酷い事いうのよ。ベルディスと私は……」
「妻だってんなら俺の帰りを待ちやがれ。それ位できねえってのか?」
「妻……そう、私は妻なのよね。妻なんだわ! 夫の帰りを待つ妻……これだわ!」
「よし、うまくいった」
「何か言った? ベルディスぅ」
「近寄るんじゃねえ! 噛み殺すぞ!」
「出かける前のチュー? やだぁ、みんな見てるわ! でもいいわよー!」
「ちょ、バカやめやがれ!」
「あー、といいかい二人共」
「べるでぃすぅー」
「あーーーー!」

 イネービュを完全に無視していちゃつく二人。回復した二人を温かい目で見守るハーヴァルとセフィア。

「これが人の子らの愛の証というやつなんだね。さてベルディスにライラロよ。君ら二人共神話級
アーティファクトを未所持だ。そのままルインと戦いを共にすれば実力差が離れてしまうだろう。
それはコラーダの一撃をもらった君なら理解できるね」
「けっ。いやな言い方をしやがるがその通りだ。効いたぜありゃよ。あの形態を一撃で貫通しやがるとは」
「うそ……信じられない。ベルディス野生化したの? 見たかったわぁ……なんで起こさないのよ
ハーヴァル!」
「俺かよ! はぁ……こっちもやられたんだよまったく」
「いいかいライラロ。話を続けるよ? ベルディスへはチャクの斧を、ライラロにはアンキーレを授ける。
それぞれについて説明しよう。まずチャクの斧。これは天候を一時的に操る力がある。
よからぬ者が使えば悪く使用もできる。君なら問題ないと確信した。戦いにしか興味がないようだしね。
アンキーレは十一の盾を構築する。それは本来、あらゆる天候災害を防ぐマールスの盾だ。
君の額にある美しいユニコーンの角へ装着されるだろう」
「おいおい、そんなもん俺にあたえちまっていいってのか?」
「あら、便利そうじゃない。天候を変える夫に天候を防ぐ盾ですって? 私たち夫婦にぴったりね」
「そう思って託す事にしたんだよ。君ら二人は本当に仲がいい夫婦だ。生まれてくる子を楽しみに
しているよ」
「まぁ! あなた話が分かるじゃない! 絶対女の子を産むわね! うふふふ」
「お、おい何の話をしてやがる。それに相手は神だぞ、わかってんのかライラロ」
「いや、絶対分かってないと思うぞ。それよりだ。この俺ハーヴァルもベルディスについていきたいと
考えてる。セフィアの許可はもらった」
「君は連関の呪いを受けているものだね。悪いがそれは解呪できない。けれど緩めてやることは
できるかもしれない。スキアラに頼んでおこう」
「そいつは本当か? 助かる! セフィアも喜ぶだろう」
「それとあちらに行っても対話が可能なようにこれを。持っていれば後々ルインと対話ができるよう
にしておくよ。さて……そろそろ目が覚めるころかな」
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