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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め
第五百三十八話 鋭い目つきの男、レッジ
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再び馬車で合流したビーとシー。どちらもうまく言ったことを告げあう。
両者共にまったくの無傷だった。
「悪いな。そちらの方が数が多かっただろう?」
「こっちはシーの優秀な奥さんのお陰で、ひやっとしたが楽はできたよ」
「ベニーは思い切りがいいからな。素早いし動体視力もいい」
「恐ろしいお嬢さんだよまったく。それじゃ行くか」
「あんたら、化け物じゃん。本当にただのトループじゃん?」
「見事ぞ。さすがは……命を預けるに足る人物ぞ」
「大げさな。この後また試験なんだろう? さっさと終わらせたいものだ」
「いいや、試験は終わりだ! 随分と失礼したね」
いつの間にか馬車付近に来ていたアリエルド・ゲンシン。
こちらの戦いぶりを見ていたのかもしれない。
その顔はとても満足そうだった。
「全員こんな短時間でやられるとは思ってもみなかった。彼らは十分な精鋭なのだが、約不足
だったようだ」
「役不足なんてとんでもないです。これほど狭い地形でなければ、よりうまく立ち回れるでしょう。
仮に、馬車二人が要人だった場合こんな動きはできません」
「ではその場合、君ならどうする? 珍しい術の使い手である君なら」
「……やはり見ていたのですね。隠し通せませんか。その術を用いて偵察と
護衛両方任せます」
「いい答えだ。それに御者以外は全員戦えるようだし、心強い」
「俺っちは御者じゃないじゃん!」
「それは失礼した。さぁ奥へ来てくれ。ブシアノフ男爵に取り次ごう。飲み物と食事も用意する」
後を続くと演習場と言っていた場所とは違う入り口へ案内される。
演習場前に立つ長身長髪の男と目が合った。鋭い目つきでこちらを見ている。
「彼が気になるか?」
「ええ。とても」
「レッグバード・ジーフィール。みなレッジと呼んでいる。レッジ、挨拶をしろ」
「お断りだ」
「……随分と不機嫌だな」
「……別に」
「悪いな。少し機嫌がよくないようだ。腕は立つが不愛想なやつで、勘弁してやってくれ」
「いえ。俺も人の事はあまり言えないと思いますから」
こいつはずっと俺たちの動きを遠目に観察していたのだろう。
そして感じるのは……こいつも相当修羅場をくぐってきているってことだ。
「演習場はどんな試験を予定していたんですか?」
「例えばだが、外回りの状況に対応できたのが、君たちのうち一人だった場合、その実力を
推し量るため、レッジと一騎打ちをしてもらう予定だったんだ。
そもそも気づかず真っすぐ行った場合でも、一名だけ強者を出してもらい戦う。
そういう手筈だった」
「なるほど……気づかなかったら不合格というわけではないんですね」
「その可能性もある。あえて気づいても無視する戦い方もあるだろう?」
「ええ。逆に罠へはめる方法ですね。戦法、戦略方法は本来幅広いですから」
「そうだな。君は軍略にも知識がありそうだね」
「かじる程度ですよ。実際軍を動かすような事はやったことがありません。
見た事はありますけど」
雑談をしていると、広間に出る。そこら中磨かれており、塵一つ見当たらない美しい場所だ。
テーブルが用意され、食事が運ばれている最中。あれから半刻も経っていないのに、なんという
根回しのよさだ。
「ご覧の通りブシアノフ男爵は配慮を重んじる方。故にその下で働きたいという
者は多く存在する。さぁ、まもなく到着するだろう」
両者共にまったくの無傷だった。
「悪いな。そちらの方が数が多かっただろう?」
「こっちはシーの優秀な奥さんのお陰で、ひやっとしたが楽はできたよ」
「ベニーは思い切りがいいからな。素早いし動体視力もいい」
「恐ろしいお嬢さんだよまったく。それじゃ行くか」
「あんたら、化け物じゃん。本当にただのトループじゃん?」
「見事ぞ。さすがは……命を預けるに足る人物ぞ」
「大げさな。この後また試験なんだろう? さっさと終わらせたいものだ」
「いいや、試験は終わりだ! 随分と失礼したね」
いつの間にか馬車付近に来ていたアリエルド・ゲンシン。
こちらの戦いぶりを見ていたのかもしれない。
その顔はとても満足そうだった。
「全員こんな短時間でやられるとは思ってもみなかった。彼らは十分な精鋭なのだが、約不足
だったようだ」
「役不足なんてとんでもないです。これほど狭い地形でなければ、よりうまく立ち回れるでしょう。
仮に、馬車二人が要人だった場合こんな動きはできません」
「ではその場合、君ならどうする? 珍しい術の使い手である君なら」
「……やはり見ていたのですね。隠し通せませんか。その術を用いて偵察と
護衛両方任せます」
「いい答えだ。それに御者以外は全員戦えるようだし、心強い」
「俺っちは御者じゃないじゃん!」
「それは失礼した。さぁ奥へ来てくれ。ブシアノフ男爵に取り次ごう。飲み物と食事も用意する」
後を続くと演習場と言っていた場所とは違う入り口へ案内される。
演習場前に立つ長身長髪の男と目が合った。鋭い目つきでこちらを見ている。
「彼が気になるか?」
「ええ。とても」
「レッグバード・ジーフィール。みなレッジと呼んでいる。レッジ、挨拶をしろ」
「お断りだ」
「……随分と不機嫌だな」
「……別に」
「悪いな。少し機嫌がよくないようだ。腕は立つが不愛想なやつで、勘弁してやってくれ」
「いえ。俺も人の事はあまり言えないと思いますから」
こいつはずっと俺たちの動きを遠目に観察していたのだろう。
そして感じるのは……こいつも相当修羅場をくぐってきているってことだ。
「演習場はどんな試験を予定していたんですか?」
「例えばだが、外回りの状況に対応できたのが、君たちのうち一人だった場合、その実力を
推し量るため、レッジと一騎打ちをしてもらう予定だったんだ。
そもそも気づかず真っすぐ行った場合でも、一名だけ強者を出してもらい戦う。
そういう手筈だった」
「なるほど……気づかなかったら不合格というわけではないんですね」
「その可能性もある。あえて気づいても無視する戦い方もあるだろう?」
「ええ。逆に罠へはめる方法ですね。戦法、戦略方法は本来幅広いですから」
「そうだな。君は軍略にも知識がありそうだね」
「かじる程度ですよ。実際軍を動かすような事はやったことがありません。
見た事はありますけど」
雑談をしていると、広間に出る。そこら中磨かれており、塵一つ見当たらない美しい場所だ。
テーブルが用意され、食事が運ばれている最中。あれから半刻も経っていないのに、なんという
根回しのよさだ。
「ご覧の通りブシアノフ男爵は配慮を重んじる方。故にその下で働きたいという
者は多く存在する。さぁ、まもなく到着するだろう」
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