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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百三話 ジャンカ港とおかしな奴ら

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 ――パモを連れて、闘技大会会場の北側に出た。
 はっきりいってこの周辺は、ジャンカの町となるまで一度も訪れた事が無い。
 海を一望出来る場所だ。
 東側は植え替えた森林が広がり、西側は海を見渡す休憩スペースを設けてある。
 この早朝でも誰かいる程、人気の場所となっている。
 潮風が心地いい……とてもいい場所だ。
 そして……その先に港を建設した。莫大な費用をかけて。
 現在停泊している船が既に三隻もある。
 ここから出発して向かえる先は、ミッドランド島、デイスペル国と、ドラディニア大陸。
 キゾナ大陸へも本来向かえるのだが、現在は渡航禁止。
 ドラディニア大陸へも危険が伴うので、ミッドランド島を迂回して、少し上部から回り込む
形で航行可能。
 更にレグナ大陸やシーブルー大陸、ディマ大陸と、まだ俺が訪れていない大陸にも
向かいたい所なのだが……今はそれら以外の大陸へは危険と考え、調査をお願いしている最中だ。

 北に位置するシフティス大陸へは、海に凶悪なモンスターが出たり、強風が
起こる。それだけではなく海嘯も多く存在する。
 航路としてはとても危険だった……のだが。

 雷帝ベルベディシアの協力により、この航路を得られるかもしれない
話を進めている。

 俺たちはルーン国を通れば問題なく行き来可能だが、一般民をルーン国誰で
通すわけにはいかない。
 そのため、物流は出来る限り航路や陸路を通す必要がある。
 ただし、問題となるのが……北東にかなり進むと見えてくる
七壁神の塔。

 闘技大会が終わったら、俺たちはこの塔の調査へ向かう予定だ。
 危険な塔である場合、海路が使えないままとなってしまう。
 
「相変わらず、やる事一杯だな、パモ」
「ぱーみゅ!」
「それは俺だって? まぁ、そうなんだけど。あの塔の調査が終わったらいよいよ地底だ。
パモ」
「ぱーみゅ!」

 この位置から塔は目視出来ない。だが、ある事は確実なんだ。
 何せ一度、目にはしてるからだ。
 モンスターにも襲われた経験もある。
 だからこそ、準備は万全にしていかないと。

 ――港まで足を運ぶと、乗り物でやって来た奴らがちょうど居た。
 闘技大会ギリギリにルーンの町へ来ても、もう宿は空いてないだろうに。
 ちゃんと予約してあるのか? 
 それにその乗り物。どう見ても海に停泊させるタイプじゃない。

「おいあんたら。その乗り物、空用のじゃないのか?」
「そ、そうズラ。ちょっと落っこちて……危なかったズラ」
「全くあんたは! まともに運転も出来やしないのかい?」
「仕方ないズラ。モンスターに襲われたズラ」
「おいおい、大丈夫か? 修理出すんなら伝えておくけど。
ここは船以外停泊禁止。動かせそうか」
「無理ズラ。お願いズラ。ここに止めて欲しいズラ!」
「あれ、ルインさんじゃないですか。お久しぶりです!」
「おや、君は……モラコ族の」
「モータです。以前はその……すみませんでした!」
「以前? はて……」
「その。失礼な発言を」
「そうだったか? もしそうなら、その非礼を詫びる気持ちを持った
だけで、モータは大きく成長したんだろう。それだけで十分だよ」
「……本当に大きい器ですね。それで、この人たちがちょっと困った
事になってて。今相談を向かわせようとしてたんです」
「こっちは引き受けるよ。あんたら、これ動かせないのか?」
「見りゃわかるだろ。ぴくりとも動かないよ」
「ふうん。まぁいいや。そのまま乗ってな。邪魔だから俺が動かすわ」
『えっ?』

【真化、神魔解放、獣化】
「よいしょっと……重てーな!」

 まぁ小型の飛行用乗り物なんて、持てないわけじゃない。
 跳ぶか。

「おいあんたら。そのまま降りるなよ。跳ぶから。バネジャンプ!」
『えぇーーー!?』

 大きく飛び跳ねて町の外に出ると、そのまま何度か跳んでようやく乗り物を収容
する場所まで来る。
 そんな驚く事か? 俺の仲間なんて空をブンブン飛んでるぞ。
 未だに空を飛ぶルインとはいかない。
 こちとらフリーフォールまっしぐらだよ。
 別に悲しくはない。
 俺はパワーで攻める! 
 確かにこの形態、力はあるが、いきなりそんな力が着くわけは無い。
 当然利用しているのはアーティファクトの力だ。
 そのパワーもギオマたちに遥かに負けてるけど。

「はい。ちゃんとここに止めてね。お金かかるけど」
「……わかったズラ」
「驚いた……一体何者なの……」
「大会は二日後だ。もう宿屋空いてないと思うぞ?」
「ここで寝泊まりズラ。町にはこれから向かうズラ」
「修理を依頼するにしてもまだ鍛冶が行える者が来ていないだろう。
少しそこで休んでから町に行くといい。それじゃな」
「有難うズラー! 行ったズラ……どうするズラ。作戦失敗ズラ」
「参ったね。なんだいあの化け物。あんなのが大会に出場してるってのかい? 
誰だい、トリノポートなんてへなちょこしかいないって言ってたのは」
「親分ズラ。困ったズラ。作戦考え直しズラ……げっ。金貨二枚ズラ……」
「あんたが払いなよ」
「酷いズラー! これじゃ食事も食べられないズラー!」
「しょうがないねえ。半分だけ出してやるよ。今騒ぎを起こすわけにはいかないから
ねえ……」
「よかったズラ……いや、全然よくないズラ! 何で止めておくだけでこんなに
取られるズラ?」
「知らないよ。防犯のためか……随分と念入りな事だね。それにしてもこの町、どう
なってるんだい? 女の勘だが、嫌な予感するね……」
「ヒージョは女とは思えないズラ」
「何言ってんだい! 蹴とばすよ!」
「蹴とばしながら言わないで欲しいズラ!」

 これが、ルインと彼らの初めての出会いだった。
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